in a schale

シャーレにとじ込めたありふれた日常。

2014.05.11 シビィ(DISH)“神楽坂夜想曲”at 神楽坂EXPLOSION

2014-05-12 04:31:38 | ライブレポート


ここのところsukekiyoにどっぷりだったんですが、DISHのミニアルバム『蝶と独白と残黒』もリリースされたので、シビィさんの弾き語りライブに行ってきました。DISHはちょこちょこ観に行っているのですが、弾き語りを観るのは初でした。

曲や歌詞がよりダイレクトに伝わってくるので、なんというか「怖い」。でも、怖いもの見たさで引き込まれてしまう。
“身体障害者の君の余命はあとわずか”(「南風。」)とか、“腕から先のない君と手を繋いで” “最低 最底。”(「dancer in the dusk」)とか、歌詞にドキッとさせられることが多かったかも。

言葉にするのは難しいんですが、歌とギターが一体化している感じ? 全身で感情をぶちまけているというか。ギターをパッとミュートして、歌を効果的に際立たせたりするのもカッコ良かった(歌も本気だけど、ギターもしっかりしていてかなり器用だと思う)。
1曲1曲語りかけるような歌い方をするから、歌詞世界の中に出てくる少女は実在しているんじゃないかと思えてくるほど。

シビィさんのすごさをかいま見た気がします。

入場特典で過去の弾き語りライブテイクを収録したCD-ROMいただきました。「恋の闇」が入ってます。


【SET LIST】
1.南風。
2.ワールドセオリー
3.dancer in the dusk

4.35℃
5.エピロヲグ
6.butterfly burning
7.リストカットベイビィズ




2番手は利華一人名義のdibs 利華さん。シルクハットをかぶってステッキを持っていたのですが定番なんでしょうか? 右手に指先部分の開いた白いグローブ。
お酒飲み始めちゃったのもあるんですけど、ギタリストならではのギターが心地よくて軽くトリップしてました…すみません。1曲演奏するごとに「ありがとう」とおっしゃっていました。


トリは高木フトシさん。元HATE HONEYのボーカルを務めていたということくらいしか前知識がなかったのですが、めちゃめちゃカッコいい。いや、「カッコいい」よりも「素敵」という言葉が似合います。自分が男だとしても憧れてしまうと思う。大人の色気半端ない…! なのに笑顔がかわいらしいというギャップ!

「母の日だから、お袋に書いた曲を…。お墓に行くとババアって呼んでるんだけどね。あ、こんなこと言ってると怒られるな」と言って披露された「空の糸」という曲では、途中でアンプから音が出ていないことに気づいて中断(笑)。「初心者か!」とご自分でツッコミを入れつつ、「やっぱりお袋に怒られたのかな?」と。
やさしくもカラッと乾いた歌声がホントに素敵で、感情の込め方もすばらしくて、何度かうるっときてしまいました。酸いも甘いも噛み分けてきている感じがたまりません。

アンコールを終えてステージを降りるときも、吐息混じりに「気をつけて帰ってね(微笑)」とおっしゃっていて、最後まで色気にあてられました…。

今活動されているvezっていうバンドも調べてみたら、かなりツボでした。
ギターがグニュウのASAKIさんだったので妙に納得してしまったのですが。



かなり楽しめたイベントでした~。

2014.05.04 sukekiyo“二〇一四年公演「別れを惜しむフリは貴方の為」”at 京都劇場

2014-05-07 04:22:30 | ライブレポート
5/4、京都・京都劇場1日目。

会場が駅から直結なので、方向オンチにとってはありがたやありがたやーです。赤い絨毯とか敷いてあって、なんだかクラシカル。階段を昇り、さらにエスカレーターで上がったところにホールがありました。



会場の椅子がふかふかで、ステージも観やすくて、かなり快適でございました。青年館の椅子は前後の座席間隔も狭いし、深く座っても安定せず、半分おケツ浮いちゃって落ち着かないので(苦笑)。ステージは京都劇場のほうが一回り小さく感じました。

