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不正経理関係公文書の非開示に係る意見書

2011-02-14 19:27:00 | 近況活動報告
以前(http://navy.ap.teacup.com/hikaritoyami/722.html)お知らせのとおり、知事の意見書(業者名等非開示の理由の主張)を受けて、本日の開示文書閲覧に併せて以下のとおり意見書を提出したので公開する。


意 見 書
平成23年1月25日付け静情審第33号で依頼のあったこのことについて、静岡県情報公開条例(以下、「条例」という。)第25条第2項に基づき、本書のとおり意見書を提出する。
また、本書をもって、意見陳述については希望しないことを併せて回答する。

 処分庁による平成23年1月21日付け出管第120号-3「意見書」(以下、「処分庁意見書」という。)について、以下のとおり意見を述べる。
1 処分庁が非開示とした具体的な理由について
処分庁は、「年度別業者別物品納入整合表」(以下、「対象公文書」という。)記載の業者名の特定につながる「業者」欄及び「業者名」(以下、「業者名等」という。)について非開示とし、その根拠として条例第7条第3号イ、条例第7条第3号ア及び条例7条第6号を援用し、以下の3点を主張している。
①条例第7条第3号イ該当の具体的理由においては、「今回の調査に当たって、提出された帳簿の写しの取扱いについて秘密の厳守や目的外に使用しないことを条件に付したが、県の会計調査のため、取引件数の実績により一律に業者の帳簿の写しの任意提出を求め、多くの業者の協力を得る必要があることから、このような条件を付したことには合理性がある」と条件付与の「合理性」の存在を処分庁は主張している。
②条例第7条第3号ア該当の具体的理由においては、「3つの「判定」欄とともに「業者名」欄を公にすることにより、不適正経理に関連付けられた業者は、一律に不適正経理に関与したとの誤解を県民に与え、今後の営業活動に支障を及ぼすおそれがあり、業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」と処分庁は業者の営業活動への支障の「おそれ」の存在を主張している。
③条例第7条第6号該当の具体的理由においては、「仮に業者名が判定結果とともに明らかとなるようなことになれば、(2)で述べたとおり業者には営業活動に支障が生ずるおそれもあることなどから、相当な負担をしてまで県の調査に協力しないという業者も出てくるものと考えられ、今後の調査の実施が困難になるおそれがある」と調査継続への障害のおそれを主張している。
 
2 援用条例各条項の解釈について
(1) 条例第7条第3号イの解釈について
条例第7条第3号イにおいては、①「公にしないとの条件で任意に提供された」情報であることに加え、②「法人等又は個人における通例として公にしないこととされている」情報であるか、又は③「当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められる」情報である場合に非開示とできると規定されている。
また、当該条項による非開示の保護法益については、「公開の取扱いに対する期待と信頼は保護に値するものである」(「静岡県情報公開条例解釈及び運用の基準」、以下「同基準」と記す。)と解釈されている。
さらに、「法人等又は個人における通例として公にしないこととされている」の解釈としては「客観的にみて、当該法人等又は個人が属する業界、業種において、公にしないとの慣行が存在するかどうかを判断する」(同基準)とされ、「当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められる」中の「当時の状況等」の解釈においては「当該条件が付された時点における諸事情を基本に判断することを意味すると同時に、他方において、その後の事情変更(例えば、その後に提供者自ら公にした場合や公にすることについて提供者の承諾が得られた場合など)を勘案する余地も残す趣獅ナある」(同基準)と解されている。
加えて、同基準においては「実施機関は、事務又は事業の執行に不可欠な情報の収集については、根拠規定を定め、それにより情報の収集を行うよう努めるべきである。」と、むやみに本非開示条項による情報収集を図るべきではない獅ヲしている。
(2) 条例第7条第3号アの解釈について
条例第7条第3号アは、「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」情報を非開示と規定しているが、当該条項の解釈として「権利利益を害するおそれがあるとは認められないもの」(同基準)として「市場の流通に置かれた商品の客観的な品質、性状等何人でも相当の負担をすることによって調査可能な情報」(同基準)が挙げられている。
(3) 条例第7条第6号の解釈について
条例第7条第6号における、(県の)事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれについては、「「適正」とは公にすることによる支障だけでなく、公にすることによる利益も考慮して判断しようとする趣獅ナある。したがって、「支障」の程度は、名目的なものでは足りず、実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく法的保護に値する蓋然性が要求される。」(同基準)と解されている。

