定本宋斤句集 春 7
伏見にて
春 田 春の田にちるや伏見の陶の屑
新羅三郎義光之墓
春の山 笹むらの斜日が墓や春山邊
春山のいさゝか深し水の音
紀伊南部にて
春の砂 春の砂に漁家の姥たち脚投げて
宇野
春の湾 朝宿に著いて欄前春の灣
春の徑 春の徑の失せたり墻を越し易し
春の堤 春の堤蕪村歩くとふと思ふ
那波より赤穂へ
春の町 町春や海へひろがる峡どころ
二月禮者 橋南の小辻に二月 二月禮者かな
種 蒔 植うる蒔く猫額の土餘すなく
白 酒 白酒に愧なき舌をのばしけり
雛 雛の座のみなでも足らず祖母が歳
雛店を人の父母覗きゐる
草 餅 妻が好き母が来て好き草の餅
桜 餅 さくら餅にみな指先をぬらしけり
椿 餅 くちびるに冷めたき葉なる椿もち
汐 干 常にして夕鳥低き汐干哉
汐干宿に泊まってしまひ海黒き
定本宋斤句集 早春社刊
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