BGMに、噂の『AKIRA』のサントラ「ドールズ・ポリフォニー」を確認。芸能山城組というパフォーマンス集団の作品だそう。好みだったのでCD買おうかなあ。そうそう、『AKIRA』つながりで書き留めておきたいことが。『IMMORTALIS』を3周くらい聴いたところで、ネオ東京(←『AKIRA』の作品舞台)ならぬ“NEO KYOTO”というワードがハマるなあと思ったのでした。だから、BGMに『AKIRA』のサントラが使われてるっていうのをTwitterで知って驚いたんですよね。from NEO TOKYOを名乗るMUNIMUNIと対バンしたらおもしろそう・・・†とか妄想したりして。



まぁそんな余談はさておき、京都公演も黒い服着用の人が過半数でした。開演前の状況は東京より静かだったように思います。ステージには、東京公演と同様、黒い紗幕に「sukekiyo」のロゴ+青い照明。スモークがすでに濃い目に焚かれていたので、着席して少し経ってから気がついたのですが、ステージに譜面台や椅子のセットがあるではあーりませんか!!

18:43ごろに二度目のブザーが鳴りライブスタート。拍手も歓声もない静かな空間に、匠さん、未架さん、YUCHIさん、UTAさんの順で楽器陣が登場。客席に向かって半円状に位置につきます。未架さんがスタンドに立て掛けられたアップライトベースに頭をぶつけないよう、少し縮こまってくぐるようにして自分の持ち場についていたのがほほえましかったです。

そういえば、未架さんはジャケットは羽織らず黒いシャツのみだったんですね。髪はセンター分け(ライブが進むにつれて乱れて前髪おりてきてましたが)。UTAさんは右側に髪を寄せていました。
そして、ハットを右斜めにかぶり、長め丈のジャケットにロングスカート、ブーツの出で立ちで京さんが姿を現します。袖口から親指ホールの開いた白いカットソーがのぞいていました。左頬に黒い手形のようなメイク。顔の右半分は目の周りからこめかみ、顎のあたりまで黒いペイントが。

客席に背を向け、指揮者のように立つと、すぐさま「elisabeth addict」の演奏が始まりました。が、全体的に音が小さいような…? 匠さんのアコギが特に聴こえづらく、シャカシャカでもったいない。青年館のときは同じ演出でも結構音を拾っていて、その迫力に驚いたくらいだったので。駅直結だから音量制限あるのかな?と、このときは考えていたのですが、そのあとのバンド演奏では十分な音響でした。もう一度この演出が見られたのは嬉しかったけれど、少し惜しく感じちゃいました。
ピアノはなく、京さんは途中アカペラ。“淡く脆く散る 貴方は一つ”のところで片手を高く掲げていました。

ピアノのSE「destrude」で紗幕がすっと上がり、青白い照明で照らされたステージが出現。メンバーがそれぞれ位置につき、「latour」へ。京さんがハットをおもむろに取り去ります。YUCHIさんは早々と激しくヘドバン。
「nine melted fiction」の“「no good」”はこの日も吐き捨てるように発していました。襖(扉?)を両手で開けるような仕草も。

「zephyr」は、“夕日を殺す花火”というフレーズに合わせてか、オレンジ色の照明がステージ全体を照らし出しました。そういえば、楽器陣の後ろにずらりとパーライトが仕込んであったんです。客席に背を向けて立った京さんが本当に夕日を見つめているように思えて、屋外にいるような気分に(記憶があやふやなんですが、実際バックに夕日の映像が映し出されていたかも)。

「hidden one」では人工的なグリーンの照明。京さんが再びハットをかぶり直します。女性的な詩の曲のときに、顔を隠すようにかぶる法則?なんでしょうか。“見透かされているのは何方?”という部分で、未架さんと匠さんのほうを向いて指を差すパフォーマンス。
雑誌のインタビューで京さんが、UTAさんのことを「宇宙」と表現していましたが、だんだんそれがわかってきました(笑)。ホント、宇宙と交信してるのかな?と思うくらい、手を挙げて天上を向きながら弾いていたり、下手袖のほうを向いて自分の世界に入り込んでいたり。9GOATSのときには特に気にとめていなかったのですが、sukekiyoだとなかなか目立ちますね。それにしても、宇宙だのカチカチだの常識人だのフワフワだの、京さんのメンバー洞察力は的を射ていてびっくりします。とはいえ、匠さんはリエント時代からお兄ちゃん的な役割でしたし、未架さんも穏やか~な感じではあったので、このお2人についてはやっぱり変わらないんだなあという感じではありますが(笑)。

