こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
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35回めぐみ在宅緩和ケア研究会

2010-03-16 22:47:12 | めぐみ在宅緩和ケア関連
今日の緩和ケア研究会は、再びうちの訪問看護ステーションからの事例検討となりました。
今日から、うちで訪問看護の研修を始めたHさんも一緒です。

今日の事例は、波乱の人生を歩み、高学歴で高い地位もありながらも自由奔放に生き、あくまでも自分のスタイルで人生を全うしたTさんの振り返りでした。

番カラ学生のまま年を重ねたような・・というケアマネさんの言う通り、着飾ることもせず人生を好きなように濶歩してきたTさんは、家庭に戻ることなく、晩年をこの瀬谷の街に住み、自分の余命を悟ってなお、一人で自分の部屋で逝くことを決めた方です。

当初は、どのサービスも拒否、聞く耳持たず・・ケアマネさんもあの手この手で、在宅環境を整えるのに、とても苦労をしたようです。
気に入らなければ怒鳴るし、先生でさえ家に入れてもらえないことだってあったようですが、不思議とTさんにかかわるみんな、ヘルパーさんも看護師も、ケアマネさんも先生たちも、Tさんが気がかりで、最初は遠巻きながら、少しずつTさんに近ずいていきました。

そして、なるべくTさんの希望に沿って、Tさんが選ぶ形で在宅を支えるチームを作っていきました。
煙草だって、OKです。コーヒーだって毎日入れます。
汚くたっていいんです。
多少怪しい食べ物だって、本人がよければありです。
お風呂は嫌いでもいいです。

でも、足湯は待っていてくれました。
マッサージも大好きになりました。

やがて病魔の進行とともに、Tさんの体の自由は奪われましたが、ケアマネさんも先生もヘルパーさんも看護師も、薬剤師も、Tさんは受け入れてくれるようになりました。

そこには、Tさんの心をゆさぶる歌であったり、遠い昔の話であったり、Tさんの幼少期の写真であったり・・・そう言うアクセサリーがTさんの心を開いていったのだと思います。
強制しない。
なるべく彼のスタイルに沿う。

その約束を、みんなで守っていきました。

今日、あらためて振り返った事。

医療者や介護する側(医師や看護師やケアマネは特に)は、対象者を管理したがります。

自分勝手に、「この人は、こうしたほうが良いにきまっている。」
と思って押しつけてしまう。

でも、誰も家にいてまで管理なんてされたくないはずです。

集合住宅で煙草をやたら吸う方に、煙草をやみくもに取り上げても、信頼関係は生まれない。
でも、危険です。火が出たら本人だけの被害ではすみません。
じゃあどうするか。
ヘルパーや看護師や誰かがいるときには吸って頂く。好きなだけ。
でも、帰り際灰皿をからにして、なにげなくライターを隠します。
煙草は、安心のため見えるところに置いておく。
Tさんは、認知もあり最初は、うまく行かない事もありましたが、傾眠がちだったのも手伝ってけっこううまくいきました。
横の連携でクリアできることは、いっぱいありますよね。
服薬管理も、麻薬を使っていましたが、薬剤師の管理指導とヘルパー、看護師が確認していきました。

要は、自分で動けるうちは好きにしていただき、遠まきに注意しておき、いざというときには御本人に選んでもらう。
または、安全のためにちょっとだまされて頂く。

もうひとつ、家族介護のこと。

特にTさんは、奔放な方だったので、ご家族との関係も微妙でした。
最初は、「一人で死ぬ!」と断言するお父さんとの価値観の違いや、仕事の忙しさもあって、訪問されることが難しい状況でもありました。

病院だと、なにかあればすぐ「御家族の方、いらしてください。付き添ってもらわないと困ります!」みたいになることもしばしばですが、ケアマネNさんは「どうか無理はなさらないでください。こちらでの生活は私たちが支えますから、ご指示をいただけばいいですよ。」という言葉で接していきました。
ポイントポイントで、現状をお伝えはしますが、うるさくない程度に、確認を取りつつ。

「子供なのだから、もっと介護に入ってください。介護の役割を担うべきです。」
ではなかった・・・。

ケースバイケースで、担って頂いた方がいいケースもありますが、今回はこれがベストだったと思います。

たまに来てもお父さんの体に触れなかったお子さんたちが、スタッフたちとの触れ合いを見る中で、ご自分たちから近ずいてこられるようになり、最後はお父さんをお子さんたち全員でお見送りすることが出来ました。
御本人もあれだけプライドが高く高圧的だったのに、最後の1週間はずっと「ありがとう」を言い続けていましたので、御家族もチームスタッフもとても幸せな気持ちにしていただきました。

御家族と御本人の微妙な関わりであったり、子供のころからのトラウマであったり、ライフレビューのなかから、どういうスタンスで関わりを持っていくかを、きちんと判断する力、それが介護職、医療職の大事な資質なんじゃないかと思います。

今回も、グループワークでいろんな職種の方とお話ししました。
中には「患者家族です。」という方や、傾聴ボランティアのかたなども毎回来ていて、いろんな意見を聴くことができて勉強になります。
傾聴ボランティアの男性二人は、年齢的にも私たちよりはTさんに近く、男性としてもいろいろ思うところが多かったようで、とても感慨深いようでした。

実際全部を載せるわけにはいきませんので、キーワードや心の扉の向こう側の話なども、真剣に話し合われ、今の私自身の置かれている現状を見直すいい機会にもなりました。
人生の大きなうねりの中を、人がどう生き抜いていくかを、見せていただく機会でっもあったとおもいます。

緩和ケア・・・オピオイドの使い方の勉強もいいけれど、心の扉のノックの仕方も大事です。