sukekiyoのライブハウスツアーのファイナル公演を仙台で観てきました。sukekiyo初の東北公演だそうです。
JUNK BOXはフォーラスの地下2階にあるハコで、キャパシティ約450名。フロアが縦長の造りでした。柵は最前と真ん中あたりにひとつ。ステージは低めで幅が狭い。メンバーの姿は終始お客さんとお客さんの隙間から観る感じ。
でも、こういう物理的に距離が近いライブハウスに京さんが立っているのを観るのが久々だったので、不思議な感覚で新鮮でした。
入場したらPortisheadの「We Carry On」が流れていました。アルバム持っているのでこの曲だけはわかったけれど、ほかのBGMはわからず。
定刻にブザーが鳴り暗転。
基本的にsukekiyoのライブは、「私語・雑音禁止、お静かに」というのがバンド側から提示されていて、暗黙の了解として激しく動いたりすることもないのですが、“盲目の獣”と銘打たれているライブに関しては、無言であればヘドバンしたり手を挙げたりするのはOK。とはいえ、この日は押しもなく、みんなその場で楽しむ感じでした。終始じっくり観る人7割、激しい曲ではノる人3割。
SE「destrude」でメンバーが1人ずつ登場。
みんな黒い衣装、黒基調のメイクです。UTAさんはシャラシャラした銀の飾りがたくさんついたネックレスをしていました。YUCHIさんは髪を巻いていてゴージャス。匠さんはさらさらのストレートヘア。未架さんは前髪だけストレートっぽくて、後ろはウェーブのかかったヘアスタイル。
京さんは袖がヒラヒラしていて着物みたいに見えるトップス、両手にレザーグローブ。黒髪でサイド刈り上げ、トップの髪は無造作に散らしていました。ちょびっとだけある後ろ髪はひとつに括っているように見えたのですが、錯覚かも。白っぽいグレーのカラコンも着けていました。
ライブは潔く新曲2連続で始まりでした。2曲めは、Tシャツとセットで販売されている8cmシングル「黝いヒステリア」。「黝い」………読めない! 調べたら「あおぐろい」と読むみたいです。色を指す漢字だとは意外。
女性目線の歌詞なんですが、京さんが身振り手振りを交えながら歌うと、よりそれが強調されて、女性が憑依しているようでした。
新曲は全部で4曲披露されたのですが、どの曲も結構打ち込みガッツリで意外でした。UTAさん作曲っぽい変拍子炸裂のものもあれば(京さんがファルセットで歌う曲があって、9GOATSの匂いを感じた)、歌モノもあり。打ち込みといってもEDMみたいなノリノリなものではなく、90年代のシンセ曲みたいな……(アバウト)。
未架さんとYUCHIさんが位置的にほとんど見えずだったので確認できていないのですが、同期で流している電子音だと思っていたドラムも、サンプリングパッドでリズム隊がリアルタイムで叩いていたのかもしれないです。
キャッチーさは控えめで、ゴシックロックだったりデカダンな雰囲気だったりを感じました。「黝いヒステリア」はタイアップがつきそうなくらいキャッチーだけど、ライブが進むにつれ、マニアックな曲がどんどん投下されていくという。
京さんの妖艶なパフォーマンスもグレードアップしていまして。
序盤は指先を舐めるくらいだったのですが、中盤の新曲ではレザーグローブを外した左手に唾液を吐き出し、グローブを着けたままの右手と手をつなぐようにしてこすり合わせていました。そして袖から覗く右腕を誰かの腕に見立てて口づけをし食む。
あとは、YUCHIさんに後ろから近づいていって、首筋あたりのウェーブのかかった髪に半分顔を埋めて口付けするような素ぶりも。
ミソなのは、決してオーディエンスに見せつけるようにはしていないところなんです。どちらかというと、オーディエンスである我々がたまたま事に及んでいる場面を「見てしまった」感覚。だから背徳感がすごい。本当に。
ホールで観たときはショーのようだな、と思ったのですが、距離感の近いライブハウスだと生々しさが増します。
あとは、「貴方」とか「お前」という歌詞に合わせてふわりふわりと指差ししていたのが印象的でした。「貴方」というワードがsukekiyoには多いですね。
「mama」の“誰も救ってなんかくれない”でも一点を指差していたのですが、それがズガーンときました。「vandal」の“本当のお前を見付けたから”も。基本的に伏し目がちに歌っているのですが、時にカッと目を見開くときがあって、グレーの瞳と相まって蛇に睨まれたようなインパクトがありました。
ライブ後半で「in all weathers」が披露されて、アウトロのピアノなしで「elisabeth addict」に突入したのが、ストーリー性があってゾワっとしました。「elisabeth addict」には“月影の中で産まれたあの子が欲しい”とか、“月蝕の中で産まれたあの子が嫌い”という歌詩があるので、ツアータイトルの“落下する月面”とは産み落とされる命、落ちてゆく命みたいな意味なのかな、と考えたりもしました。
「leather field」の前あたりだったか、ジャムセッションがあり、京さんは詩を朗読するかのように静かつぶやく。
聴こえていますか
まだ聴こえていますか
この歌が
遠くへ遠くへ
溶けていく
といったニュアンスの言葉だったと思います。
「zepher」では“羅針盤を〜”のところで、腕を大きく回して円を描いていました。
ラストの「anima」はマイクスタンドを人に見立てて抱き締めるような仕草。最後の“側に居てもいいですか?”は、シャウト混じりに表情もくしゃくしゃで感情的に歌い上げていて圧倒されました。
そして息が上がったまま、大きく息を吐き出すように「……おやすみ」と一言。格好つけていない優しい言い方でした。
楽器陣についても少し。
匠さんは前に出てYUCHIさんと背中合わせで絡んだり、序盤で水を吹いたりもしていて、アグレッシブになっていました。忘れていたけど、水吹きはリエントのころもやっていた気がする。ちょっと懐かしい気持ちにもなりました。
UTAさんは相変わらず宇宙と交信していました。おっカッコいいフレーズ!と思った次の瞬間には、なぜかガッツポーズを1人でキメていたり謎行動が多くて、ずっと観ていると笑ってしまいそうになります。
YUCHIさんは歌詩を口ずさんでいることも多かったです。「hidden one」の“ピルの山を見て”のところを歌っていたのが印象に残っています。男らしい見た目で、ピルの山って歌うインパクトよ。
未架さんはこのライブハウスではあまり見えなかったんですが、音だけでも縁の下の力持ちというか、ものすごい安定感があると思いました。
結成から3年経って、「sukekiyo」というバンドがどんなバンドか明確になってきたと思います。なんとなく、次の作品ではこれまでよりコアな方向へ転がっていきそう。