「aftermath」は、青年館2日目と同じくMVの緊縛映像も使われていました。赤い番傘はやがてモノクロに。YUCHIさんのベースがほんの少しヨレたかもしれないです。そのときにパっと見てみたら「やっちゃった!」みたいな表情に見えたので余計に(苦笑)。勘違いだったらスミマセン。

ここで吊るされていたパネルは上がり、「烏有の空」へ。この楽曲は毎回大胆な変化が見られるのでおもしろい。シューゲイズっぽい音がプラスされて、さらに混沌。京さんは、なにかを拾い上げて空に還すような仕草もしていました。
この曲にかぎらずなんですが、匠さんは京さんをメインに周りを見ることが多くなったように思います。客席を見るよりもステージ上の波長、グルーヴを大切にしている感じ。まさに職人。

「the daemon's cutlery」では、いつのまにかまたハットを取っていました。ラストの畳みかける部分がキレキレで純粋にカッコいい。あ、これまで特に書いていませんでしたが、残響にのせて京さんはいつも吐息混じりに喘いでいます。
「scars like velvet」はあまり記憶が…。まだ自分の中でブームがきていなくてフワフワした状態だからかもしれないです。そのうち噛み砕けるといいのですが。

女性の緊縛絵(グッズのステッカーデザインと同様)の掛け軸が降りてきた「mama」。“拒む足を広げ感じた罪悪”の部分で左ももに手を這わせたり、“売買バイバイ売買バイバイ”で下に向けて小さく手を振ったり、一番仕草の表現が豊か。“誰も救ってなんかくれない”という部分は強くはっきりと発するので絶望感半端ないです。

「vandal」はまたエロティックで、どぎついピンクの照明。そして“濡れてきた?”で左手を舐めてこちらに少し伸ばすという。なにそれなにそれなにそれずるい!変態!って感じでした。
YUCHIさんはコーラスにも力を注ぐ。

未架さんがシンバルを叩いては押さえ…というプレイをするのは「烏有の空」ではなく「hemimetabolism」でした。YUCHIさんはエレキベースを弾き終わったあとに、それを背中にまわし、そのままアップライトベースを弾くということもやっていたんですね。サムライ!

まだsukekiyoのライブは3回しか観ていないですが、「鵠」が美しくて涙。でも、それだけ完成度が高いライブをすでにしているということでもあるのかもしれないです。時折映し出される深緑や流れゆく雲の映像も楽曲に似合っていました。京さんは“視線外す 手首から”で手首に視線を落としたりも。

「斑人間」については、「みにくあひるの子」というイメージが浮かんで、終演後にもメモを残していました。「鵠」(=白鳥)と対になるような感じで「斑人間」はドロッ生々しい人間、人格を描いているのかなあ、とか、『IMMORTALIS』の詩世界には2人の人間(子供?)がキーになってるのかなあ?、とかいろんな考えをライブ中にめぐらせていました。そのときは、あーなんかひも解けそう!と思ったのですが、今冷静に考えるとあまり自信がないといういつものパターンなんですけどね。

「in all weathers」は、匠さんがピアノを溜め気味に弾いていました。青年館公演でお母様に感想をもらったとブログ書いていたので(http://ameblo.jp/takumixofficial/entry-11839774262.html)、その影響もあるのかな?と思ったりして。京さんがマイクを置いて、去って行ったあとは、「elisabeth addict」にループするフレーズは弾かず、ジャァーンと鍵盤を叩きつけ、破壊的に楽器陣のブルージーなセッションへと持ち込みました。ここでもピアノは間をすごく意識した弾き方。

ハットをかぶって京さんが再び現れ、ラストに披露されたのは「304号室、舌と夜」。ピンクのライトで禍々しい雰囲気。この曲のアコギのフレーズ、とても恐怖を感じます。メロ部分の歌詩で“冷たいS 冷たいM”と聴こえたところがありました。
そしてセリフ部分、この日は聴き取れました!

