大学時代のアイドルにまつわるエピソード後半です。
〇アグネス・ラムとグラビア雑誌争奪戦
この頃のアイドルで特に印象に残っているのが、現在で云うグラビアアイドル(グラドル)の元祖アグネス・ラムである。1976年大学1回生の夏、いつものようにバイトから帰ると商学部のF先輩の部屋を訪れた。部屋に入ると先輩は、いつものポジションに座り、壁にもたれてギターを爪弾きながら、因幡晃の『わかって下さい』を静かに歌っていた。F先輩はギターを弾く手を止めて、壁に貼られたポスターを指差しながら「どう、ええやろ」と嬉しそうに言うのであった。
F先輩の指差す壁には、水着姿の女の子のポスターが貼ってあった。その女の子は東洋系の愛くるしい顔立ちで、美少女タイプなのだが、小麦色の肌に付けた小さなビキニに隠された胸は、今にもはちきれんばかりの大きさだった。当時はまだ巨乳という言葉はなかったが、その豊かな胸に不釣合いなキュートな顔立ちが、えも言われぬアンバランスな魅力を醸し出していて、ぼくは思わずポスターを穴のあくほど見つめてしまった。
ぼくは当時バイトに明け暮れるかなりの貧乏学生だったので、『週刊プレボーイ』、『平凡パンチ』、『GORO』などの、いわゆる青年誌と呼ばれる雑誌を自分で買うことはほとんどなかった。F先輩はこれらの雑誌をよく買っていて、読み終わった後にお下がりを読ませてもらっていたのだが、最終的にいらなくなると自分の部屋のドアの横の廊下に出しておくのである。これには理由があり、当時ぼくが下宿していた学生アパートは、オーナー兼管理人のオバチャンが廊下の掃除もしてくれたのだが、読み終わった新聞や雑誌を廊下に出しておくと、掃除のついでに回収してくれるシステムになっていたのだ。つまり廊下にいったん出された雑誌の類は、持ち主が所有権を放棄したとみなされ、その瞬間誰の所有物でもなくなるのである。
F先輩の他にも青年雑誌を廊下に出す先輩が数人いて、その部屋の前には不定期に雑誌の山ができるのだが、タイミングよくその部屋の前を通りかかり、たまたま自分のお目当てのアイドルが載っている青年誌がゲットできればかなりラッキーということになる。だがこの所有権が放棄された雑誌を狙っているのはもちろんぼくだけではない。当時グラビアで人気のあった、アグネス・ラムはもちろん、山口百恵、水沢あき、竹下景子などが激写された号はかなりの競争率で、他の下宿生との熾烈な争奪戦に勝ち残ったものだけが、愛しの女神たちのグラビアを手に入れることができたのである。
〇キャンディーズの黒パンツ
確か77年か78年ころの話だが、同じ下宿のHは大のキャンディーズファンだった。親衛隊に入っている友人からチケットを手に入れた彼は、初めてのコンサートへ勇んで出かけていった。
コンサートから帰ったHに皆で「どうだった?」と問いかけると、「最高によかったでえ~」と和歌山出身のHは関西弁でコンサートの様子を語りだした。「キャンディーズはミニはくやろ。席が前の方やからパンツが見えるねん。それが黒色でな、スーちゃんの生パンツ見てもうたわ」とスーちゃんファンのHは、ちょっと照れながら興奮冷めやらぬ様子で語ってくれるのである。もちろんパンツは「見せパン」なのだが、そのいじらしさに感動したぼくたちは、その日からしばらく彼を「クロパン」と呼んだのは言うまでもない。
そんなHの大好きだったスーちゃんも、今は還らぬ人になってしまったが、同じ時代を生きた同世代のぼくたちの記憶には、あの頃のスーちゃんの姿が今もしっかりと焼きついている。
今でもスーちゃんのことを思うと、あの日の嬉しそうなHの顔が浮かんでくるのである。
■キャンディーズ13th『やさしい悪魔』(1977年)
喜多条忠/吉田拓郎コンビの楽曲。バックのハモンドオルガンのアレンジが印象的。
■渡辺真知子の1st『迷い道』(1977年)
八神純子と同じヤマハポプコン出身のソングライター
他のニューミュージック系のアーティストと違い、テレビの歌番組などにもよく出演していた
78年にリリースされたアルバム『フォグ・ランプ』は完成度が高く、ぼくの下宿の洋楽ファンたちからも高い支持を得ていた
〇お気に入りのアイドルたちのグラビアの切り抜きが、自作のカセットレーベルとして残っていたので紹介しよう。
■当時ラムちゃんのグラビアには大変お世話になりました!
そういえばラムちゃんの服を着た写真をみたことがないのはぼくだけ?
■未来のダンナに激写された70年後半の頃の南沙織
■ぼくのなかでは大場久美子といえば、オリンパスOM10のCM(1979年)が頭に浮かぶ
白いタオルを肩にかけカメラ目線でたたずむ美少女・・・
最後にタオルを取った時の真っ赤な水着が印象的だった
■デビュー当時の川島なお美と石川ひとみ(78年~79年)
二人ともすごい美少女、今見てもカワイすぎる!
川島なお美は当時青山学院在学中で、後に『お笑いマンガ道場』でブレイク
石川ひとみは81年リリースの『まちぶせ』がヒットしました
70年代はキャンディーズと山口百恵の引退でひとまず幕が下り、80年代に入るとすぐに松田聖子、中森明菜、小泉今日子などの新しいスーパーアイドルが次々に出現、アイドル第2次黄金期を迎えるのであった。