定本宋斤句集 秋 11
加賀竹の浦
上野にて繪の秋を見ず敗荷かな
末枯 末枯に日は去りながら極みけり
松茸 松茸C鰯市場今日しも秋見する
地厚庵茸山へ同行の雁山、竹支等を共に」案内さる
秋蘭を下り丸木橋茸山へ
柿 柿のころ客各々が故郷いふ
卓の上の柿のはだえに夜のしずか
柿實るをみては故郷がほしきかな
無花果 無花果に秋を生まれて蝿稚き
萬年青の実 萬年青の実冬にまみれて肥ゆるかな
椿の実 明けわたり時化はさほど椿の實
柘榴 枝ざくろそれも挿し添え秋の花
金柑 金柑の田舎なつかし日の寒さ
吾亦紅 そよぐなる地にかげのしつ吾亦紅
萩の寺にて<2句>
萩 萩の中かげは裸に寒きかな
萩の中往きもどりてや六日月
コスモス コスモスを剪り貧れり病快き
霽るゝ雨朝のぬけゆく秋ざくら
栂 尾
紅葉 渓わたる紅葉秀の中寺の屋根
紅葉踏み石ふみ僧のうしろより
黄落 黄落を踏みゆくほどに冬らしも
木槿 子どもらにうれしき出水木槿垣
栗 烈火して一夜の驕り茸と栗
葡萄 葡萄山のあろじ静かに百姓す
木の實 木の實敷きて山は月日をこのままに
夕べ踏む我が家のかどの木の實かな
柳ちる 池水に柳ちるなり燈のかぎり
鳥瓜 鳥瓜と覚えておかむ憐れ咲く
秋 完
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