3 処分庁が非開示とした具体的な理由に対する反論
(1) 条例第7条第3号イ適合性について
処分庁は業者に対して「提出して頂いた帳簿の写しの取扱いについては万全を期し、秘密を厳守します。また、帳簿の写しの内容は調査以外の目的に使用することはありません。」との条件を付し情報を収集したものであるが、依頼者、被依頼者ともに、具体的にいかなる情報を「秘密」と定義し、いかなる使用方法を「調査以外の目的」と概念しているか不明確である。
そもそも公金で購入した物品の納入業者名については開示して当然の情報であり、かつ前述処分庁が業者に示した条件から「業者名等」を非開示にするとの期待と信頼があったとはいえず、前記「条例第7条第3号イの解釈について」中の①の要件及び②の要件を満たしているとはいえない。
また、処分庁が県のホームページ等で「全庁会計調査結果報告書」及び「全庁会計調査結果報告書(資料編)」を公表したことにより、例えばその差替え事案の1例目の経営管理部自治局の調査聞取り調査結果中「差替え2件、127,080円は、①ブックエンド他の消耗品3品目82,530円を納入させ、ブックエンド分を他の2品目の単価に上乗せして支払ったもの(17 年度)」などの記述から、知りたい個別のケースの支出票又は物品取得伺(以下、「支出票等」という。)を公文書開示請求することや替え事案に係るすべての支出票等を公文書開示請求すること等によって、処分庁が非開示とした「業者名」はいかようにしても支出票等の公文書から直接了知しうる情報となるものであり、対象公文書上の「業者名等」を非開示として保護すべき「期待と信頼」の法益は存在しえない。(甲1号証及び甲2号証)
すなわち、具体的な調査結果事実の公表により、処分庁が業者に示した条件は合理性を欠く条件となったことは明らかである。
よって、前記「条例第7条第3号イの解釈について」中の③の要件をも満たしていない。
加えて、処分庁が非開示とした「業者」欄記載の電話番号にあっても、「業者名」が判明すれば電話帳等から容易に知りうる情報である。
 以上のことから、処分庁の条例第7条第3号イの適用は誤りである。
(2) 条例第7条第3号ア適合性について
対象公文書は調査における客観的事実を集計した帳票であって、県と業者のいずれにどのような責任があったかなどの価値判断(評価)を含む文書ではない。
一方で処分庁は「「前年度納入」、「翌年度納入」等のように業者側には関係ないものまである」と評価しているが、「全庁会計調査結果報告書」においては、そのような調査結果としての評価は示されていない。
そもそも、非開示とした「業者名等」の情報は何人でも条例によって入手可能な同じ処分庁の公文書から判明しうる情報なのであって、通常一般人をして複数の情報源から情報をつなげるいわゆるモザイクアプローチによって非開示情報が調査可能な情報にあっては当該情報の開示によって新たに権利利益の侵害性が生じるものと観念することはではないことから、対象公文書上の「業者名等」を非開示とすることには実質的な意味がない。
すなわち「業者名等」は、まさに「市場の流通に置かれた商品の客観的な品質、性状等何人でも相当の負担をすることによって調査可能な情報」(同基準)であって、当該情報の開示により「権利利益を害するおそれがあるとは認められないもの」(同基準)である。
以上のことから、処分庁の条例第7条第3号アの適用も誤りである。
(3) 条例第7条第6号適合性について
処分庁は業者の協力を得ての同様の調査を「今後もぜひとも実施しなければならないもの」と主張するが、調査継続を不可欠と主張するならば、まさに「実施機関は、事務又は事業の執行に不可欠な情報の収集については、根拠規定を定め、それにより情報の収集を行うよう努めるべきである」(同基準)。
さらに処分庁は「仮に業者名が判定結果とともに明らかとなるようなことになれば、(2)で述べたとおり業者には営業活動に支障が生ずるおそれもあることなどから、相当な負担をしてまで県の調査に協力しないという業者も出てくるものと考えられ、今後の調査の実施が困難になるおそれがある」と主張するが、対象公文書と併せて支出票等の公文書を開示請求すれば同様の事態となるものであって、業者における期待と信頼が「(対象公文書上)業者名が判定結果とともに明らかとなる」ことがないという単に形式的なものであれば格別、そうでないならば処分庁の主張は根拠を欠くというべきである。
本件の場合、業者がそのような形式的秘匿を期待し信頼したと認めるに足る事実は適示されておらず、県の主張する対象公文書の非開示事項の開示を事務事業への「おそれ」とする認識は「法的信頼に値する蓋然性」を欠く認識である。
以上のことから、処分庁の条例第7条第6号の適用も誤りである。
(4) 総括
以上(1)、(2)、(3)に反論のとおり、処分庁が非開示とした条例上の根拠規定の適用判断には誤りがあり、対象公文書の公開により判明する事実を別の公文書を別途請求しなければ判明させないという情報公開の姿勢は、条例の目的とする「県政の公正な執行と県民の信頼の確保」という目的にももとる情報公開の姿勢であり違法である。
以上のことから、対象公文書上の「業者名等」は、当然に公開すべきである。

4 付記(添付書証説明)
甲 標目 作成者 作成年月 説明の趣
1 「全庁会計調査結果報告書(資料編)」抜粋1枚 静岡県 平成22年10月 公文書の特定につながる具体的事実を公開している事実。
2 「支出票」(添付の納品書含む)3枚 静岡県 平成17年7月 差替え事案の事業者の関与が対象公文書以外の公文書から判明する事実。

以上