高田郁作「あきない世傳金と銀1,2」を読みました。シリーズものなので2巻分の感想を一緒に掲載します。大阪商家のお話で懐かしい言葉にも出合えてとても面白くて、早く次の3巻4巻を読みたくなります。摂津国武庫郡津門村で生まれ育った幸が9歳で大阪天満の呉服商「五鈴屋」に女衆(大阪弁ではおなごし)として奉公に出されます。今では武庫川と言っても大阪からすぐに行けるところですが、享保や元文の時代は摂津国武庫郡津門村から歩いて大阪の天満まで5時間も6時間もかかる遠いところでした。父は学者で主人公の幸は知識欲旺盛な女の子。普段から貧乏でしたがその上飢饉で食べるものがありません。妹の結がひもじさに石を飴代わりに舐める場面があります。私たちの先祖は自然災害や飢饉、戦争を何とかして乗り越えて今の私たちがあるのだなと思いました。
1巻では五鈴屋の3男坊の智蔵の言葉「・・・似てるからこそ、わかるんだす。ひとにどない思われたかて、自分に知恵がつけば、それでええ。物を知ることは生きる力になるんだす。」に幸は大好きだった亡き兄のことを思い出しました。番頭の治兵衛に沢山のことを教えられ、女衆でありながらあきないのことも覚えました。知識が豊富な方はたくさんおられますが、知恵の豊かな方は少ないです。幸は知識から知恵のある人に育っていきます。
それに懐かしい言葉「きさんじ」が出てきました。祖母がよく話していた言葉です。京都の方言で素直とか子供らしいとか、私は子供への誉め言葉の最上級と思っていました。ネットで調べると「明朗快活でさっぱりしている。人見知りせず人なつこい。くよくよしない。」と書いてありました。
2巻では益々幸があきないのことを覚えて役にたつ場面が増えていきます。いろいろな事情で「五鈴屋」の跡取りの徳兵衛と結婚します。「ご寮さん」になりました。番頭治兵衛が「縁と月日」について話します。
「物事が成るか成らんかは、ひとの想いや働きだけで決まるもんやない。ご神仏の手ぇが差し伸べられるかどうかだす。それに加えて、起こってしもた難事を解決するためには短気はあかん。決して諦めんと、歳月をかけてゆっくりと時節を待て、いう意味やないか、て考えるようになりました。」
幸にあきないの戦国武将になるために「縁と月日」を待ちなはれとさとしました。「縁と月日」、本当に大事なことやなと思います。何でもご縁というものがありますね。ご縁を大切にしてタイミングを見極めないと。
幸が嫁入りした徳兵衛は事故で亡くなります。次男の惣次と?さてさて、3巻はどうなるのでしょう!早く読みたいです。
2021-12-15(水) 図書館資料 請求番号:B/913/タカー1,タカ―2