“真実はーーーー”

そして、語尾をホイッスルボイスに繋げるという。

「おやすみ」と言い残し、マイクをコトリ、と置いた京さんがステージを去り、ほかのメンバーも動き出したところで拍手。「zephyr」のインストゥルメンタルアレンジが流れ出しました(青年館でも流れてましたっけ?)。UTAさんは深々とお辞儀をしてからステージを後にしていました。




3回ライブを観た時点でのまとめ感想。
まだアルバム収録曲(+「304号室、舌と夜」)を並べ変えたセットリストのsukekiyoしか観ていないけれど、まったく飽きないです。それは、メンバーが5人全員「安定」ではなく「変化」や「進化」を求めるタイプだからなんじゃないかなと思います。しかも、失敗した部分の修復やこっちのほうがいいのでは?というアイデアはすぐに反映させる。
だからこちらも、次はどんなふうに聴かせて(見せて)くれるのだろう?とそういう楽しみ方ができる。

もうひとつは、今回のホール公演では観客全員着席で無言、拍手も終演時のみという、わかりやすいレスポンスがない状態でのライブになったわけですが、決してマスターベーション的なライブではなかったんですよね。それってとても不思議だったんですが、YUCHIさんのブログを読んでみたら、お客さんから「パワー」を感じた、といったことを書いていたので(http://ameblo.jp/yuchi-bassist/entry-11840149218.html)、無言でもステージ側に伝わっているものなんだなあと、妙に腑に落ちたというか、新たな発見をしたのでした。

「セックスしようぜー!」っていうガツガツしたライブもあるけれど(そういうバンドを否定しているわけではないです)、sukekiyoの場合は雰囲気で持ち込むようなライブ、というとわかりやすいでしょうか。じわじわ攻めていく感じで、すごく大人。背徳感さえあるアダルトで甘美な世界を自然と表現しているように思いました。

2014.05.02 sukekiyo“二〇一四年公演「別れを惜しむフリは貴方の為」”at 日本青年館

2014-05-04 03:28:00 | ライブレポート
5/2、東京・日本青年館公演2日目。

この日も黒い服を着ている人率高めでした。ホール内に入ると、前日と同じようにスクリーン…ではなく、よく見たら黒い紗幕でした。光の加減で奥が見えないようになっているみたい。その幕に青い光に照らされた「sukekiyo」のロゴが浮かび上がっていました。楽器のスタンド類や椅子はなにも置かれていなかったので、昨日とは違う登場の仕方になるであろうことが見てとれました(でも、あの楽団風演出がとっても気に入ってしまったのでもう一度観たい。京都初日でもやるだろうか?)。

2度目のブザーが鳴り、すーっと場内は暗闇に。「destrudo」が流れ出し、「sukekiyo」のロゴを照らす青いライトの範囲が広くなっていきます。そしてゆっくりと幕が上がると、もうそこには5人が佇んでいました。楽器陣は下手からUTAさん、YUCHIさん、未架さん、匠さんの順に横一列に並び、京さんのみ前方に。昨日同様アンプなどはステージに置かず、シンプルにまとめられた空間。
楽器陣の衣装はスーツ。YUCHIさんはインナーに襟ぐりのあいた白いカットソー。未架さんはおでこを出したヘアスタイルでした。京さんは黒貴重のメイクで、顔の左半分に線状のアート。黒いタイトなジャケット?にフレアパンツ。足元は裸足か足袋に見えたけれど、フラットな靴かもしれないです。マイクのシールドだけが赤い。

この日も観客側は、あえて拍手なしで着席スタイル。こちらを見据えるメンバーと、それをじっと見つめる観客。まるで対決前のにらみ合いのようで、これはこれで緊張感がすさまじい。直線的パズルのような白いパネルはすでに吊るされていました。

1曲目は「aftermath」。昨夜と同様、赤い番傘(きのう扇子と書きましたがよく観たら傘だった)や紅葉、水滴などの映像に加え、MVの一部(緊縛された奏ミチコさんの姿)も映し出されていました。
そして、UTAさんがそのままヴィオリラを弾く「elisabeth addict」へ。個人的にsukekiyoで今一番好きな曲。民族的なリズム隊のプレイに高揚する。匠さんはアコギに徹し、この日は同期でピアノも入っていました。この曲だったか記憶があやふやなんですが、京さんが高く手を掲げ、なにかを大切に抱きかかえるような仕草をしていたのが受胎のように見えました。

