早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十八年十月 第三十六巻四号 近詠 俳句

2023-12-05 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十八年十月 第三十六巻四号 近詠 俳句

     近詠
秋高し飛機南へ去るありて

澄む水の痛く征地の人を想ふ

ひしひしと世がひゞくなり天の川

病んでゐてなによきものか夜業の燈

みたみわれの心が責むる秋夜半

白妙の空なくしたり秋の雲

街残暑辻に豊穣語るあり

秋知れと猪名野の芒呉れしかな

秋の門男子觀送ありて後

秋日南小魚が鉢に波たてゝ

脛舞ふて疊走りぬ秋の風

露草はたくましの莖もろく折れ

名月やじゃが薯蒸して代食す

我欄や辰巳ひらけに鰯雲

燕の歸りし筈が川擦れる

一客と地震を堪え居り置團扇

對岸の草にあざやか秋の蝶

得參らむ子規忌とて萩の一半句

宵闇や荷船空ら船軌み合ひ

颱風を恐れ待ちつゝ蜻蛉見る  

航空日暴風警報あるを飛べり

嘘でなき程に零餘子よ桟庭は

邯鄲を鳴かせて書架の抜き窪に

さわやかの雲こそ秋の彼岸入り

秋光や懐ひ一つに佛の日

ちちろ蟲まぢかに鳴いて夜が冷ゆる

身に入むや友のなにかにありがとく

日あたりて頓に冷まじ水の上

    夏草
襖する夏草に一気飛び入りぬ

ひた進む夏草に銃を泳がせて

夏草に憺荷は戻る慘む血よ

夏草の夜は沈々と散歩前

夏草ふかく馬首揃えすでに抜刀す

    風
牛の眼に涼し夕風行々子

    家
行々子芦の途切れに小煙筒

    橋
葭切や橋ひつぱつて舟はくゞる  

    舟
葭切や蘆中一揖また一竿
    
    町
よしきりや口碑なにはの片葉芦

    夏祭
子に着せて母は祭の厨せはし

祭錢汗に握って買ふも惜し

山車提灯男の子男の子をちゝくまに

打ち水を打ち交わし貰ひ祭かな

    子規忌 九月二十六日 於 萩の寺


天高しきびしき今を飛機に見る

天高しふたゝび仰ぐ飛機のあと

天高をいたつき居ればぬすみ見る

   


 












 
























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