浪人生のH君は、いつも予備校の帰りにレッスンに来ます。
そして、過去に発表会で弾いた7曲の中から、ランダムに弾いて
レッスンをするのです。
先週と今週のレッスンでは、2週続けて、トルコ行進曲のレッスンをしました。
先週のレッスンの時、H君は、89小節めから始まる分散オクターブが、
とても上手に弾けました。
「H君、先週は分散オクターブの難しいところが、とても上手だったよね。
今日はどうかな?」
そう言葉掛けをして、レッスンが始まりました。
H君は、おもむろに弾き始めたのですが、何時もよりミスタッチも多く、
全体的に雑な仕上がりになってしまいました。
「あら、どうしたのかしらね。
何故こうなったのか、自分で分析してみて。」
「まず、初めから焦って弾き始めたことと、
分散オクターブのところは、親指を意識せずに弾いてしまいました。」
「自分で、理由が分かっているのならば、次はそれを踏まえて弾いてね。
それから、身体をリラックスさせて、力を抜いて弾いてください。」
そして、H君は、もう1度弾き始めました。
次の演奏は、10代の男の子らしく躍動感に溢れていて、
荒削りではありましたが、生き生きとした素晴らしい演奏でした。
「H君、今の演奏、すごく良かった
躍動感があって、とても感動的に弾けたと思う。」
「ありがとうございます。」
「さっきの演奏と、今の演奏、レベルが全く違うわね。
さっきの演奏は。。。そうね、50点位。
でも、今の演奏は、限りなく100点に近い演奏だったよ。」
「同じだ。。。」
「ううん、今の方がずっとよかった。 同じじゃないよ~」
(長くなったので、明日に続きます~ )