南紀白浜は関西を代表する良質の温泉地として、また、パンダがぽこぽこ産まれる温暖なリゾート地としてつとに有名です。しかしそこからちょっと南の海沿いにある椿温泉はあまり知られてはいません。JR白浜駅から明光バスの日置行きに乗って20分足らずで椿温泉BSに到着しました。
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ここは小規模の温泉旅館が数軒あるだけで、歓楽街らしきものが一切存在しないひっそりとした温泉ながら、紀州藩の地誌『紀伊続風土記』(天保10年)に名湯として紹介されているぐらいの歴史を持つ名泉です。
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バブル期には巨大なリゾートマンションが次々と建設されるなど、投機の対象とされて一 時的に賑わいもしたが、今はその片鱗も見せていません。さらに、この温泉街で最も老舗の湯元旅館の「椿楼」が廃業し、温泉好きに絶大な人気を誇った旅館「冨貴」も閉館。現在は小規模な旅館が3軒と温泉民宿2軒だけの小さな温泉地、実に寂しくなってしまいました。
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そんな凋落傾向の温泉地が再び話題に上ったのが2010年、日帰り入浴施設と無料足湯を備えた道の駅「椿はなの湯」の開業です。食事処と販売所は小さいが、施設の半分以上が入浴施設で占められるという温泉が主役の道の駅で、温泉好きには評価の高い施設です。
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今回、この「椿はなの湯」のすぐそばにある民宿に宿泊することにしました。ここは民宿と言いながらも本業は居酒屋さんのようで、一日3組限定で宿泊も可能というところ。温泉付きが魅力的で、以前からいちど泊ってみたいと思っていたお宿です。建物は2011年に全面リニューアルされた2階建てで、「匠」が設計したようなスタイリッシュな佇まい。居酒屋の入口とは別に、民宿専用のエントランスが設えられています。
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2階にある客室は7.5畳のワンルームで、床の間や縁側も無くコンパクトにまとまっています。窓からは巨大リゾートマンションに邪魔されながらも多少は海が望めます。
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温泉は1階で、男湯と女湯になっているのだが、この日の宿泊者はワタシたちのひと組だけなので、男湯を貸切湯として使わせて貰えるとのこと。浴場の扉を開けるとプーンと硫黄臭が漂ってくる。この匂いだけでも興奮してきます。
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この規模の宿にしては浴槽も大きめで、椿温泉特有のぬるぬるっとしたアルカリ性・単純硫黄泉が満たされていています。湧出温度が低いため加温はされているが、この特徴的な肌触りがなんとも心地よい。
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湯口から常に温泉が出ているのではなく、必要に応じで蛇口をひねって追い湯する形なので、厳密には掛け流しとは言えないが、加水も塩素投入もなく、オーバーフローは捨てられるので、掛け流しに準じています。泉質上にも衛生上にも影響ないでしょう。
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加温により、今は無き「冨貴」の、湯の花の舞う源泉浴槽のような気泡は失われてしまってるが、なんといってもこのぬるぬるの浴感が他では味わえない独特なもので、これは大変貴重です。pH9.9という強アルカリの成せる業なんでしょうね。
なお、気泡が体に纏わりつく源泉そのま まのお湯を味わいたければ、すぐ近くの「椿はなの湯」にある源泉浴槽に浸かればいいだけです。宿に申し出れば割引券がいただけるとのこと。(ただし営業時間に注意。)
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食事は1階の海鮮居酒屋でいただくことになります。宿泊客は専用通路で直接居酒屋に入れる用になっています。お店は厨房に面したカウンター席とお座敷からなり、全20席足らず。お座敷が全面禁煙なのがうれしいですね。予約していたのは20kgオーバーの本クエのお鍋に小鉢、造り、揚げ物の付く「クエ鍋会席」。座敷机の上にお鍋が用意されていたのだが、ひと目見てたじろいだ。食べきれるやろか…と不安がよぎる。
料理の詳細は「食べログ」で
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朝風呂は6時半から使用可能とのこと。自分で温泉の蛇口を開けてお湯を整えるようになっています。極寒の夜のうちにだいぶ温度が下がってしまったので、10分以上は新湯を注がなければ入れません。人肌程度に温まったらゆるゆると身を沈める。静かにぬる湯に浸っていると、魂が抜け出ていくような感覚が訪れます。
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朝食後、旅の支度を整えてお宿を後にすることに。先にお勘定を済ますと、一人当たり15,000円足らず…旨い魚を堪能しつつ、上質の温泉に浸かる 至福を満喫し、おまけに美味しい朝食も出してもらってこの値段です。実にありがたい。帰り際、宿の御主人・大女将・若女将(これで全スタッフ)がわざわざ表に出て見送ってくださり、気分良く再びバスに乗ることができました。
このお宿、部屋は狭いし宿泊客は基本的にほったらかしです。床の間のある広いお部屋で、下にも置かないおもてなしを期待する向きは、白浜温泉の高級旅館に行けばいい。そのかわり何万円も取られるが…
クエコースとは畏れ入りました、20kg越えならさぞかし美味しかったでしょうね♪