そして、UTAさんの綺麗なアルペジオから「hemimetabolism」。聴いている最中に、この曲はUTAさん作っぽいなと感じました。中盤の曲調が変わる部分が特に。匠さんと共作とかもあり得るのでしょうか?
その禍々しい空気を作り出す中盤部分で、未架さんがスティックを華麗に回転させてから、激情的に叩きつけていたのですが、色気もほとばしっていてカッコ良かった。まさに飴と鞭のような。

「latour」「hidden one」はYUCHIさんのターンといってもいいほど。激しく髪を振り乱し暴れ狂います。たまに未架さんと匠さんのほうへ向かってヘドバンしてたりもするんですが、それを見た2人のテンションも少しアップするんですよね。YUCHIさんはステージでもある種のムードメーカーなのかもしれません。

「nine melted fiction」では“「no good」”の歌詩を破裂音混じりに発する京さんが印象的でした。音源では静かに告げる感じですけど、ライブではまたュアンスが違っておもしろい。「304号室、舌と夜」のセリフはまたも聞き取れず!

「烏有の空」からはカオティックな雰囲気に。この曲での5人の阿吽の呼吸にはホントしびれます。京さんは膝をついて、正座したままぐわっと後ろにのけぞったり、首にシールドを巻いたまま体を前方に倒してマイクを床に落とし、そこへ顔を擦り付けるようにして声を発したり。前方に倒れこんだときは手を後ろに伸ばして鳥のようなポーズをしていました。
たしかここでも未架さんの変態ドラムが炸裂していまして、スプラッシュシンバル(クラッシュかも?)を叩いてはサステイン短めに手でおさえて、というのを何度かやっていました。

「the daemon's cutlery」では神殿のような映像が、「斑人間」ではチカチカと激しいストロボ。UTAさんとYUCHIさんが激しく動き回っていたのでついついそちらを観てしまっていました。が、このあたりから睡魔がやってきてフワッフワな状態に…記憶が途切れ途切れ。実は前日も落ちそうになってました。心地良すぎて意識がどっかいっちゃうんですよね…。
「zephyr」「鵠」「mama」とラストにはメロディアスな楽曲の応酬。「鵠」は自分の中でスルメでだんだん好きになってきてます。ファルセットのところと、“貴方の優しさ?”という歌詩の部分の歌謡曲のような駆けあがり方がツボ。明菜ちゃんや百恵ちゃんの曲みたいな感じで。

「mama」のラストで京さんはマイクを床に静かに置き、下手へはけていきました。残った4人で演奏を続けます。UTAさんのジャジーな(ブルースっぽくもあった)ギターが響き渡る。
やがて京さんが再びステージへ現れ、匠さんのピアノから「in all weathers」へ。音源と同じく、匠さんがピアノで「elisabeth addict」の一部を弾き、かすかな光が見えるようなラストだったと思います。京さんが「おやすみ」と言い残して去り、一息おいたところで拍手が沸き起こりました。



sukekiyo、観る前はやはり京さんばかり観てしまうんだろうなと思っていたんですが、楽器陣のほうにも自然と目がいく。むしろそちらをがっつり観ているかも(笑)。「ソロ」ではなく「バンド」だと京さんが各誌のインタビューで語っていましたが、本当にその通り。sukekiyoはバンドだ。

2014.05.01 sukekiyo“二〇一四年公演「別れを惜しむフリは貴方の為」”at 日本青年館

2014-05-02 06:43:44 | ライブレポート
もしメンバーに直接感想を述べるとしたなら、「いやあ、変態(すばらしい)です! 変態(すばらしい)ですね!」と笑顔で言いたくなってしまうようなライブでした。可能ならば、握手した手をぶんぶん振りながら、もしくは肩をバシバシと叩きながら!
まあ、そんなこと実際には言えるわけないですし、恐れ多いので冗談なんですけど、ステージングにしても演奏にしても、それは変態すぎるでしょー!という場面がいくつかあり、ニマニマしてしまうライブだったんです。そんなニマニマしている自分も、変態の1人になりつつあるのかもしれないなあ、なんて思いながら。



というわけでsukekiyo。京都公演1本だけにしようと思っていたんですが、都合がついたので東京公演も観に行っちゃいました。
きょうの公演は特に喪服限定、黒服限定というわけではなかったのですが、会場前に着いたら、90パーセントくらいの人が黒い服を着ていてたまげました。かくいうわたしも、一応黒メインの服で行ったんですけどもね。インタビュー等でメンバー…京さんが話していたことを各々が自主的に実行しているということだと思うので、純粋にすごいなと。

