Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

負け戦の名人

2011-01-01 | Others
  新年明けましておめでとうございます。
お陰さまで、二度目の正月を迎えました。本年も宜しくお願いいたします。



昨年も幾度となく引用させていただいている辻静雄さんに「ヨーロッパ一等旅行」という著書があります。
深田祐介さんという方が書いた、“「連敗」の名人”と題されたその文庫本のあとがきに、

“東大の中根千枝教授に伺った話である。
「マレーシア人のビジネスマンが、日本人とは仕事がしやすい、というんですよ。日本人と仕事をすると、額に脂汗浮かべて、"あんた、これ、いい品物、値段安いよ、買いなさい"の一点張りだ、というのね」
 そこへゆくと、アメリカ人は商売のプロである。こちらの要求を訊きだしては、これならどうだ、これが駄目ならこの代案でいってみないか、次々と解決策を示してきて、こちらは追い詰められ、逃げ場がなくなって、買わされてしまうケースが多いのだ、という。
「これがヨーロッパのセールスマンとなると、またひと味違ってくる、というんです。商売の話をしていると、突然美術音楽の話になる。各地の風俗、料理の話題に変わったりする」
 そこでやれモーツァルトのミサ曲がどうだ、いや、あそこの料理が、などといい気持ちになって論じ合い、共感し合ったりしていると、ふいに話題が商売に戻ってくる。自然、今までの会話の流れからいって、商談に応ぜざるを得なくなってくる。いくらモーツァルトと商売は別の次元の話、といっても、そんなに簡単に割りきれるものではない。
              
                      ―中略―

 辻氏と対談した折、氏は「負け戦を知らない料理屋は駄目だ」といった。
 他所の料理屋に行って、そこの名物料理を食べて、「こいつは参った」といわば平然と戦に負けて、そこで自分の負けた料理に改めて好奇心を燃やすような主人がいなくては、料理の向上はおろか、商売そのものも落ち目になってしまう、というのである。”

これは1984年に書かれた話なので、前段の話からは遥かに進歩していると思いますがいかがでしょうか。異業種を知りませんが、今では笑い話だと思いたいところです。

後段は飲食業のみならず、アパレルにもぴったり当てはまる話で、「競合他社の商品であっても、美しい物は美しいと思える心が大事」と語った海外の商品担当者がいました。
狭い了見に囚われず、善し悪しを見る目を常に養うことで、自らの商品もまた進化するということです。

画像の女優は、シナトラや伝説的な闘牛士ルイス・M・ドミンゲン等の男性を夢中にさせたエヴァ・ガードナー。



Mt. Fuji 奥ゆかしく雲に隠れています。
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