力ずくでドア開けてみよ春の暮 春暮れて何食わぬ顔で猫を追ふ 校舎裏の藪の暗がり春の果て 春暮るる松陰神社の手水鉢 春薄暮肝硬変なら余命無し 青不動どこか不機嫌春の果て 晩春の襖の奥のがらんどう ユニットバスの天蓋春に果ては無し 浅草通りは空箱だらけ春の果て 顔の泥は拭いても取れず春の果て デスマスクはたぶん少年春惜しむ
摘草に行くと危うき人ばかり 摘草やあの世の母とこの世の母 草摘むは老いたるゆえかうすれけり 愛犬のロープの長きに草を摘む 草摘むを平成の世の証しとす 新装開店横目でにらみ草を摘む 摘草や防空識別圏の下 マドンナも老いには勝てず草刈女 千草摘み四百万年人の世は 摘草をいとわぬ少年我れもまた 関羽千里を駆ける摘草はまだこれから 摘草の会とは俳句の会のこと 草摘んでをり未生の空の下
モーニングコーヒーこんなにも苦し尾崎豊(オザキ)の忌 半ズボンまだ寒かろう尾崎豊の忌 千住五丁目あまりに近くて尾崎豊の忌 歩いても歩いても遠ざかる尾崎豊の忌 尾崎豊忌の渋谷まるでゴーストタウン 尾崎豊忌の北千住ストリートI LOVE YOU 尾崎豊の忌これ以上大きくなれないよ 尾崎豊忌の宇宙のさむさ激化せり 天安門前広場もストリートのうち尾崎豊の忌 石を投げたら自分に当たる尾崎豊の忌 空箱の葉は青のまま尾崎豊の忌 また生きて死ぬまでの時間尾崎豊の忌
スカイツリーまで徒歩3時間青き踏む 上132下83青き踏む キャンギャルのモンペ姿も青き踏む 犬と猫それぞれの野に青き踏む 生きてれば母九十五青き踏む 壁の向こうは巨人の棲み処青き踏む ダットサンとはニッサンのこと青き踏む 青き踏むガラポンどこにも見当たらず ジーンズに余裕があれば青き踏む メタボなら歩けば治る青き踏む 1条に続く9条青き踏む ふるさとの前衛俳人青き踏む(「連衆」代表 谷口慎也氏) 金子兜太に呆けの兆し青き踏む ラーメンの汁捨て難し青き踏む 篠原鳳作誌上百句選青き踏む 河馬の背中いよいよ近し青き踏む(坪内稔典氏の「船団」に参加) 青き踏む傷痍軍人忘れまじ 日本をやまとと呼べリ青き踏む
生きるための白さをもとめオキザリス(綾瀬駅前公園) おなかいっぱい心の沖へオキザリス 天変地異よってたかってオキザリス 千住新橋抜ければ他界オキザリス 地を這ふように歩いて咲いたオキザリス 昼からのビールちと照れ臭し山吹よ 黄金山神社これで三度目濃山吹 山吹や武道の子らの息はげし 白か黄かたぶん山吹焔たつ 山吹は夜も咲いてゐる信じたし