ホール内に入ると、アンビエントな音楽がひかえめに流れていました。スクリーンには、「sukekiyo」のロゴが映し出され、青いライトにぼんやりと照らされています。ステージ中央にはマイクスタンドやシンプルなパーカッションのセットが。

ブザーが鳴り、18:40ごろ開演。そっと押し黙る観客。稀に見る異様な緊張感。

そんな中、スーツに身を包んだ楽器陣が1人ずつ颯爽と登場。映し出されていたsukekiyoの文字は消えたものの、スクリーン自体はそのままだったのでメンバーのやや後ろ幕がある状態でした。

未架さんが最初に現れたのですが、客席は暗黙の了解のように(4/28のリキッドルーム公演で京さんが「黙れ」と発したのも関係したと思われる)、拍手なし、歓声なしで全員座ったままでした。おそらく誰もが「あ、きょうはこういうスタイルになる」と直感的に思ったはず。よくよく考えてみると日本という環境だからできたことでもあるのかも。

ひっそりと静まり返ったホールに、メンバーの足音だけが響きます。
客席のほうを向いて半円を描くように位置に着く楽器陣。下手からヴィオリラ UTAさん、アップライトベース YUCHIさん、ボンゴ(?)未架さん、アコースティックギター 匠さんの順。

そして、目の周りを黒く塗り、アートなメイクを施した京さんが登場。指揮者のように客席に背を向け、楽器陣の真ん中に立つ。想像していなかったフォーメーション。
衣装は、袴風の黒いロングスカート(フレアワイドパンツ?)に黒い羽織、低いヒールのあるブーツ(?)。ライブが進むにつれて、ときどき模様の入った紅色のインナー?帯(スカーフ?)が腰からちらちらと見えていました。ちなみに一度も衣装を脱がなかったので逆に新鮮味が。

京さんが位置につくと「elisabeth addict」が紡ぎ出されました。いやーこんなに体をこわばらせて緊張しながら演奏を聴いたのはひさびさかもしれません。ハラハラするという意味ではなく、その空気感にドキドキするという意味で。ピアノがないため、一度目の“終わりを超え地平線~涙拭えない”のフレーズは京さんがアカペラで歌います。意外だったのは、UTAさんの弾くヴィオリラが思ったよりも音量があって、こんな音なんだ!とはっきりわかったこと。手前に引いた弓を、肩に担ぐようにふわりと上げていたのが印象的でした。剣を担いでいるみたいで。

このときの5人の姿は、砂ぼこりの舞う異国の街角で演奏する楽団のように見えました。景色が見えるというか。あるいは月夜に行なわれる儀式のイメージ。
楽団も英語だと「バンド」になると思うんですが、クラシカルなニュアンスで使ってます。

未架さんがそっと曲を締めると、SE「destrudo」が流れ出しました。それと同時に後ろの幕がさっと上がり、青と白色のまばゆい照明に照らされたステージがあらわに! もうこの演出で鳥肌が立って満足感半端なかったです。
5人は光のほうへと歩を進め、各自定位置に。今度は、楽器陣は横一列に並び(アンプとキャビがステージにない!)、その前に京さんが立つフォーメーションでした。楽団からヒール(悪役)集団に変貌した感じ。京さんが頭首みたいな。

また話が逸れましたが、そんな立ち位置だったので、京さんは上手・下手へ自由自在に動けるという。ただ、正面を向いていると、楽器陣の姿はあまり視界に入らないんじゃないかという気がしました。そのためかどうかはわかりませんが、未架さんのほうを向くこともちょいちょいありまして。


「elisabeth addict」~「destrudo」と繋がったときになんとなくピンときたんですが、その予感は的中で、セットリストは結果的にアルバム『IMMORTALIS』の曲順通りとなりました。

