こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
看護師さんも募集中!!

看護師ブログのランキングです。ポチッってしてもらえると励みになります。(^^)/

にほんブログ村 病気ブログ 看護・ナースへ
にほんブログ村

独居をどう支える?

2010-03-04 23:15:41 | 訪問看護、緩和ケア
このところ、独居の方が増えていますね。

独居と言っても、ほとんどの方が距離はともかくとして、家族や縁戚の方がいて、近所の方とも交流があって、具合が悪ければ病院へ、認知が進めば施設へと入られます。

でも、「最後まで、絶対家にいる。」と言う方も、実は結構いらっしゃるのですよ。
このブログでも、2回ほど書いた事がありますが、お一人は最終的にお子さんたちが泊まり込んでくれて、家族に看取られての暖かな最期でしたが、もう一人の方は本当にお一人で最後まで過ごされました。
痛みも苦しみも、どのように耐えていたのか。
全身をむしばむ病と、膿の流れ出る褥創を抱え、誰かが来た時だけ、わずかにストローから水を流し込んでもらうだけの、最後の数日。

壮絶な最期の選択を目の当たりにして、いまでも私の気持ちの中には、「もし自分だったら・・・」という恐怖がぬぐえずにいます。

今日、「一人で自分の部屋で死にます。」と言う方と、お話しをしました。

とても静かな方でした。
若いころに両親もなくし、兄弟もそれぞれ行方も分からず、結婚もせず、今は小さな古いアパートで、ひっそりと暮らされているのです。
「なるべく人に迷惑をかけたくないんです。出来るだけ、自分の事は自分でやりたい。」
「できなくなったら、その時は手伝って下さい。」

これから、痛みや吐き気や、苦しさが出てくるかもしれませんが、不安はないですか?

「痛みも、苦しみも出てくると聞いています。けれど、私が選択したことですから、覚悟はできています。次の日にみなさんが来ていただいた時に、昨夜はこうだったよ。と、お話しいたします。」

何だかお話しをしていると、その風媒や話し方から、浅田次郎の小説に出てくる「天切り松」を彷彿とさせます。

どんな人生を送られたのでしょうか、言葉の端はしに気使いも感じられます。

「両親の墓を建ててありますので、私が死んだらそこへ一緒に入れてくれるよう、知人に頼んであります。
幾ばくかの永代供養料を添えれば、ちゃんとやってくれるでしょう。」

いろんなことを、整理してあるようでした。

同じ人として生まれて、裕福な家庭で暖かい家族に囲まれて、死ぬまで何不自由なく暮らす方もいます。

逆に戦禍の中で生まれたり、ひどい逆境の中で育ったりする方もいます。

同じ一生・・なのにあまりにも違う一生。

真面目に、人に迷惑もかけずに、自分の事は自分でと頑張ってきた。
同じ頑張ってきても、守られて囲まれての最後と、たった一人での最後。

うまく言えないけれど、話を終えた後、胸が詰まってしまいました。
言葉にしようとすると、うまく伝えられないけれど・・・胸が詰まってしまいました。

私は、「出来る限り自分でできるうちは自分で、そして頼むと言って下されば、いつでもお手伝いします。そして、最後まで御自宅で過ごせるように、お手伝いさせていただきます。」とお約束をしました。

これから、彼の人生最後の舞台が、始まろうとしています。