大阪から近鉄特急で1時間少しのところ、榊原温泉口駅には榊原温泉の各旅館の送迎バスが集まってきています。ここから10分ほど送迎バスに揺られると、のどかな田園地帯に小さな温泉街が現れます。
榊原温泉は、七栗の湯とも言われ、「枕草子」第117段に「湯はななくりの湯、有馬の湯、玉造の湯」とうたわれている「三名泉」のひとつです。なにぶん山の中のこと、この温泉街には歓楽的要素は一切ありません。
ここは平安時代には既に湯治場が形成され、江戸時代には伊勢参詣客が神社の参拝前にこの七栗の湯で斎戒沐浴するのがしきたりとなり、垢離場として大いに賑わったと言われています。
そんな歴史ある小さな温泉街の中に、巨大な建物による威容を誇っているのが、この温泉の湯元である「湯元榊原館」です。
榊原温泉では最大規模の全56室、2019年で創業100周年という歴史と格式を誇るこの旅館は、大小さまざまな客室とプランを用意する、エコノミーからラグジュアリーまで、オールマイティなお宿です。
1階の大浴場では、浴室に芳しい温泉の匂いが漂っており、湧泉地には祠が建ち、大きな浴槽の真ん中からお湯がコンコンと湧いています。この大浴槽は加温され、普段は透明なお湯なのだが、この日は地震の影響で少し白濁していました。
この浴場の隅っこに小さな浴槽があって、これがこの旅館の白眉、源泉浴槽です。僅かに硫黄臭のある湯はぬるぬるしている、いわゆる美人の湯系な感じです。源泉のお湯はかなり温く、冬場は辛いが、加温の浴槽と交互に入ってたら風邪を引くこともないでしょう。
このお湯の良さを知る大勢の日帰り入浴のお客さんが、加温浴槽には目もくれず、こちらに集まってきます。じっくり浸かりたいなら宿泊したほうがいいですね。
この旅館には屋上にも宿泊者専用の露天風呂があります。たいがい屋上にある温泉は、ポンプで汲み上げる必要があるので循環泉なのだが、ここも例外ではありません。
屋外なので塩素臭は気にならないが、お湯はキシキシした感触でいただけない。この露天のためにわざわざ宿泊する必要はありません。
・場所:三重交通バス・湯元榊原館前BS
・泉質:弱アルカリ性単純泉 37℃
・訪問日:2007年4月15日