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明日のソロステージのセットリストの通り歌いながらのラン。
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オープニングはビートルズのPenny Lane
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2曲目からはオリジナルでまずは
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3曲目は石川町を舞台にした別れゆくカップルを歌ったメロディ
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4曲目はオフコースのパロディで
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5曲目は亡くなったベーシストに捧げる
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6曲目はその奥様に贈る
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7曲目はこの季節にぴったりの失恋ソング
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8曲目はイラク戦争にボランティアで現地に赴き人質になった男の話
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ラストはビートルズの
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ソロなんて久しぶりだ
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証券マン朴竜、支店勤務1年目。
飛び込み先から足を引きづり肩を落とし汗塗れで帰社すると、支店長から
「お~!朴!ご苦労さん!ちょっと支店長室に来てくれ!」と命じられました。
はてさて、サボってるのが見つかったか、交通費をちょろまかしたのが暴露たか、取引先の美容院の美容師さんと付き合ってるのがバレたか、ビクビクしながらドアを開けると、
「朴よ!悪いけどちょっと肩揉んでくれないか?」と頼まれました。
今ならパワハラとかになるんでしょうか。「分かりました!」とビクビクしながら支店長の後ろに回りゆっくりと揉み始めると
「お~ 気持ちいいわ~ オマエ上手いなあ~」とか言いながら眼を閉じリラックスしています。
意を決して
「支店長⁈ 何かお話しがあるんじゃないですか?」
「あ、いやいや。オマエはよく頑張ってるなあ。お客とかの評判もいいし。支店も明るくなった。オマエに負けそうな先輩も鞭が入ってきたし。その調子でやっていけよ。」
あ、それだけ?とホッとすると
「あ~ あと佐藤には余り付き合わなくてよろし。あんなちゃらんぽらんになっちゃいかん。佐藤にもあまり連れまわすなと言っておく。営業は数字だけ出ればいいもんじゃないからな。」
と師匠には手厳しい言葉。でもそれはそれで愛情が見え隠れします。
こんな調子で一年間、たまに支店長室に呼ばれ肩を揉みながらありがたいお話を頂きます。
「あ~ オマエ本当に上手いなあ。朴よ、男の品性と言うのはなあ、人が見ていないところで何をするかで決まるんだぞ!だから高橋や車屋のようにゴルフのスコアを誤魔化すのは品性がないと言うんだ。男はごまかしちゃあお終いよ。」
「ありがとうございます。肝に銘じます。では支店長!日暮里のスナックのママは支店長のコレと推察しますが、これはママにも奥様にも誤魔化してるわけですな?」
「朴、いい質問だ。これは品性ではなく甲斐性だな。男は持てなきゃいかん!」
または
「あ~!オマエ上手いなあ。株屋よりマッサージ屋になればいいかもな。あ、営業は身だしなみだ。男はいつもキメてなきゃいかん。須賀や尾淵を見習えよ。間違っても鈴木や古谷のようにしてはいかん!」
「ありがとうございます。肝に銘じます。ところで支店長!身だしなみですが、であれば支店長の首にあるホクロから長いほくろ毛が伸びてるんですが、抜いていいでしょうか?」
「朴よ。これは抜くとそこから空気が抜けて死んでしまうから、そっと見守ってくれ!」
「分かりました!ではそっと見守って行きます!」
支店長はあの時、今の私よりずっと若かったんですね。
私は今、あの時の支店長の年齢を越えてしまいましたが、あの時のあなたのようにしっかり生きているのかどうか自分では分かりません。
でも、今の私の大きな部分ははあなたの言葉や教えで成り立っているのです。
本当に感謝しています。
佐藤先輩はスナックやバーで飲むのが好きでよく連れて行って頂いたものです。
その殆どが巣鴨や田端、上野や赤羽など下町の寂れたスナックです。
その手のスナックには容姿端麗なママさんがいるわけでなく、可愛いおねえちゃんがいるわけもないのです。
佐藤先輩は「安くて簡単に口説けそうなお店」が大好き。
綺麗だったり可愛かったりすると気が引けるようで、支店長や副支店長からは「佐藤はブ○好き」と言われてましたし、私の同期の女性社員からも「佐藤さんって志が低い!」と弄られていました。
新規のスナックを探すと
「朴ちゃん、ここでちょっと待っていなさい!私が交渉してくるから!」
とひとりでスナックの中に入り、女性の数と質を見定めた上で、2人分の価格交渉に入るのです。
「安くて綺麗な女性が沢山いる」これが師匠の条件です。普通「綺麗な女性が沢山いる店」は値段も高いものです。
何だかんだ言っても「無い袖は振れない」ので「安くしてくれて、地味な女性が2~3人いる下町のお店」になってしまうのです。はっきり言ってせこいです。ちょっと恥ずかしいです。
そして、店に入って名前を尋ねられると「安田一平です!」と答えます。「安田一平」は本宮ひろ志の漫画「俺の空」の主人公。日本最大の財閥、安田グループの総帥の息子の名です。
「私が安田一平、後輩ですが、こいつは冴羽遼です。」
「師匠!恥ずかしいからやめてくれよ~(心の中で)」
まあ百歩譲って「安田一平」は知らない女性も多いでしょう、だからこれは許す!でも当時、「冴羽遼」はテレビでアニメやってるし。っていうか、オレの顔「冴羽」って顔じゃね~し。
で、「安田一平」の割には金持ってねぇ~し。
そんな師匠、段々と酔ってくると自分が「一平」であることを忘れてしまいます。
女性が「一平さん、何歌う?」と聞いても自分が呼ばれたとは思っていません。
そんな時は「一平師匠!次何歌いますか?」としっかりフォローしなければなりません。そうすると
「あ、ありがとうね朴ちゃん!」と私が「冴羽遼」であったこともすっかり忘れているのでした。
これは私と飲みに行く時に限らず、支店長と行く時も「安田一平」を名乗るのです。
支店の会議で支店長が「あ~佐藤!佐藤から発言がないようだけど?あれ? いないのかな?」佐藤師匠は爆睡しています。
そうすると支店長は「あ~、では安田一平君はいらっしゃいますか?」と言い直すと、師匠はむにゃむにゃ言いながらやっと眼を覚ますのでありました。