https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180223-00054451-gendaibiz-bus_all&p=2
日本と言えば、高品質な自動車、ハイテク製品に寿司……というのはもう10年、20年も前の話。いまニューヨークで一番勢いがあるのはラーメン、アニメにゲームです。日本発のオリジナリティとクリエイティビティが求められているのです。略
アメリカに進出する日本人の誤解「あるある」
ありがちな失敗(その1)「日本」と言えば売れると思っている
確かに世界で和食店は増えています。寿司のファンも多いです。だからといって、世界中で日本ブームが巻き起こっていると思うのは、いくらなんでも勘違い。日本に好意的な印象を持っている人は多いと感じますが、実際のビジネスでお金を払うかどうかはまた別の話。ましてや「メイドインジャパンなら売れる」的な考えは、時代錯誤もはなはだしいというほかありません。
けれども、筆者が初めてお会いするクライアントのなかには、そんな安易な考えに頼っている方が少なくありません。ニューヨークの人から見た東京というのは、東京の人からみた日本の地方都市のようなイメージ。東京は聞いたことはあるし、ある程度は認めるけど、ニューヨークで通用するかは別の問題でしょ、という感じなのです。
ありがちな失敗(その2)「モノさえよければ売れる」という誤解 略
ニューヨークは世界中からさまざまな個性を持ったモノやサービスが集まる場所。次々と新しいものが出てくる競争のなかでは、たとえ日本でナンバーワンであっても、ニューヨークにすでにあるもののコピーと見られてしまったらお終い。逆に、日本では2番手、3番手、いや10番手でも、ニューヨークでオンリーワン・ナンバーワンならチャンスはあるのです。略
一つのトピックに精通した人間として堂々と語りだすと、貫禄のようなものが出るのでしょうか。相手は一目を置いて話を聞いてくれるのです。
なお、筆者は英語が堪能ではありませんが、それは問題ではありません。自分の専門分野に関する単語とアピールするための表現はしっかり覚えて、あとは自信たっぷりにふるまうことです。英語の文法や発音をエレガントにするための努力よりも、伝える中身で勝負しましょう。略
「和牛」を宝飾品と同様に扱う発想
②ストーリーを語る~和牛とラーメンがニューヨークで売れているワケ 略
ニューヨークでは、和牛の値段は米国産高級ステーキ肉の3倍はします。そこで、近所のスーパーの陳列棚に並べるような売り方ではなく、洋服や宝飾の高級ブランドと同じように扱う必要があると考えました。
具体的にはどうしたかと言うと、タキシードを着たウェイターが和牛を桐の箱に入れて顧客に見せつつ、「この牛にはビールを飲ませ、モーツァルトを聴かせて育てたんです」といったエピソードを披露し、注文する時点からスペシャルな体験を演出しました。
ストーリーを変えることで、同じ商品でもこれまでと違う価値をアピールして買ってもらえるようにもなります。
「一風堂ニューヨーク店」の成功に学ぶ
ラーメン「一風堂」はこの点でとても成功しています。
一風堂ニューヨーク店は、混雑時には席に着くまで60分待ちという超人気店。待ち時間はウェイティングバーでカクテルを飲みながらゆっくりと過ごします。日本人の抱くラーメン店のイメージからは遠く離れた、おしゃれなデートスポットなのです。
席に着いたら、まずは前菜をつまみながらワインを飲み、落ち着いたところでラーメンを食べて、最後にデザート。みなフルコースのディナーを2時間かけて楽しんで帰ります。ラーメン1杯で20ドル、お酒も合わせると2人で合計150ドル支払うこともざらにあります。
日本では、ラーメン1杯1000円以下という感覚が染み込んでいますが、アメリカ人にはそういう思い込みはありません。日本人がおしゃれなイタリアンで前菜・パスタ・デザートにワインを飲むデートに2人で1万円使うのと同じ感覚で、ニューヨーカーにラーメンを食べてもらうことに成功した一風堂の作戦勝ちです。略
③失敗をおそれないガッツを持つ~優秀さより、ガッツが重要
アピールポイントが見えてきたところで、次はどう売り込んでいくかです。この問題の最良の解は、失敗を覚悟で「数を打つ」ことでしか見つかりません。失敗しても失敗しても、トライをくり返すことです。
私もこれは苦手でしたが、同僚のインド人が目を覚ましてくれました。彼は自分の営業のため、片っ端から電話しまくっているのです。そのしつこさで嫌がられることも多いのですが、コンタクトする量が多いので気がつくとトップクラスの売り上げを達成していました。
受注確率を上げるよりも、圧倒的なコンタクト量を作るほうが受注を増やすための近道だと、彼のおかげで気づかされました。実際やってみると、やはりことごとく断られるのですが、「ニューヨークは失敗が許される街だからハートを強く持て」「失敗の量が少ないやつは成功しない」と同僚や上司に励まされ、とにかく続けています。
「とにかく数を打て」だなんて、MBAホルダーの体験談なんだから、もっと深みのあるサジェスチョンを……と思われる方がいらっしゃるかもしれません。しかしこれこそが、私がインシアードに入学して間もなく教わったことなのです。
インシアードに留学して最初に受けた講義のゲストスピーカーに「インシアードに入学した時点で君たちが優秀なのはわかったから、これ以上の勉強は必要ない。君たちがビジネスで成功するために必要なのは『ガッツ』だ」と言われました。これから勉強しようという人に何てことを言うんだろうとそのときは思いましたが、いまは本当にその通りだと思います。
トライ&エラーのサイクルを回しまくれ
海外に住んでいると日本の商品の良さをますます実感して、日本がまるで宝の山に見えてきます。とりわけ、アメリカは日本の数倍の市場規模があり、日本ファンも多いので、商品を売り込むチャンスはいくらでもあります。実際に売り上げを伸ばしている例を、私自身もたくさん目にしてきました。
いまのニューヨークで新規事業を成功させるには、トライ&エラーをくり返してサイクルをどんどん回し、実験の量を速く多くこなすのが一番の近道だと言われます。第一線のビジネスパーソンたちはみなそれを実践しているのです。うまくいかないことも一つの成果と思って、どんどん前に進んでいくことが何より大事なのです。
日本製品というだけでは売れず、東京で売れたからと言って世界では売れません。いかに現地で目立てるのか、いかにストーリーで付加価値をつけるのか、そして優秀さではなくガッツで負けないハートが、ニューヨークに限らず海外進出を成功させる三大要素なのだと思います。