昨日は自分でもずいぶん懐かしく思いました。それでついつい力が入ったのですが、だいじなことを一つ略しましたから、今日それを補っておくことにします。
(1)日本政府・与党は、戦後の日本の要であるポツダム宣言・日本国憲法・財政法をずたずたに切り裂いてしまい、その延長で改憲も狙っています。これにはアメリカの世界戦略が絡んでいて、一筋縄ではいかないところがあります。しかし、戦後の日本は、軍需産業をなくして平和産業に徹する、軍隊をなくして平和に徹する、というのが基本です。
主権主権在民・恒久平和、平等互恵、これを「国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」と前文に書いている憲法を持っている国ですから、守らなければまさに憲法違反なわけです。
ところが、戦後の日本は、9条を無視し、財政法を無視し、アメリカの圧力に、軍事的にも・経済的にも屈することで活路を見出してきたわけです。その結果、日本全国が様々な危険にさらされてきました。米軍機の墜落などの事故、米軍人の犯罪、米軍基地・自衛隊基地があることによって生じる被害・災害などがそれです。最近はPFASなどの汚染がひどく、従来にも増して日米地位協定の見直しが必要なことがこと言われるようになっています。経済的には、たとえば郵貯資金を欲しがったアメリカの要求で郵政事業を解体・民営化しましたが、これが失敗だったことははっきりしています。
私は、そういうことの大本がアメリカにあることがはっきりしているので、アメリカから日本を守れ、というのですが、決して言いすぎとは思っていません。政府も与党も、そしてまた時々与党に手を貸す野党も、もっと自国や自国民の利益を優先して考える「愛国者」になってほしいと思ってます。オット、だいぶ熱くなりました。
(2)戦後の日本は、平和憲法を持つ国です。この平和憲法を持つというのは、上に書いた憲法前文のほか第9条がまず思い浮かべられますが、これに伴う「第7章 財政」と財政法の諸条項が欠かせません。
たとえば、財政権限・予算の作成と議決、課税権限(強い意見が出やすい法人税や所得税を下げて、福祉のためといって消費税を3%・5%・8&・10%と引き上げる)、財源(国債に頼らない、借金しない財政)、継続費〔軍艦・戦闘機製造費のためにのみある制度〕、公共事業費(国民生活のためというよりも、ゼネコンやアメリカ資本の要求による大規模事業)と補正予算(公共事業費の上乗せ)などです。
つまり、憲法を無視して武器輸出できる国にしてきているばかりか、憲法が機能するための経済基盤をゆるがせにしてきたわけです。
日本国民が稼ぎ出す所得の2倍の借金を持っていて平気でいられるなどどう考えてみ異常というしかありません。阪神淡路・東日本・熊本、そして今度の能登、そういう災害が「順番待ち」のように次々に起こってきましたし、おこることが予測されているわけです。これは、日本だけでなく、世界的のもう言えるはずです。ならば、日本こそが率先して財政をその方向に向けていくことができるのでなければならないはずです。
それが実際にはそうなっていませんし、パーティー券やキック・バック問題でもわかるように、何も説明できないまま処分が決まり、処分を受けた側が文句を言う事態ですから、それでは、政治はよくなりませんし、財政も機能しないのは当たり前です。
(3)実は、日本の戦後経済の復興過程で、財政制度の民主的改革について議論がありました。要するに、上のようなヒドイ財政運営にならないための模索です。
日本の財政や財政学は、官僚の統治術として発展してきた「正統派といわれたドイツ財政学」の影響を強く受けてきました。戦後もその性格を脱することがなかなかできませんでした。
その時に、昨日取り上げた宇佐美誠次郎先生が「国民の問題としての財政」に変えていく切っ掛けを作りました。それは『財政学 上巻』(法政大学出版局、1956年、146ページ)として刊行されていますが、これ以降、多くの著書が刊行されることになります。いまその論争史は省略しますが、1970年に20刷、82年に24刷になるというように、教科書としても、財政学方法論としても注目されました。
(4)先生に「下巻はいつ出ますか」と伺いました。初めて会うような人は、重要な関心事ですから、必ず伺ったと思ってよいでしょう。すると、先生は、
「下巻を書くよりも、上巻を書き直す方が先・・・」
というのが常でした。
失礼ながら、書けなかったようです。何回か伺ったことがありましが、いつも同じ返事でしたから、そう見えます。
ともかく、昨日取り上げた宇佐美誠次郎『財政学』は、先生が「普段どのような構成で「財政学総論」を講義されているのかという観点からも多くの方から関心をもって迎えられました。先生としても、責任を果たせたと思われたのかもしれません。
(5)ついでに書いておきます。
相澤秀一『財政学』(三笠書房現代学芸全書87、昭和16年5月、211ページ)という本があります。財政学の勉強を始めたころ、財政学とか財政論というタイトルのものがあれば買って読んだものですが、この本は、書名は『財政学』ですが、奥付は『財政論』となっているので興味を持って読んで、後ろの方の刊行予定のところに、宇佐美誠次郎『支那近代経済論』というのがあり、図書館で検索しても見つからないので、そのことをお話ししたところ、「よく気が付いたね」というふうにニヤリとして、
「あれは、あれだけ・・・」
とのことでした。
これにて。
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