早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十四年六月 第二十七巻六号 近詠 俳句

2022-02-14 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十四年六月 第二十七巻六号 近詠 俳句

     近詠
月を仰ぐひさかたなりし夏木立

みち涼し青柿に手も届くかな

錢龜を賣つて薄暑の橋たもと

清水あり杖たてたまふ地蔵尊

(六甲山)海彼方和泉河内や楠公忌

やかましき雀が虹を消しにけり

さ波原島かたむいて船を退く

メーデーなどありし阿笑しき橋柳

夕堤雨のたまりに蟹ひくゝ

學校や照る窓硝子梭櫚の花  

甃盡きて笹散る村のみち

溝飛んで丘往く好きな鹿の子哉

葭簀立てのなゝめを入って荒格子

たゝずみて橋に夏來る無帽かな

竹山や顔に光つて蝿通る

   病院
手術きく扉の外の明易く

病室の壁の夜剥ぐ夏暁かな

夏旦日の目清しく病む者に

   六月集 深題ー六橋觀第一座
   明易
明易く地に咲く花のたかきかな

雨氣なる沖の汽笛に明易き

一八のつぼみ肥え肥へたる明易き

明易く楓の奥に風生れ

短夜や鯉の背が行くひとうねり

短夜の畝すじを見飽かずゐる

短夜の大樹匂ふをかむりけり

星打つて蝙蝠もどる明易き

地球儀にしらけ來りて明易き

   又の日の第二座
   残鶯
残鶯や山中ゆくに道坦々

残鶯や樹下往つて村のポストあり

残鶯や庭拜見の天曇る

残鶯や楓實生を風に見る

   日本精神宣揚
   天長節
花を浴びしとこゝろに日本あり

鯉のぼり旭の日の本の晴れ澄みて

   於六甲山頂上
   第十三回楠公忌俳句會
   楠公忌
六甲の五月あらしに楠公忌

   春の谷
春の谷さびしきものは水車哉

春の谷に本をひろげし縁のあり

溫泉の村へ一きわ春の谷ふかし

   暖
あたゝかや植いたみして葉落つもの

あたゝかく稚松ばかりに水僉る

池のはしこぼれてゐるや暖に

   早春社五月本句會
ひト朝の閑を得たりぬの梅若葉

山茶花の燈表したる若葉哉

朴若葉日を谷底にもらしけり

白鳥を趁ひゆく舳五月潮

   青鈴會五月例會
塔のもとへ青梅を潜り出たりけり

水心の右に左りに夏の川

虹ひくし村のけむりは瓦やく

夕紅や野の一線に海は浮く

   住吉区晝筵
   即景
春嵐を句晝の席より見てゐたり

   季題 花 互選発表
雨の花旅のこゝろを書き送る

花の暁魚あつまつて覺めてゐる

朝ざくら人來る徑さけながら 

屋根替えや楠のそこよりのぼり降り

雲の間の空のふかさに歸雁見ゆ









   







 













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