細野観光1969-2019.//言葉の意味を骨抜きにしようとする流れについて。/たとえば、責任を伴う公的立場にある人間による、「責任(を取る)」という言葉が、はなはだ無責任に、つまり本人の立場には一切の痛痒を伴わずに、軽々しく使われている。/こうした、言葉を積極的に骨抜きにしようとする公人の発言に、私たちは警戒心を持たなければならない。/公人による言葉の無意味化が常態化し、浸透すればするほど、人間関係も社会システムも腐っていく。公人でなくとも、例えば友人同士が嘘をつき合っていれば関係は崩壊するし、店の店員がお客を騙していたら商売は成り立たなくなる。誰しもわかり切った道理なのに、いざその嘘が国家的スケールになるや、我々は自分には害が及ばないから関係ないなどと受け身に転じ、まるで他人事のように解釈しようとする。/「言葉に嘘は付き物」や「きれいごとを言ってなんぼ」が組織内や人間関係においてデフォルト化されてしまうと、私たちの精神は疲弊し、心は荒廃していく。/大嘘の荒波は、すでに彼岸から此岸にまで打ち寄せてきているし、法螺吹きの法螺の音もすぐ近くで、けたたましく鳴り響いている。/言葉尻というと、普通いい意味では用いないが、言葉尻からでもしっかりとらえていかないと、嘘も法螺も調子づく一方である。/為政者は、無言で、あるいは敢えて説明不足のまま、強権を着実に行使するかたわらで、自分が直接発する言葉は、周到にソフト化‐矮小化‐無意味化させている。/言葉面で小細工を弄し、真意をはぐらかし、核心をひた隠しにしながら、壮大な嘘を付き通すという手口は、真っ平御免だ。
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