曲間を大事にしているんだろうな、というのが伝わってくるくらい、すごく自然に繋いでいましたね。休憩なくて大丈夫かと心配になってしまうほど。
曲と曲の間はもちろん、1曲の中でも楽器を持ちかえたりするから…特に匠さんはピアノやアコギもあるから、立ったり座ったり、ものすごく忙しそうなんですよ(笑)。しかもローディやスタッフを使わないんですよね。みんな自分の周りに楽器を置いておいて、セルフで持ち替えていました。ステージには最小限の人間を、というよりかは、そのほうがスムーズだからという物理的な理由かもしれないです。でも、それでちゃんと成り立つのは、準備に準備を重ねた成果なんでしょうね。


演出的な面では、「aftermath」で真っ赤な番傘、桜、紅葉、水滴のクラウンなどが映し出されました。
あとは、たしか「the daemon's cutlery」のときだったかな? 凸型、凹型のような形に切りだされた薄いブロックが天上から吊るされて、そこを含めて映像が投影されていました。前から観ると3Dみたいに見えるんです。
「mama」ではグッズのステッカーと同じ緊縛女性の絵が描かれた掛け軸状のものが5本、これまた天上から吊るされました。そのほかの楽曲は基本的に、メンバーのシルエットを生かしたライティング。


リエントメンバーのプレイ、ステージングはやっぱり懐かしい感じがしましたね。カッチリしたフォームで丁寧に弾く匠さんに、酔いしれているように強弱をつけながら叩く未架さん。このお2人は、sukekiyoではどちらかというと「静」のタイプなのかも。対する「動」はYUCHIさんとUTAさん。特にYUCHIさんはびっくりするくらい頭を振る! 振る! 「hidden one」ではYUCHIさんとUTAさんが向かい合ってヘドバン対決してましたよ…。一緒に暴れたいと思っている人にとっては、あなたたちはドSですか?って感じでしょうね(笑)。これ、変態だと思ったポイントのひとつだったりします。

独特のフォーメーションのため、これが本当の「フロントマン」という立ち位置いる京さんは、ステージを大きく使って動いていました。目の前に誰かがいるように手を伸ばしてみたり、唇をぬぐう仕草をしてみたり、両手を広げて天を仰いだり、演劇的な要素も感じられました。歌詩とリンクさせた動きをしていたかも。
それに、滑るように軽いステップで移動するので、たまに宙に浮いているようにも見えたり(笑)。どっしりしているというよりは、軽やかで儚い感じでしたね。



この日のライブでの一番の収穫としては、「あ、この楽曲はこんなふうに演奏されていたんだ」という発見があったことかもしれないです。「この音もギターだったんだ」とか「ピッキングじゃなくてタッピングだったんだ」とか(「nine melted fiction」の音源0:28ごろの匠さんのフレーズ、プリングだと思っていたら違った)、「ここでこっちの楽器を使うのか」とか。こうやって構築されていたわけか!というところに楽しみを見出すことができるライブでもあったと思います。


それともうひとつ。くらべてしまうのはアレですけれど、DIR EN GREYのライブでいうINWARD SCREAMのような楽曲「烏有の空」。生演奏でやるとこうなるのか!という衝撃があったのはもちろんなんですけど、メンバー(特に未架さん)が京さんを見ながら波長を合わせるように演奏していたのにすごく驚いたんです。冒頭にもちょこっと書きましたが、京さんを指揮者のように見ているわけですよ。ここも変態だと思ったポイント。

そんなふうに一丸になることもあれば、5人それぞれの個性大爆発!みたいなときもあって、すごく発展性を感じました。sukekiyo、おもしろいですホント。


アルバムの曲順通りに演奏されたと書きましたが、「in all weathers」のアウトロ間際で京さんは、マイクを床にコトリ、と置き一度はけたんです。百恵ちゃんかと思ったのは秘密です。そのあとは楽器陣だけでジャムセッションのように、アレンジした演奏を続けていました。しばらくして、京さんが再び姿を現わし、「304号室、舌と夜」を披露。アンコール的な感じだったんでしょうか? 
聞きとれなかったのですが、“被害者の舌はありません”のセリフは別の言葉に置き換わっていました。そして最後に「おやすみ」と一言。

上手側へ去っていくメンバー。はっと思い出したように数テンポ遅れて拍手が起こりました。メンバーの名を呼ぶ声はなかったものの、その1回の拍手にすべての称賛が込められていたように感じました。


sukekiyoは「娯楽」というより、自分にとっては「刺激」かもしれないです。