ステージ上部にセットされた観音開きのスクリーンに、DIR EN GREYの文字とツアータイトルが映し出された。SEに歓声が混じる中、楽器陣が定位置につく。1曲めに選ばれたのは、ライブ終盤やアンコールで披露されることが多い「冷血なりせば」。おどろおどろしい髑髏のメイクを施した京が歌の入り直前に颯爽と現れ、空間を掌握する。「OBSCURE」では「ひとつになれるか!」という京の言葉に呼応するように、熱気の渦巻くフロアは巨大な生き物のようにうごめく。
紗のような薄い黒布をまとった京の姿が赤いムービングライトによって浮かびあがったのは「audience KILLER LOOP」。儀式ごとく異様なテンションに包まれる会場。「BUGABOO」ではステージに紗幕が下り、蝋燭の炎のような照明で、ゆらゆらとメンバーの大きなシルエットが投影された。
続く「罪と規制」では、映像とともに歌詩(というよりも「言葉」といったほうが適切かもしれない)もスクリーンに浮かび上がり、視覚面でも直接的に訴えかけていく。目を背けたくなるような言葉の連鎖と重くのしかかる空気に、眩暈のような感覚をおぼえた。
この日のライブで一番ゾクリ、としたのは、そんな「罪と規制」の終盤である。布を頭からすっぽりとかぶり、お立ち台の上でうずくまった京が「人間…人間……人間………」とつぶやき、ステージを覆っていた紗幕がゆっくりと上がっていく。その瞬間、なんとも言えぬ恐怖に襲われた。か細い声で繰り返しつぶやく黒い塊は、とても「人間」とは思えぬオーラを放っていた。幕が天上へと消え、隔たりがなくなっていくステージとフロア。逃げなければ、という本能にも似た焦燥を感じながらも、一歩も動けなくなるほどソレに目が釘付けになってしまった。会場全体が「喰われて」いたように思う。まさに“GHOUL”(=死体を食べる悪魔)が召喚されたような一場面だった。
「輪郭」では、目の前が見えなくなるほどのスモークが放たれ、「夢から夢から夢へ」と伸びやかなハイトーンで歌われる歌詩と相まって、ドラマティックに展開された。反対に、Dieは掻きむしるようにダイナミックなカッティングプレイで絶えず熱を与えていく。
本編を締めた「かすみ」は聴かせる曲、というイメージが強い楽曲ではあるが、「そよとの風も無い~」と歌われるラストパート前や、曲が終わった瞬間に、オーディエンスからわあっと歓声が沸いた。海外でのライブを彷彿とさせるダイレクトな反応を得ていたのが印象的だった。
アンコールは、京がドン、ドン、とマイクで胸を叩き、「凱歌、沈黙が眠る頃」からスタート。
「くそったれコースト!」
フロントメンバーが自由にステージを行き来し、笑顔もかいま見せた「HADES」や「STUCK MAN」では、ぐわんぐわんと床が揺れるほどオーディエンスはヒートアップ。そして、「ひとつになれるか!」という言葉とともに「THE FINAL」がプレイされ、京の空を切るリストカットで幕を閉じた。
ラストもアッパーチューンでイキきるかと予想していたために、少々意外な選曲だったが、今回のツアーファイナルは大阪で行なわれることを考えると「続き」を感じさせる絶妙なラストだったように思えた。一筋縄ではいかないDIR EN GREYの「今」と、ライブならではの熱さと生々しさをじっくりと堪能できた一夜だった。
【SET LIST】
01_冷血なりせば
02_Unknown.Despair.Lost
03_業
04_LOTUS
05_OBSCURE
06_霧と繭
~INWARD SCREAM~
07_audience KILLER LOOP
08_BUGABOO
09_罪と規制
~INWARD SCREAM~
10_輪郭
11_「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨
12_Unraveling
13_獣慾
14_かすみ
EN
01_凱歌、沈黙が眠る頃
02_HADES
03_STUCK MAN
04_THE FINAL
01_冷血なりせば
02_Unknown.Despair.Lost
03_業
04_LOTUS
05_OBSCURE
06_霧と繭
~INWARD SCREAM~
07_audience KILLER LOOP
08_BUGABOO
09_罪と規制
~INWARD SCREAM~
10_輪郭
11_「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨
12_Unraveling
13_獣慾
14_かすみ
EN
01_凱歌、沈黙が眠る頃
02_HADES
03_STUCK MAN
04_THE FINAL