JR西日本の和歌山線は、奈良県の王寺駅から奈良盆地と紀ノ川流域を結び和歌山駅に至る、電化されているものの全線単線のローカル線。王寺駅から高田駅までは大阪からの直通電車が走っていて、通勤ラッシュのある都市圏の電車だが、高田から先はいきなりローカル線の趣が漂う路線に変わります。この和歌山線の沿線を、バスや電車を乗り継いで日帰り温泉を巡ることにします。
先ず始めは奈良交通の路線バスから。近鉄大和高田駅を出発したバスは、ほぼJR和歌山線に沿って、国道24号線で五條バスセンターに向かいます。
奈良交通の葛城営業所のあたりでは、車窓からは葛城山がきれいに見える。標高959mのこの山の麓はなだらかで、古代には葛城氏、巨勢氏、鴨氏などの豪族が、大和盆地を隔てた東側の飛鳥・大和王朝と対峙し、覇権を競っていました。この麓を葛城古道が縦断し、その道沿いには今なお、古寺や神社、そして赴き深い町並みがあります。
ここは一度、自転車でこの古道を散策したんだが、時折現れる集落に試飲もさせてくれる造り酒屋なんかがあったりして、のどかなサイクリングを楽しむことができます。
また、この辺りからロープウェイで葛城山の山頂に一気に登って、山頂から大阪平野を一望することができます。
御所を過ぎ、だんだん山に分け入ると葛城高原に入ってきます。金剛山が右手にえるあたりに2003年にオープンした「かもきみの湯」があります。
五条駅に到着。五条駅は地方都市の玄関口というにはちと貧相であるが、その小ぶりな駅舎には柿の葉寿司専門の売店もある。さすがは本場。この五条駅からは珍しいバス専用道を走る奈良交通バスがでているんです。
ここから電車に乗ってみます。電車は2両編成のワンマンカー、105系。路線は単線ながら意外にスピードを上げる。ただ、相当年季が入っているこの車両、ひどくガタガタ揺れる。それもそうでしょう、この車両は元は東京の常磐線を走っていた103系電車の1000番台を改造して使用しているもので、1970年製造、もう40年も走っているんですね。
幻の五新線の路盤を見ながら、吉野川沿いを下るとすぐに和歌山県に入り、それとともに川は紀ノ川と名を変えます。そして、電車の線路をアンダークロスするとすぐに橋本駅です。ここは南海高野線との接続駅。特急電車や通勤電車が頻繁に発着する南海電車に比べて、こちらは2両編成のワンマンカー。JRが間借りする感があり、肩身が狭い。
橋本から紀ノ川沿いをさらに下り、高田を出てから約一時間半、和歌山県かつらぎ町にある笠田駅に着きました。駅から徒歩で5分のところ、新しくできた複合施設の「野半の里」があります。
野半の湯の近くのから、今度は和歌山バス那賀の路線バスに乗って粉河を目指します。バスはいすゞのキュービック、国道24号線を西に向かいます。交通量は多いが、スムーズです。
粉河駅前に着くと、同じく和歌山バス那賀の熊取行きの特急バスが待っていました。これに乗り継ぎます。バスはふそうのエアロミディ。しばらく24号線を西に走り、打田駅の付近から今度は北に向かう県道で、和泉山地をぐんぐん登っていきます。サミットのところのトンネルを抜けると、今まで快適だった道も大阪府に入ると突然狭くなり、離合も危うい場所もしばしば。中規模の旅館が現れると程なく犬鳴山です。
犬鳴山からは先ほどの特急バスだけでなく、日根野経由泉佐野行きの南海ウイングバスも走っています。これに乗れば日根野でJR阪和線に、泉佐野で南海本線に乗り継ぐことができます。車両はふそうのエアロミディです。
JR和歌山線の終点は和歌山駅。この駅はこの和歌山線と阪和線、紀勢線が集合するターミナル駅。そして、このほど事業主体が南海から移管された和歌山電鉄もここから出発します。この駅の東側のバスターミナルから和歌山バスに乗り込みます。バスは日野レインボーのノンステップ。
温泉から戻る途中に見つけた「井出商店」。ここはいわゆる和歌山ラーメン(当地ではラーメンではなく中華そばと呼ぶ)の元祖とされる店で、ご当地ラーメンの流行のはしりとなった、かなりの有名店です。中途半端な時間が幸いして行列もなく入店。6畳ぐらいの小さな店内では愛想のいいオバチャンが取り仕切っています。有名店にありがちな高飛車なところがなくっていい。
手際よく出されたラーメンは、とんこつ醤油の濃厚な色と香ばしい匂い、味は意外とサッパリしている。んまいっ!押し寿司とともに食べるのが和歌山の慣わしだそうだが、胃のキャパシティーに自信がないのでやめときます。ところで、このスープの色、どこかで見たよな・・・・?あ!思い出した。「野半の里」の湯の色や!
- 訪問日:2005年12月16日・2006年11月13日