ここはもう説明の必要もないですね。日本三古湯のひとつ、道後温泉を代表する共同浴場です。道後温泉のシンボル的存在、いや、日本の温泉を象徴する建物といってもいいでしょう。
ここは戦前に建築された歴史ある建物(近代和風建築)で、国の重要文化財として指定されているとともに、共同浴場番付において、東の湯田中温泉大湯と並び西の横綱に番付けされています。
また、この建物が宮崎駿監督の映画『千と千尋の神隠し』のモチーフとも言われています。さらに、ミシュランガイド(観光地)日本編において2つ星に選定されるとともに、経済産業省の「近代化産業遺産」に認定されています。
この複合的に重なり合った建物の構造は、平面図でにわかに理解することは難しい。増築を重ねて現在の形になっているが、この形を保ちながら現代の保安基準に合わせるのは大変でしょう。
屋上にあるのが振鷺閣(しんろかく)。ここで朝6時の開館時、正午、午後6時に太鼓を打ち鳴らします。この音が道後温泉の風物詩。1996年に環境庁の日本の音風景百選に指定されました。
1階に「神の湯」、2階に「霊の湯(たまのゆ)」と、2種の浴室があり、その違いは石の程度だが、霊の湯には石鹸が備え付けられ、料金が高くなっています。
霊の湯は専用の休憩室付で、個室が1550円、大部屋が1250円と料金が異なります。リーズナブルな神の湯でも、休憩室ありが840円、入浴のみで410円となるなど、複雑な料金体系となっています。
霊の湯は小さいながら、高級感漂う落ち着いたお風呂です。こちらの方は人が少ないためゆったり入れます。また、こちらには石鹸が備え付けられています。お湯は澄明の無味無臭。やや滑らかな浴感で、一応掛け流しです。
神の湯の方は観光客とともに、地元の人たちの利用が多くて賑わっています。男湯は東浴室と西浴室との二つに分かれていて、合わせての収容人数はかなり多い。こちらにも霊の湯と同じお湯がコンコンと掛け流されているが、これほどの多くの浴槽で掛け流しを維持するのは相当の湯量なんでしょうね。
休憩所ではお茶とお菓子が付いています。霊の湯の個室では「坊ちゃん団子」、大部屋ではお煎餅です。なお、個室の利用時間は80分まで、大部屋は60分までとのこと。
個室の並ぶ3階一番奥の個室に「坊ちゃんの間」と呼ばれる夏目漱石ゆかりの資料の置かれた部屋があり、ここは貸し切りとはせず一般開放となっています。
霊の湯の利用者は、明治32年に増設された皇族専用の浴室「又新殿(ゆうしんでん)」の見学ができます。日本で唯一の皇室専用浴室とのことだが、現在は旅館を利用されるので、ここ50年ほど使用されていないとのこと。優雅な造りは、現在とは比較にならない皇室への畏敬が感じられます。
この温泉では、せっかくの掛け流しであるにもかかわらず、条例により塩素投入されるようになったことが問題になりました。湯の質にこだわる人は、こぞって非難をしています。しかし人気の温泉のこと、多くの人が入浴するし、これほど大きな浴槽では換水率も上がらないので、塩素投入はやむを得ません。
ならば、せめて小さい霊の湯では換水率を上げて塩素投入を止めるとともに、石鹸やシャンプーの使用も禁止してしまったほうがいいのではないかな?そうすれば、身体を洗うのは神の湯、湯治は霊の湯と棲み分けができ、日常使いの地元客も観光客も双方満足できると思うんだが…いかがでしょうか?
※2019年現在、改修工事のため一部利用できないところがあるのでご注意ください。
・場所:伊予鉄市内電車・道後温泉駅
・泉質:アルカリ性単純泉 43度
・訪問日:2010年9月27日