クラブボクシング@ゴールドジム湘南神奈川

普通、湘南辻堂といえばサーフィンなのにボクシングでひたすら汗を流すオッさん達のうだうだ話!

湘南亭朴竜の拳闘寄席 78 小春日和 中編

2020年08月06日 | ちっちゃいおっさん

小春さんの自宅は都下のある街で大きな自動車修理工場を経営していました。


小春さんはいわゆるお嬢様なのです。


それを知ったのは10名程度の部内旅行に何台かの自家用車に分乗して出かける際に、小春さんは父君の「初代ソアラ」を使わせてくれたからでした。






自家用車がない私達若手(32年前の朴竜)チームは小春さんのソアラに乗らざるを得ない苦しい状況にありました。


小春さんの無茶苦茶で風貌通りの押しの強い往路の運転に大きな危機感を抱いた私達。


復路は私が運転してソアラを小春さんの自宅までお返しに行ったのです。


車が何十台も停められる敷地に車を付けて早々に帰るつもりの私でしたが、車を停めるなりまるで恋人のような風情で助手席にどっかりと座っていた小春さんが、シートを壊す勢いで跳ね上がり、ドアが捥げそうな腕力で和紙の如く軽く開け


「ママ~! パパ~!」と咆哮をあげるのです。「ママだってよ~!ママねぇ。」「おっかあ~!でいいじゃん。」車に残された若手は容赦ありません。


程なく「ママ」と「パパ」が挨拶に出てきて下さいました。






「あらまあ、申し訳ありませんねぇ。こんなところまで来て下さって!」予想に反してママは結構美人です。


「いつも小春がお世話になってます。我が儘な奴でしてすみませんね。」


と結構美人なママの横には小春さん生き写しのパパが愛想よく笑っています。


「ありゃあ、小春さんはパパ似なのね~」私の耳元で女性社員が容赦なく囁きます。






「あのね~パパ、こちらがお世話になっている朴さん。」


「お~ 貴方が朴さんですかあ~ いやいや、娘がいつもお世話になっています。いつも朴さんの話をしてるんですよ~。そうですかそうですか~ 貴方が朴さんですかあ。いやこれからもよろしくお願いしますよ。」


「嫌だあパパ、テヘッ!」


(テヘッじゃないだろうに、テヘッじゃ)との言葉を飲み込みながら、眩暈を感じる私。






一体、私をどのように話しているんでしょう?不安でなりません。


さて、小春さんの自宅から駅まで歩く若手チーム。


「朴さんはやっぱりモテるなあ~」

「あんなに金持ちなんだから養子に入っちゃえ!」



など、今でも昔の同僚と飲むと小春話で盛り上がったりして。




写真は本編とは全く関係がない、ランチ時の死ぬほど暑い溜池山王辺りです




湘南亭朴竜の拳闘寄席 77 小春日和 前編

2020年08月06日 | ちっちゃいおっさん
えー
湘南亭朴竜でございます。
本日も拳闘寄席にお越し頂き誠にありがとうございます。

私、昔々、証券会社に勤めていましてね。

入社3年目の頃、強烈な個性を持った女性の後輩が配属されてきたんですよ。


この後輩、名前は小春(仮称)さんと言います。


小春さんの身長は八重樫東よりやや低いものの村田諒太と同じ階級と思われる立派な体躯。


肩幅や上腕囲はタイソンのように隆々とし、顔は「逸ノ城」と言えます。


おさげ髪は岸田劉生の「麗子像」にも似てるかもしれません。


最近まで学生でしたから、お化粧も上手ではなく、浜田剛史の眉毛、テカテカの丸い鼻に指紋がたくさんついた眼鏡をかけていました。






そんな小春さんはまず仕事を覚えるのが遅い上によく間違うのです。


先輩女性社員が仕事を教えて上げようとすると。「それは私のやり方と違う。そうは思わない!」と新人ながらその風貌通りに押しの強さは天下一品です。


単純な諸用も元々人の話をよく聞かず、勝手に解釈するのでよく間違えるのです。


それを先輩女性社員が注意すると「そうは聞こえなかった!さっきと違うことを言ってる!」と言うものですから、直ぐに部署から孤立するようになりました。


それとは反対に段々と際立ってきたキャラを一目見ようと社内のギャラリーが増えて行くようになりました。


そんな小春さんですが私の言うことは聞くんですね。


「小春さん、今のは君が悪い!先輩に謝るべきだと思うけど!」と諭すと、短い首をもっと埋めて不承不承「テヘッ!」と舌をチロリと見せて謝るのですが、全く可愛くなく寧ろほんのり不愉快な気持ちにさせてくれるのです。






そんな小春さんも一年経つと先輩になりました。部署にまた女性の新卒が配属されてきたのです。


この新卒女性は頭も良く回転も早く何しろ素直で明るいのです。率先して諸用も引き受けてくれますので、文句を言いながらミスが絶えない小春さんに仕事を頼む部員が段々といなくなってきました。


そうなると小春さんは新卒の女性社員にツラく当たるようになったのです。


出向者である部長、副部長は波風が立つのを嫌います。私の先輩は少しだけ頼りない好人物、調整するのが苦手です。


結局、私が間に入りふたりの言い分を聞くのですが、非は小春さんにあるのです。で、注意すると「テヘッ!」ですが、眼には暗い光が宿っています。なぜ分かってくれないのオーラが広い肩から立ち登ります。


私がその新卒の女性社員とメシでも食う約束を何処からか聞いて、私たちの後を付いてくることもありました。私たちは不穏な空気に気づいて振り返ると、電信柱の陰に身を隠すんですがはみ出てますって!






それからさらに半年が過ぎた頃、小春さんは部員には何の話もなく退職してしまいました。


今でも当時の同僚と会うと必ず小春さんの話になります。後にも先にもあれ程立ったキャラはそう会えはしないんだと。本当に不思議な不思議な後輩でした。


続く




写真は本編とは全く関係ない江ノ島水族館