早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十年四月 第十九巻四号 俳句

2021-10-09 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十年四月 第十九巻四号 俳句

  近詠
春の霧舳すゝみて島ちかし

艇笛を雨のはぐみつ春の暮

東風が吹く朝の莟に水打てば

春雨の降って遠くが村の音

こひ猫の月の筏に川舐めて

山科や途ありし連翹忘られず

片蝶の水に春き去りにけり

沈丁の香のふと卑し春半ば

春晝の寺の塀より遊所かな

麥彌生丘へ揺れずも青き哉

雲きれしほどが光りて春の空

種浸されて地球はいまもめぐるなり

焚火して春田に人の散りにけり

しゃくやくの芽立ち土より紅筆の

十三詣りむすめをつくるこれよりよ

摘草のその夜の熱を母ごころ

蝶捕りてその顔を視る春愁ぞ

春光の海より眞さす袋町

見てゐるに雲のふへつゝ彌生さむ

木の芽時池降る雨の空に無し

門前の朧に撫づる腕かな

卒業証書しばし畳に日を吸へり

さくら餅にみな指先をぬらしけり

風こまやかに花に直ぐなり西吟忌

雨後出でて花に對へば面痛し

  日露戦役三十年追憶
戡ちたりし三十年前冱返る


  『宋斤先生の横顔 石原玉藻より』
アマリヽス狐のような犬飼ひて

秋の波の一歩にひかへ佇ちにけり

草に寝て地球がまはる長閑かな

枯草に乞食ゆたかや銭よみて

山彦に負けてだまれば身にしみぬ

かどに聴くはろかの水や爽かに

霧のなか人来て話す山の窗

この壺のつめたさ秋は膝のうへ

知らぬ間の雨に土ぬれ春の晝

雛店を人の父母覗きゐる 

  庭枯
庭枯れや垣外港の船の數

庭枯れや村の水車も聞こゑずに

早春社三月本句會
春の田のかがやきにある疊哉

ほのかすみ春田ひろびろ宵のよさ

開帳の寺や夜になる谷かすみ

  早春社二月例會
雉子鳴いて野の一水の波しけり

雉子の聲茶亭もかれの麗かに

掃く庭や雪いまだ見ずおもとの實

雪降らず河内大和の藁塔哉

山々や今年雪見ず鳳巾

畚の中ぬくぬくと雉子のこゑ

  早春社初歩俳句會
野をますぐ水來りつる霞哉

梅の中焚くけむりして朝かすみ

飛び村のむかし城とや明霞

町の上寺かさなって霞かな

  櫻之宮支社創立十周年祝賀会俳句大会 兼題「麗か」席題「桃の花」
   麗春三月三日網島大長寺にて創刊以来休會なく百有餘の来會者を迎え盛會
雁行のあつて雲なく麗哉

桃の花ちるはにぎはし水の上

  早春社無月例會
東風入って水のいろなるひとところ

  早春社魁例會
うしろ山すでに曙けたるとんど哉

二三軒寄せてとんどや門の芝

  早春社日刊工業例會
  
山茶花に一門ありて海の岸

木兎の飼はれて枯野茶店哉

桜之宮支社創立十周年祝賀会

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