定本宋斤句集 春 4
夏近し 宿々や濱木綿植えて夏近し
菊五郎の汐汲を見る
朧 双の桶春のおぼろを汲みて舞う
死を談じ珈琲がうまし夜の 朧
烏賊の眼の笑える皺や厨おぼろ
魚棚や水をおぼろに烏賊の墨
東 風 東風吹いて港こゝらは農家かな
熊野よりの鯣干し足す東風つよし
播州那波
春の風 春風の入江浅波島二つ
春日南 咲くは無く東南院の春日南
春の空 起きあがるものを心に春の空
初 虹 初虹のたつや比叡山雲の上
海 市 水彼方海市は知らず夢の雨
陽 炎 雲見る眼地に落としたる陽炎へる
霞 能登島や霞のあとの薄霞
南部沖の鹿島
掌のうへの貝がものいふ霞かな
松江にて
江のかすみ雨降って居る庭の松
霞むなくはるかに筏だまりかな
定本宋斤句集 早春社刊
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