ハナウタ うたこの「宝物がいっぱい」

自分にとっての「好き」や「嬉しい」を集めて綴る、ささやかなことのブログです。

何が自信になるかはわからないものです

2015年04月11日 | ❺ 追憶の日々

小学5年生になった春のある日それは起こりました。

校庭で体育の授業の始まりに みんなで準備運動をしていた時です。

冬枯れた芝生が緑色に変わりつつありました。

 

私たちは2人1組になって柔軟体操をしています。

ブルマからむき出しの足を 芝生の新芽がちくちくとくすぐるそんな季節。

 

異変が起きたのはその時です。

「か・かゆい・・・」

脚がかゆいのです。

みると芝生のチクチクした場所が ぷつぷつと隆起してるではありませんか。

脚の裏側全体が見事なぷつぷつ模様です。

こんな可愛らしいパターン模様が私の体に出現するなんて

規則的な間隔で同じ大きさで同じ高さのぷつぷつがびっしりです。

ぎょぎょっとなる私。

見たことない体の異変に喜ぶ私。

私にこんなすごい能力があったなんて

 

生まれてこのかた 人前で体調を崩したことがなかった私は

朝礼で倒れたり 授業中に鼻血を出したり 骨折した腕を三角巾で吊ってる人を見ては

「いつかはああなってみたい」

と憧れていました。

ついにその時が来たのです。

 

「先生こんなになっちゃいました」

と急いで先生に駆け寄る私は嬉々としていたことでしょう。

授業を中断させる私。

ちょっと目立ってる。

友達が集まってくる。

ああ、至福。

 

「気分悪い?」

「いいえ」

「痛い?」

「いいえ」

「痒い?」

「少し」

「辛い?」

「いいえ」

「体育出来る?」

「・・・はい」

授業は無事再開されました。

ちょっとした不満を私に残したまま。

 

でもこの日から私は「何かに触れると皮膚がとぷくっと隆起する」という特異体質を

手に入れることになりました。

なんのことはない、「接触性じんましん」というそうですが、

子どもには関係ない。

何の取り柄も才能もない私に初めて宿った、人と違うという個性(個性)。

超能力かと思いました。

以来、授業中に鉛筆の先でちょんちょんと左腕に絵を描く私がおりました。

徐々に浮かび上がる文字や絵をこっそり隣の席の子に見せて

その子の驚く姿を楽しんだものです。

100%の確率で「触ったらうつる?」と聞かれました。

「たぶんうつらない、今まで人にうつったことないから」

と答える私は得意げでした。

 

人づきあいが苦手で友達の少ない私を心配した神様がくれたギフトだったように思います。

私にとってはたった一つの、確実なコミュニケーションツール。

でも弊害もありました。

アプローチのちょっと変わった子、と

かまいません。

人にこの体質を羨ましがられたこともありません。

気持ち悪がられたり、

気の毒がられたことはありましたが。

・・・かまいません。

 

体の成長とともに症状は消え、今ではやろうと思っても出来ませんが

私が自分の内面世界から出て、外に向けて自分を発信し始めるのを助けてくれた

影の功労者です。

人生に無駄な事なんて何もない、と誰かが言っていましたが、なるほど

その通りかもしれませんね。

母はこの症状を治そうとしてくれていたようですが、治ってもらっては困る私がいましたから。

一見無駄に思えることも 何かの役に立っている。

そう、それは私の存在自体が身を持って証明していることなのです。