北のパラダイス

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ドイツの脱原発

2013年07月20日 | 原発問題

脱原発の先進国であるドイツでは、2002年に社会民主党と緑の党による連立政権が、2022年までに全17基の原発を廃炉にすることを決定しました。

その後政権が交代し、保守派のメルケル首相は2010年に原発の寿命を平均12年延長させることを決めました。

しかし、2011年3月11日に福島第一原発事故が発生し、メルケル首相は直ちに1980年以前に稼働を始めた古い原発7基を停止させました。

さらに、メルケル首相直属の倫理委員会を設置し、ベルリン自由大学環境政策研究所長のミランダ・シュラーズ教授ら17人の専門家や経済人に原発の是非を諮問しました。

その結果、約10年以内に原発を止めるべきだとの勧告を受けて、メルケル首相は2011年6月に、全ての原発を2022年末までに廃炉にすることを決定し、法制化しました。

北海道新聞は、このほど、ドイツ脱原発の立役者の1人である前述のミリンダ・シュラーズ教授にインタビューを行い、なぜドイツは原発稼働を止め、自然エネルギーへの転換を進めているのか尋ねました。

シュラーズ教授のお話は、我々日本人にとって大事なことは何か、いま我々がとらなければならない行動はどういうことか、いま我々は何を選択しなければならないのか、などを明確に示していると思います。

ぜひ、明日の投票に際して参考にして戴きたいと思います。


【北海道新聞】

日本の電力会社が再稼働を申請しました。

【シュラーズ教授】

驚きました。ハイテク国家の日本が事故直後、原発を全く制御できなかったことは世界に衝撃を与えました。
安全性を証明できていない現状で再稼働を急ぐのは、無責任を感じます。
再稼働の前に、古くなった個々の原発をいつまでに廃炉にするか具体的な計画を作るべきです。
もう一つ、再稼働すればますます増える放射性廃棄物をどうするのか、結論を出すことが不可欠です。

【北海道新聞】

「脱原発は経済にマイナス」という声があります。

【シュラーズ教授】

仮に現時点でそうだとしても、ドイツは30年後も経済大国であるにはどうすべきかを考えました。
将来性のある新しい技術分野で世界をリードするため、自然エネルギーの開発を選んだのです。
日本も大半の原発を動かさず2年以上乗り切ったので、挑戦する好機ではないですか。

【北海道新聞】

自然エネルギーは不安定では。

【シュラーズ教授】

ドイツは福島の事故後だけで原発8基分の出力の太陽光発電を導入しました。
さまざまなエネルギーを組み合わせれば不安定さは解消できるし、技術開発が急速に進んでいます。

【北海道新聞】

ドイツは全17基の廃炉を決めました。なぜ決断できたのですか。

【シュラーズ教授】

私たちが首相直属の倫理委員会で出した結論は、原発は事故時のリスクがあまりにも大きく、放射性廃棄物も次世代に残す、倫理的にも正しくないエネルギーということでした。

【北海道新聞】

「原発推進に戻せ」との声は。

【シュラーズ教授】

決定から2年、全く聞こえません。
保守系のメルケル政権が脱原発に転換したので政権に推進派がいなくなりました。
経済界も自然エネルギーを前提にした経営に切り替えています。
脱原発は国民のコンセンサスなのです。

【北海道新聞】

世論は急に脱原発になったのですか。

【シュラーズ教授】

1970年代から、原発を抱える地方の住民が熱心に脱原発の声を上げてきました。
脱原発の主役は地方なのです。
さらに1986年のチェルノブイリ事故では、千キロ以上離れたドイツでも放射能汚染が広がり、脱原発の動きが拡大しました。
民意の受け皿として「緑の党」が存在したため、政界にも影響を与えたのです。

【北海道新聞】

日本は参院選が間近です。原発の再稼働の是非も争点です。

【シュラーズ教授】

最近「まずは経済が大事」と言う人が増えたように思います。
しかし、福島の事故は倫理的に、あまりに大きな問題を突きつけたのです。
日本の原発対応を世界が見守っていることを忘れないでください。

-以上2013年7月19日北海道新聞朝刊6面より転載-