OCAT発・山口の名湯を巡るバスの旅(1)@山口の続きです。
翌朝、サンデン交通のバスで湯本温泉に向かいます。車両は最新の日野「レインボー」のノンステップ。朝の便は病院へ通う老人の利用が多いので、ノンステップの威力を発揮かと思うが、彼らは何故かいちばん乗りにくいタイヤハウスの上の席、いわゆる「ヲタ席」に無理して座ろうとする。意味わからん。
俵山を出たバスは山道をクネクネ下ってゆきます。20分も走らぬうちにニョッキリと経つ大旅館が出現、湯本温泉に着いたことがわかります。湯本温泉には以前、団体旅行で訪れたことがあります。しかし、せっかく高級旅館の「大谷山荘」に宿泊したのに、団体旅行の常として、宴会にうつつをぬかし、旅館から一歩も出ずに次の目的地に向かったため、じっくり温泉を味わったとはいえません。そこで今回はリベンジ。ここには「恩湯」と「礼湯」のふたつの共同湯があり、大旅館のほとんどが集中配湯の循環温泉のなか、この共同湯は源泉掛け流しが保たれています。
ここに至る小路には、数軒の閉鎖した旅館が廃墟をさらしています。手入れのされない庭には、それでも木々が豊に緑を色づけています。ああ、ワタシに巨万の富があったら別荘にするのになぁ…
温泉街の中央を流れる音信川の川べりは美しく整備され、下駄を鳴らして散策するのに具合がいいようになっています。ちょうど桜の季節。ひとり花見を楽しんだ後、再びバスに乗り、次の目的地を目指しました。
サンデン交通のバスは美祢線の線路に沿って長門市に向かいます。美祢線は典型的な赤字ローカル線。途中、一回も列車とすれ違うことはありません。
やがて、長門市街に入り、長門市駅に着きました。ここで防長交通のバスに乗り換え、日本海沿いを東に向かい、やがて湯免温泉につきました。実にマイナーな温泉ながら、ここには極上のお湯が溢れているんですよ。
湯免温泉から再び防長交通のバスで、今度は萩市を目指します。といっても、萩を観光するわけではなく、萩・石見空港行きのバスに乗り継ぐためです。車両は日野のレインボーです。
時間待ちの間、少し歩いてみた萩は、以前に訪れたときとあい変わらず閑静で歴史を感じさせる街です。しかし、平日のせいか観光客も少なく、いささか寂しいですね。老舗っぽい洋食レストランでランチにしました。
バスセンターで防長交通の萩・石見空港経由益田市行きの路線バスに乗ります。路線バスといっても、もとは観光バスだった車両で、しかし、かなり年季の入ったバスです。防長交通は近鉄の系列なので、近鉄バスの払い下げの車両も多いと聞きます。この車両も昔は関西を走っていたのでしょうか…
客はワタシとおばあさんの二人だけ。そのばあさんもすぐに下車し、その後は運転士と私の二人だけで日本海の海岸べりを走り抜けます。1時間少々走り、バスは石見空港に着きます。ここでワタシひとりが降りたら、あとは回送状態のバスを見送り、空港のターミナルビルに入りました。
全国有数のローカル空港である萩・石見空港のターミナルビルに入ってみても、まさしくひっそり!その分、空港特有のギスギスした緊張感がなく、マッタリとした空気が流れています。空港に寄ったのは、今回の旅の密かな目的であるプロペラ機に乗るためです。バスやローカル線が大好きなワタシには飛行機のような目的地に早く到達するために情を廃した飛行機が大嫌いです。しかも、イラチ(関西弁のせっかちのこと)なワタシには、手荷物検査や搭乗口での待ち時間が耐えられなくて、飛行機を敬遠していました。しかし、以前「YS11」に乗った際、離陸のときに一生懸命「ヨッコラショ」っと飛び上がるのが愛おしく感じるようになって以来、プロペラ機はけっこう好きになってしまったのです。しかし、いまやプロペラ機はローカル便や離島便など、あまり飛んでいません。しかも国産の「YS11」は今や絶滅危惧種です。今こそ告白するが、山口を訪れたこの旅は、大阪からプロペラ機が飛んでいるところを探した末に、ここを選んだからなのです。
待合室で搭乗を待つ間、空港の唯一の売店で買った仙崎産の笹かまぼこをモグモグ食っていたら、全日空のボンバルディア機が着陸しました。30人ほどの乗客を降ろし、機内整備をした後、ワタシたち大阪行きの乗客が乗り込みます。ボーディングブリッジなどあるはずもなく、滑走路を歩いて飛行機に直接乗り込みます。
ボンバルディア機はカナダ製で、最近なにかとお騒がせな故障がちの機体。仮に国産機ならまだ許せるのだが…YS11の後継機種を開発できなかった日本の航空産業の弱体化を呪います。
タラップを登って機内に入ると、狭いながら、最新のジェット機並みのインテリア。YS11では機内のハットラックに蓋がなく、手荷物を入れようとしたら、客室乗務員に注意され、初めてハットラックの名前の意味を理解のだが、ボンバルディア機には蓋もあり、手荷物も入れることができます。
やがて離陸の時間。プロペラが勢いよく回りだすと急激な加速があり、背中がシートに押し付けられるとすぐに地上から脚が離れました。まるでジェット機のような乗り心地に技術の進歩を感じるとともに、なにか期待はずれの感が…
ともあれ、飛行機はぐんぐん上昇、やがて水平飛行に移って飲み物のサービスがあって間もなく、眼下に見慣れた地形が見えてきました。
伊丹空港にふんわりと着陸すると、プロペラ機は遠慮がちに空港の端っこに停止。ここで降ろされ、バスに乗ってターミナルに運ばれます。またもやバスに乗るとは思わなかったが、バス好きにとっては好都合。車両は西工ボディーのノンステップです。
空港から大阪空港交通のこれまたバスに乗って大阪市内へ戻りました。全行程で9種のバスに乗ったことになります。バス好きのワタシではあるが、今回はさすがにお腹いっぱいですね。
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