早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十五年十月 第三十巻四号 近詠 俳句

2022-07-13 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十五年十月 第三十巻四号 近詠 俳句

   近詠
  井堤逍遥
大和より山城に來し野菊かな

出來稲を話し寄られて道づれに

  木津川をわたる
河洲秋風よごれなく水にあり

秋の水鮎は他川をいひにけり

秋がすみ薪の里は問はでけり

  井手
秋の町茶を選れりパン屋パンぬくゝ

少年の地誌よく識れり柿の下

瀦さも麗澤して秋の中 (蛙塚)

秋蛙土のいろして山に跳ぶ

稔る中一松一碑雲はしろし (玉川寺跡)

おもはざり巨石秋暮の小町塚

曼珠沙華燃ゆるが人に悪くまるゝ

はたはたの音桑谷にしろきかな

秋の山に水車の音が呉粉搗く

梧桐の實の枯れはやく秋光に

   橘諸兄由縁のところ
竹の春石に由緒の文字もなく

野のいろの南山城雲と並み

豊年をいまくきやかに入日空

暮れの燈のさぶきにゆけば鹿火屋なる

山の乙女と鹿火屋ほとりに別れけり

玉川や涸れしづもりて宵しらみ

闇ふんで山吹どころ蟲も老ゆ

驛の賣店螻蛄を燈にはらひつゝ

日盛り
潮風の草に光りて日のさかり

日盛りの野を行手して山を見ず

故郷に來て平凡な日の盛り

  螢
螢や瀧きこえてはきてゑざり

おほぞらのひかりとなりし螢かな

小むすめの賣る螢なれ買はゞやな

夜は闇は水に螢のながれけり

  汗
小娘の額の汗に國を問ふ

年頃の働いて汗うつくしき

汗涼し樹下に少女の唄ひ出づ

  早春社九月本句會  兼題「桐の實」席題「芦刈り」
桐の實や夕日甍をかげ日南

作梧桐の實を人は勞れて仰ぐなり

芦刈の空より風の涼し降る

夕やけにそまり芦刈る人古るし

  琴ぶき俳句會 兼題「苔の花」 「睡蓮」
石磴を往かぬみちあり苔の花

苔の花社後また拜むところあり

小さきもの濯ぐ睡蓮の水の端

  淀屋橋畔句座  兼題「泉」 席題「南風」
汲みしより泉の面ゆれやまぬ

うつるものなかり泉の朝ごゝろ

南風に晝の上弦得たりけり

  二葉會九月例會
鱗雲のたたみたたみて辰巳空

潮風や海へ一里の月見艸


   














最新の画像もっと見る

コメントを投稿