素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

サッカーの面白味が凝縮されたW杯決勝戦、アルゼンチンが勝利

2022年12月19日 | 日記
 予想をはるかに越える好試合だった。前半で2対0とアルゼンチンがリードした時は、もはやこれまでと思ったが、さすが前回優勝のフランス後半2点を取り返し同点にした。延長の攻防も見ごたえがあり1点取っては取り返すと目が離せない展開が続いた。最後はPK戦で4対2でアルゼンチンに軍配が上がり決着がついたが、サッカーの醍醐味がギューッと詰まった面白い決勝戦であった。両チームのエース、メッシとエムバぺが期待通りの働きをしたのもゲームに花を添えた。

 今回のW杯では私のPK戦の思い出が多く思い出されたが、12月16日の毎日新聞のコラム『金言』で小倉孝保論説委員が《PKを外した3人》というタイトルで含蓄のある話を書かれていた。今大会の締めくくりとなるPK戦を見ていてよみがえってきた。

サッカー発祥の地、英イングランドの市民にとって触れられたくない記録がある。欧州選手権での優勝がないのだ。
 この大会は1960年から4年に1度、開かれている。欧州では、ワールドカップ(W杯)と同等、もしくはそれ以上の人気や権威がある。
 第1回大会の優勝はソ連(当時)だった。以降、独仏伊の3国はもちろん、ポルトガルやギリシャも優勝している。

という書き出しで「そうなんや!」と引きつけられた。

 そのイングランドが、新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期され、昨年開かれた第16回大会でドイツ、ウクライナ、デンマークを撃破し、初めて決勝に進んだ。相手はイタリア。場所はサッカーの聖地、イングランド・ウェンブリーだった。という。

 開始2分にイングランドが先制したが後半イタリアに追いつかれ延長戦になったが双方、無得点でPK戦での決着になった。イングランドは3人がゴールを決められず、敗れた。

 このPKを外したラッシュフォード、サンチョ、サカの3選手は黒人だった。SNS(ネット交流サービス)上では人種差別的な中傷があふれ、ラッシュフォード選手を描いた地元の壁画は壊された。

 しかし、この中傷に多くの国民が怒りを表明し、全国警察署長委員会(NPCC)の議長は「中傷は許さない。徹底的に追跡し報いを受けさせる」と語り、警察は複数の容疑者を逮捕した。

 また、ジョンソン英首相(当時)は「人種的な中傷を受けるべきではない」と非難し、中傷した者にはサッカーを観戦させないと約束した。ラッシュフォード選手の壁画は住民たちの手で修復された。

 この一連の流れを受け小倉さんは、次のようにコラムを締めくくった。

 《市民にとって欧州選手権優勝は夢である。ただ、それ以上に大切なのは、差別を許さぬ姿勢を示すことだった。社会が多様化する中、卑劣な行為を許せば、対立を生み、やがて市民社会を破壊する。人々の危機感はそこにあった。

 日本でも民族差別的ヘイトスピーチがやまない。京都府宇治市では昨年、在日コリアンの多い地区で放火事件もあった。

 総務政務官の杉田水脈氏は過去に、性的少数者の尊厳を踏みにじり、朝鮮民族や先住民の伝統文化を侮蔑する発言をしている。

 総務省はネット上の中傷対策を担っている。杉田氏をその政務官に任命したことについて、岸田文雄首相は「能力を持った人物だと判断した」と正当化している。

 少数者を傷つける中傷や侮蔑に対し、私たちは怒りを十分共有しているだろうか。サッカーを通じ学ぶべきは、戦術や戦略だけではない。


 SNSによる誹謗、中傷に対する裁判のことをよく目にするようになった。否が応でもネット社会で生きていかなければならない今、小倉さんの言葉は深く胸に留めておきたいとあらためて思った。
 
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