作者は北九州市小倉在住の人。俳句結社「自鳴鐘」主宰(父母より継承し、3代目)である。実は、昨日、私も福岡県人(東京在住)の気安さから見本誌を送っていただいた。早速、最新号の掲載作を読ませていただく前に、ネット上で代表50句を拝読した。その中で、掲句がいちばん最初に目に留まった。女性であるのみならず、人間として何事かをこの世に『産む』ことのリアルさが、『おそろしきこと』と言うまでに緊迫感をもって作者の眼前に訪れたのだろう。その体験のどうにもならぬ切迫感を大きく包み込むように存在しているのが【青山河】なのだろうか。これは、単なる季語の付け合せではなく、逆に言えば、この何物かを自らが産み出す【おそろしさ】の体感を、【青山河】がどうしようもなく際立たせる。作者は、その《産む》ということの恐ろしいまでの異和感を、【青山河】なる外部の取りとめの無い空間に解消させることなく、おのれの肉体感覚の奥深く留め置いたに違いない。青山河の《青》は、そのことを雄弁に物語っている。・・・《続く》
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