三寒四温ゆゑ人の世の面白し (大橋越央子) 春隣という感じの暖かい日であった。窓を全開にしてフローリングの仕上げの作業ができた。細かいだけに思ったより時間がかかった。電動のこぎりだと10秒で終わる作業が手で切るとなると10分以上かかる。ただ、切っている間に押し入れづくりのアイデアなどが出てきたり、宮大工のひとの話がよみがえったりして能率は悪いが別の良さもある。180cmの長さの切断となると一汗かく。嫌になると昨日『余禄』で読んだフンコロガシの話を思い出しては気をとりもどした。
フンコロガシのすごさを知ったのは奈良公園の特集番組であった。たくさんの鹿が長きにわたり毎日毎日糞をしているにもかかわらず、観光客などに不快な思いをさせない環境が保たれているのは昼夜を問わずフンコロガシが糞を転がし球状化させつつ運び。地中に埋めて食料にしているということを知った。それまでほとんど無意識であったが、言われてみてハッと気づき。そのすごさに感動した。以来、奈良公園を訪れるたびフンコロガシのことを思い、心の中でエールを送るようになった。
フンコロガシは和名で正式にはスカラベという。古代エジプト語が語源となっている。『余禄』によれば、古代エジプト人はスカラベという甲虫を崇拝していて、この聖なる虫をかたどったお守りを金や石、陶器でつくり装飾品にしたり、死者の胸に飾り、棺の下に置いて葬るという習慣もあったという。
糞を転がすスカラベ
王家の谷の壁画に描かれたスカラベ
また、「昆虫記」で有名なファーブルは40年にわたって観察を続けたことも紹介している。ファーブルは糞の玉を運ぶスカラベが険しい坂で何度転がり落ちてもあきらめず、繰り返しまっすぐ坂を上ろうとする習性に着目した。まっすぐ行くことができるのはスカラベが太陽や月で方向を知るからだということがわかったという。
それに加えて新発見があったことに『余禄』はふれている。2~3日前に発表されたみたいだが、わたしの目には留まらなかった。ちょっと悔しい。検索してみると確かにありました。
スウェーデン・ルンド大学(Lund University)などの研究者らと共同研究した南アフリカのウィットウォータースランド大学(University of the Witwatersrand)の生物学研究チームは、地元のプラネタリウムで夜の空を再現し、フンコロガシの行動を観察した。その結果、脳は小さく、視力は弱いフンコロガシが、天の川の星々の光を頼りにまっすぐ進み、ふんを奪い合うライバルのいる場所に円を描いて戻らないように移動していることが分かった。
フンコロガシは人工の光よりも、太陽、月、銀河の光を好むようだ。天体ははるかかなたにあるためフンコロガシにとっては動いていないように見え、固定された基準点になる。
アザラシや一部の鳥や人間が星を道しるべにすることは知られているが、天の川を手掛かりにすることが報告されたのはフンコロガシが初めて。同じ研究チームは以前、フンコロガシが方位を知るための光源を探すために、丸めたふんの上に登ってちょっとしたダンスのような動きをすることを発見していた
月のないまっくらな夜は天の川のあかりを道しるべとしてまっすぐ糞を転がしていることに驚いた。とともに古代エジプトから宇宙まで壮大な時間と空間を生きているということに素直に感動した。
奈良公園だけでなく砂漠など地球上のあらゆる場所で営々と糞を転がし続けているのである。その環境をコンクリートなどで固めてこわしているのは人間である。そうして犬の散歩でみんなビニール袋を下げないといけなくなっている。昔にもどれとは言わないが、せめてフンコロガシの活躍する場は残すという心配りは必要だと思う。便利さと清潔だけを追い求めていると大切なものを失ってしまう。
あらためて思い直した次第である。
フンコロガシのすごさを知ったのは奈良公園の特集番組であった。たくさんの鹿が長きにわたり毎日毎日糞をしているにもかかわらず、観光客などに不快な思いをさせない環境が保たれているのは昼夜を問わずフンコロガシが糞を転がし球状化させつつ運び。地中に埋めて食料にしているということを知った。それまでほとんど無意識であったが、言われてみてハッと気づき。そのすごさに感動した。以来、奈良公園を訪れるたびフンコロガシのことを思い、心の中でエールを送るようになった。
フンコロガシは和名で正式にはスカラベという。古代エジプト語が語源となっている。『余禄』によれば、古代エジプト人はスカラベという甲虫を崇拝していて、この聖なる虫をかたどったお守りを金や石、陶器でつくり装飾品にしたり、死者の胸に飾り、棺の下に置いて葬るという習慣もあったという。
糞を転がすスカラベ
王家の谷の壁画に描かれたスカラベ
また、「昆虫記」で有名なファーブルは40年にわたって観察を続けたことも紹介している。ファーブルは糞の玉を運ぶスカラベが険しい坂で何度転がり落ちてもあきらめず、繰り返しまっすぐ坂を上ろうとする習性に着目した。まっすぐ行くことができるのはスカラベが太陽や月で方向を知るからだということがわかったという。
それに加えて新発見があったことに『余禄』はふれている。2~3日前に発表されたみたいだが、わたしの目には留まらなかった。ちょっと悔しい。検索してみると確かにありました。
スウェーデン・ルンド大学(Lund University)などの研究者らと共同研究した南アフリカのウィットウォータースランド大学(University of the Witwatersrand)の生物学研究チームは、地元のプラネタリウムで夜の空を再現し、フンコロガシの行動を観察した。その結果、脳は小さく、視力は弱いフンコロガシが、天の川の星々の光を頼りにまっすぐ進み、ふんを奪い合うライバルのいる場所に円を描いて戻らないように移動していることが分かった。
フンコロガシは人工の光よりも、太陽、月、銀河の光を好むようだ。天体ははるかかなたにあるためフンコロガシにとっては動いていないように見え、固定された基準点になる。
アザラシや一部の鳥や人間が星を道しるべにすることは知られているが、天の川を手掛かりにすることが報告されたのはフンコロガシが初めて。同じ研究チームは以前、フンコロガシが方位を知るための光源を探すために、丸めたふんの上に登ってちょっとしたダンスのような動きをすることを発見していた
月のないまっくらな夜は天の川のあかりを道しるべとしてまっすぐ糞を転がしていることに驚いた。とともに古代エジプトから宇宙まで壮大な時間と空間を生きているということに素直に感動した。
奈良公園だけでなく砂漠など地球上のあらゆる場所で営々と糞を転がし続けているのである。その環境をコンクリートなどで固めてこわしているのは人間である。そうして犬の散歩でみんなビニール袋を下げないといけなくなっている。昔にもどれとは言わないが、せめてフンコロガシの活躍する場は残すという心配りは必要だと思う。便利さと清潔だけを追い求めていると大切なものを失ってしまう。
あらためて思い直した次第である。