Sera の本棚

感動した本のことや映画を見たり、コンサートへ行ったりした感想、高槻の写真など記録できたらいいなあと思います。

星落ちて、なおー澤田瞳子作

2022-09-21 10:13:46 | 

友達のお薦めで読みました。江戸から明治にかけてのお話です。絵師河鍋暁斎(かわなべきょうさい)の娘河鍋暁翠(かわなべきょうすい)を主人公に書かれています。どんな分野でも親の仕事を継ぐのは1番簡単そうで、実はそこには計り知れない葛藤があると思います。親であったのが急に師匠となり、畏敬の念に打たれ葛藤が始まります。河鍋暁斎の後を継ぐために技術はもちろん、感性も鍛え世の中の価値観に惑わされず、自信をもって貫く、また貫くためには経済的にもいかに大変だったかと思います。その上兄の河鍋暁雲(かわなべきょううん)もいて、その才能に圧倒されます。画鬼と呼ばれた父と父の画風を継承した兄。その後を託された暁翠。「星落ちて、なお」・・・聞く相手がいなくなってもなお・・・清兵衛が話します。

「わたくしはつくづく、思うんですよ。人ってのは結局、喜ぶためにこの世に生まれてくるんじゃないですかね。」
「喜ぶために、ですか」
「ええ。だって、どれだけあくせく働こうとも、どんなにのらくらと生きようとも、結局、人はあの世には何にも持っていけないのですよ。ならせっかく生まれてきたこの世の楽しみ、日々を喜んで生きた方が、息を引き取る瞬間、納得できるじゃないですか。それは決して、絵や能だけには限りません。魚を獲る漁師もお役人も商人も・・・この世のすべてはきっと、自ら喜び、また周囲を喜ばせられた者が勝ちなんです」

いつものように登場した河鍋暁斎や暁雲、暁翠の絵を見たくなり、図書館で探して画集を見ました。水墨画であったり、怖い絵であったり私の好みの絵ではありませんでした。小説は直木賞も受賞されて、読み応えがありました。

2022-9-21(水) 図書館資料 請求番号:913/サワ

コメント (2)
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