血液1滴、「ステージ0」でもがん判定 混迷の東芝は「医療のDNA」で蘇生できるか【けいざい百景】(時事通信) - Yahoo!ニュース
1回2万円、人間ドックで提供も
長年、日本人の死因トップの「がん」。総合電機メーカーの東芝は、がんの超早期発見に向けた技術の実用化を目指している。1滴の血液があれば、わずか2時間で胃がんなど13種類のがんにかかっているかどうかを「ステージ0」でも検知可能というから驚きだ。東京都内のクリニックと協力して効果を検証する予定で、今年度内の事業化を目指す。(時事通信経済部 佐藤泰一) 【写真特集】東芝製品の歴史 かつての経営危機で「虎の子」の医療機器事業を手放した東芝。今月10日には、昨年の定時株主総会をめぐり、外部弁護士が「公正に運営されたものとはいえない」とする調査報告書を公表し、ガバナンス(企業統治)不全が露呈した。経営の混迷が続く中、研究レベルで残っていた「医療のDNA」は、新規ビジネスとして花開くことができるのか。 東芝が開発を進めているのは、血液中に存在するリボ核酸(RNA)の一種「マイクロRNA」から、がんの可能性を調べる技術だ。 マイクロRNAは、20個程度の塩基からなる短い1本鎖構造で、遺伝子の発現などに重要な働きをしている。近年の研究で、がんなどの疾患にかかるとマイクロRNAの種類や量が血液中で変動することが分かった。 東芝は2014年から5年間、国立がんセンターなどと共同研究を実施。この結果、胃や肺、大腸、卵巣、乳がんなど計13種類のがんの患者と健常者を99%の精度で識別することに成功した。チップ(基板)と小型の検査装置も開発し、約2時間で判定できるという。 今年3月にはミッドタウンクリニック(東京)と連携。1000人を対象に検証作業を行う予定で、年度内に事業化したい考えだ。1回2万円程度のサービスとして、人間ドックなどで提供することも想定している。
「いつ、どこで」相次ぐ声
がん診断は一般的に、コンピューター断層撮影(CT)などの画像検査、血液の「腫瘍マーカー」検査、細胞や組織を切り取る病理診断を組み合わせて行われる。しかし、画像検査や病理診断は肉体的にも金銭的にも負担が大きくなりがち。腫瘍マーカーも、がんがある程度進行していないと診断が難しいという欠点がある。 がんで亡くなる人は毎年30万人以上を数え、81年以降、日本人の死因トップだ。ただ、死亡率はがんの進行に大きく左右され、胃がんや肺がんの「5年生存率」も、最も進んだ「ステージ4」では1割に満たないが、「ステージ1」では9割を超える。 今回のマイクロRNA技術は、既存手法のデメリットを補うだけではなく、早期発見により生存率を底上げする可能性も秘める。東芝には、がん患者やその家族らから「いつ、どこで、この検査を受けられるのか」といった問い合わせが相次いでいるという。