人は一生の中で どれくらいドラマチックなシーンに出合うことがあるのでしょう?
私にとって、迷子のしずくちゃんを捜索中に、あの子を発見した時のシーンは
まさに生涯忘れられない劇的なワンシーンであったと思います。
そして、そのドラマが4日間も続き、足を運ぶことになるとは夢にも思っていませんでした。
強風のミゾレ舞う道路
こんなお天気が続いていた この1週間
しずくちゃんのパパが来た日(23日)は、小春日和の良いお天気でした。
20日 似た子を見つけ、捕まえようとしたら、ものすごいスピードで走って逃げたという情報
その近辺は小高い山に囲まれた集落があり田んぼや畑がありました。
しずくちゃんがいなくなったあたりからは 10キロほど離れているでしょうか?
その日は、お天気が良く外で畑仕事や家の周りの冬支度をしている人も多く、
聞き込みで目撃情報も多く得ることができました。
18日からの足取りがだいたいわかり20日の目撃された場所で情報はぷっつり途絶えています。
その間、民家のあるあたりを雨にぬれて さまよっていたことがわかりました。
(その場所から)赤い点が保護された子が見つかった場所
「食べものを上げようとしても近づいてこなかった 捨て犬だと思った」
「写真の子とは違うけど見た・・白と黒のパンダのような色だった」
しずくちゃんが行方不明になって2週間過ぎて、そんな風に見えたのだろうと一つも疑いもせず・・・
さまざまな情報からして山の中に逃げ込んだりはせず人家のある周辺 道路沿いを歩いている
ただ、走って逃げるだけの元気がまだあるとすれば・・2日間で移動する距離も踏まえての捜索となりました。
今は夕方5時には暗くなります。
夕暮れも押し迫り「しずくちゃ~ん!」と声を出すと涙声になってしまいます。
今日見つからなければ、また土曜日に来るというパパさん・・・
最後の目撃された周辺の場所を何度もくまなく探したつもりです。
そして 最後に下りて行った田圃の畦道に、黒と白の塊のようなものが見えました!
うちのショウが眠っているときの形と同じに見えました。
(パパが来るまでの間ズームで撮りましたが手が震えていました)
しずくちゃん!!
近づくことができず 声にならない声を出して
「おとーさん!!いーるーーーっ!!パパをよんでーーー!!」
二人で興奮しながら携帯でパパを呼びました。
そしてパパが、そっと近づき・・・ 「うちの子じゃない・・・」
「えーーーっ???!!」・・・・号泣
こんなことってあるのでしょうか?! 100% 確信していました・・・
あたりは、とっぷりと日が暮れ 私たちは弱っているその子をどうするかの問題に・・・
動物病院が開いているかどうかパパが友人の方に電話してくれましたがやっていないとのこと。
正直、この子を私たちが家に連れて帰らなければならないことに戸惑いを感じていた私。。
たぶんこの子は助からないのでは・・・かなり重篤な状態にみえました。
でもタオルで必死に拭いてくれているパパを見ながら、連れて帰る気持ちになっていました。
ただその前に、目撃された情報の子がこの子だったのか確認する必要があり
18日に目撃した場所まで足を運んでくれた方のところに伺うことにしました。
車の中でタオルに包まれ私の腕に抱かれたその子の心臓の音が伝わって来て
私はマールを空港に迎えに行った時のことを思い出していました。
訪問すると私たちが日が暮れるまで探しその子を見つけたことに驚いて
その方が、「この近くで見つかったことだし、あなた方も疲れているでしょうから」と
預かってくださるとのこと! 思いもかけない言葉に、ただただ感涙、、、
犬や猫も飼っていて、これまでも瀕死の捨て猫も助けたことがあるという
本当に心の優しい奥さんと 男気のある農家のご主人に巡り合い
お言葉に甘え預かっていただくことになりました。
その辺での情報は この子のことだったようです。
翌日
前の日しずくちゃんが逃げた場所に行ってみなかったことと、
あの子を預けてしまったことの後ろめたさもあって どちらからともなく「行こう!」と。
もう一度二人で大仙市に向かいました。
救出された子は、暖かい部屋できれいになって少し元気になったように見えましたが
ご主人のこれまでの経験から「タール状の便が出て水しか飲まなくなったから、そう長くないかも・・」と。
目は白内障がかっていて 体にしこりもあり老犬のようだと言っていました。
かわいそうに・・・20日以降誰も見かけていませんでしたから
あの場所に、たぶん3日間うずくまったままで寒さにうちひしがれていたのでしょう。
預かってくださったOさんの奥さんは 小雪 と名付けて一生懸命手をかけてくれていました。
私なら、そこまでやってあげれなかったし連れて帰れなかったことを詫びながら
感謝の気持ちでいっぱいでした。
3日目の午後
Oさんの奥さんから、病院に連れて行こうとしていた矢先に息を引き取ったとの電話が!
夫と二人で、また向かいました。
小雪ちゃんは まるでお昼寝をしているように安らかな顔で横になっていました。
しずくちゃんのパパが抱っこしてあげていたときと同じ目を少し開けていました。
不思議とワンコの亡骸は人間と違い気持ち悪さや怖さを感じないのはなぜでしょう
ジーーッと私を見ていた あのお目目が忘れられません
病院に早く連れて行けなかったことを悔み泣く奥さんに、私は
小雪ちゃんが、せっかく見つけた安住の地 病院なんか行きたくなかったのよと言いました。
暖かい部屋の温かい心の人のそばで、私は本当にそこでよかったと思っています。
そしてご夫妻は、その子を自宅の裏山に埋葬までしてくれると言ってくださったのです。
本当に慈愛深い神様のような方の所に小雪ちゃんは来るべくして来たように思えてなりませんでした。
あのまま見つからなければ・・・・孤独に冷たくなってなっていたかもしれない子が
最後のしあわせ に触れて安らかに旅立ったように思え、悲しみの中にも高揚した充足感があり
その夜、私はこれまでにない深い眠りに着き 連日の疲れも感じていませんでした。
4日目の朝
しずくちゃんのママからメールが届いていました。
パパさんと車で遠い千葉からこちらに向かっているとのこと。
ママも、しずくちゃんのいなくなった場所を確かめながら
保護された子を預かっているOさんのお宅と私の家にお礼に伺いたいとのこと。
ワンちゃんもいるので今日中に帰られるというので私たちがそちらに行くことにしました。
実は保護された子が亡くなったことを、しずくちゃんと重ねていたであろうパパやママには
それまで言えずにいたのです。
その日の夕方、前日あまりの荒天に埋葬できずにいた小雪ちゃんのもとに
誰からともなく 3組の夫婦が揃うこととなり、準備されていた場所に埋葬されました。
Oさん宅の裏山はご主人の趣味で公園のように整備され
四季折々の花が咲くように様々な木々が植えられていました。
隣りに亡くなったネコちゃんたちもいるし、Oさんのお宅がすぐ下にあります。
お花が手向けられ、お線香がたかれ、温かい布に包まれフードも入れられ
とっても あたたかい心のこもったお葬式で Oさんご夫妻も とても感激されていました。
しずくちゃんのパパやママも、小雪ちゃんに、しずくちゃんを守ってくれるようにお祈りし
気持ちの上で少しでも区切りをつけて前向きになってくれたのではと思います。
しずくちゃんは見つかりませんでしたが、このドラマの続きに
何処かのお家に迷い込んで可愛がられていることを願っています。