県道495号線を姫街道の交差点からさらに南へ進み、名鉄豊川線の手前で旧伊那街道と合流、JR飯田線沿いに牛久保方面へ向かいます。伊那街道をそのまま進むとほどなく牛久保の町並みに入り、八幡社の向かいにタイル貼りの昭和モダンな建物が見えてきます。昭和7年築の旧牛久保郵便局で、現在は西隣に新しい局舎が建てられています。
戦前の地方の郵便局は個人所有がほとんどで、牛久保郵便局も東隣に和風の住宅が付属しています。局舎はファサード全面に、白っぽいスクラッチタイルが貼られたモダンな洋風意匠で、200mほど先にある同じく洋風の旧星野医院とともに、戦前の昭和の牛久保の町並みを今に伝える貴重な近代建築です。
◆旧牛久保郵便局/愛知県豊川市牛久保町常盤12
竣工:昭和7年(1932)
設計:花田栄一
施工:井桁屋(現花田工務店)
構造:木造2階建
撮影:2014/05/03
■和風の住宅部分と洋風の郵便局舎がセットで残っています
■タイル貼りのファサードだけ見るとRC造に見えますが、横から見ると看板建築風の木造なのが良く分かります
■端正な直線的デザインで装飾はありませんが、外壁にまわした石貼りの帯と2階の連続する上げ下げ窓が外観上のアクセントになっています
■淡い色合いのスクラッチタイルがなかなかお洒落で、モダンな雰囲気を演出しています
向かって右側の通用口の扉は当時のままの木製です
■豊川牛久保郵便局の文字がうっすらと残っています
■雨どいも逓信省の〒マークが入った特注品
■掲示板もレトロなデザイン
旧街道沿いには戦前の郵便局舎がそのまま残されているケースをよく見かけます。使われなくなった建物は老朽化が進む一方なので、手遅れにならないうちに保存再活用する手段が望まれます。滋賀県の旧醒井郵便局では、町の資料館として再生し、貴重な地域の近代化遺産を保存活用しています。
牛久保には牛久保城跡や今川義元の胴塚、山本勘助の墓など多くの歴史遺跡が残されています。これらの歴史遺跡と近代建築を組み合わせて、人々が訪れたいと思うような魅力的な町づくりができないものかと素人の浅知恵で思ってしまいます。どこの自治体も予算には余裕がなく、費用対効果とか考えるとなかなか難しいのが現実なのでしょう。あと10年もすれば、現存する近代建築は文化財指定の建物か、運よく資料館などとして保存活用された一握りの建物だけになってしまうのでしょうね。それまでに今はまだかろうじて現存している街角の近代建築を、ひとつでも多く紹介したいとあらためて思う今日この頃です。
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shortwoodさんのご指摘により「明治大正昭和初期の擬洋風建築」こそ、自分の大好物であることがわかったJOE COOLです。
いままで「どうして明治村が好きなんですか?」と聞かれても、「洋を目指しつつ…和が混じりこんだような…ぅぅ」と説明に窮してたのですが、
これからは「明治の擬洋風建築に見られる和の要素が好きだからです。」と簡潔に説明できます。
なおかつ、どうして自分が看板建築に惹かれるのか?という疑問まで解決されました。
看板建築こそ、擬洋風建築の最たるものだからなんですね。長年のモヤモヤが、スッと腑に落ちました。
その節は、ありがとうございました。
で、この旧牛久保郵便局。まさに大好物ですよ。だって、擬洋風と純和風の完全ハイブリッド体じゃないですか。(^^;
ファサード全体の風化具合も、進み過ぎす、浅過ぎず、経てきた歴史の重みを建物に加えています。
公式に郵便業務を終えたとき、看板を撤去したんでしょうけど、屋号が痕跡としてハッキリ残っています。
長年、この地の人々に便りを届け続けてきた建物自身の意地とプライドがそこに感じられ、心がグッと詰まって、ちょっと泣きそうになります。(/ヘ ̄。)グスッ
〒マークのエンボス入りカスタム雨どいも、希少性において申し分ない。緑青が出てることから銅製であることも伺え、さらにポイントが上がります。
そして、個人的にツボなのは、掲示板のデザインですよ。
唐破風的な曲線というか、そりとむくりが入り混じった反曲カーブの屋根。細かく見ると、四隅がちょっと反り上げてある。
このデザインルーツは、どう見ても神社仏閣建築の様式です。
この本来、洋風には不純物であるはずの和要素を混ぜ込みつつ、ウマいこと全体的に調和させてしまう。当時の職人の技ってスゴいです!
旧醒井郵便局や瑞陵高等学校旧講堂のように、保存するような動きになるといいですね。
それではっ。( ⌒ー⌒)ノ゛゛゛゛
実はわたしも、本格的ながちがちの西洋建築より、ちょっと崩れた擬洋風や看板建築などの建築に魅力を感じるひとりです。
料理に例えると、本格的なフレンチやイタリアンもたまにはいいですが、普段一杯やるなら和洋中が混然一体となった居酒屋メニューに勝るものはありません。
建築も有名どころの建築家が設計した正統派の西洋建築よりも、市井の棟梁が洋風建築のイメージを膨らませ、独自の世界をつくりだす、B級グルメならぬB級建築が断然面白いのです。
これからも街角の洋風建築発掘に精進していく所存ですので、よろしくお願いします。