月・土曜日のK谷ヘルパーさんと、ヘルパーさんは料理を作りながら、世間話を始めた。
その日は先週の土曜日で、私はお寺に行く用事があったので、もっと話したかったのだが、ヘルパーさんが、福島県猪苗代町の生んだ大偉人、野口英世の話を始めた。
私も、野口英世の伝記、渡辺淳一先生の「遠き落日」文庫本を、最初の何十頁で挫折したが、ほとんど野口の悪口ばかりで、英世が借金を踏み倒しただとか、女たらしのどうしようもない人間で、何でこんな人間が後に偉人になるんだ、と私は語った。
すると、土曜ヘルパーさんは、私もおんなじような話の内容のテレビ番組を見た、と言った。
そこでも、野口の浪費癖、女癖の悪さをかなり叩いていたが、何故か最後は、細菌を発見したり、世界的な大医学者となって、世界に表彰されるまでを、野口英世の人生のドキュメンタリー番組だったらしい。
私は、以前、野口英世のその「遠き落日」の映画がやっていて、実際テレビで見た、というと、ヘルパーさんも、見た、といい、あれは誰が主演だったっけ、というので、私は女優「三田佳子」と即答で応えた。あれはあの映画は素晴らしくて、泣きながら、非常に大感動した。
私は、きっと私が読んだあの小説も、中途で読むのを終わってしまったが、あれも、最後の方は、きっと英世の大成功の、大偉人としての振る舞いがきっと載ってるんだろうな、と言い、惜しい事をした、と言って、あの本が無いかと、自分の本棚を探し始めた。
無い。どこにもない。私はガッカリして、席に戻った。きっと、数週間前の、断捨離、で捨てたんだ、と言って、悲しんだ。
しかし、本が大量に置いてある、母がベッドとして使ってあった場所に、私は本を沢山一杯、置いていて、そこを覗くと、あった、「遠き落日」渡辺淳一著、上下巻二冊があるではないか。
私は安堵して、ヘルパーさんにそれを見せた。
ヘルパーさんも、良かったね、良く今の短い時間で、本がこんなに早くに見つかったねえ、凄い本の整理の仕方だと言っていた。
ヘルパーさんが言うには、皆、将来、大人物になる大偉人に共通しているのは、若い時は、ゴロツキのような、問題ばかり起こす人が多い。
本当にどうしようもなく、見下げた人間ばかりで、何も、誰も、皆、最初っから、聖人君子だった訳じゃなく、若い頃は、どうしようもない悪党、悪人だったり、不良だったり、馬鹿ばかりやってるが、そういう人が、最後はのし上がって、後世は、大人物になる。偉人は、みんな見ていると、大抵そうだ、と仰る。
私は、あの小説、渡辺淳一氏の書いた著作、「遠き落日」が、余りに最初は野口英世の悪口の事実の列挙、過去の悪行悪事ばかりが書いてあり、実際良く調べ上げたなあと思った。
おかしな小説だとばかり思っていたが、成程、そういうカラクリがあり、果たして、最後には、大団円、立派な、野口英世が世界的な大医学者として立派に大成功し、黄熱病に罹り、皆の為に死んでゆく、最後は世界の医学者として認められ、世界の国々から表彰され、日本人として感謝の言葉まで贈られる。
そこまでの過程を私は読み込んでいなかったのだなあと、思うと、何だか、非常に感銘を受けて、勿体ない感じがして、大偉人・野口英世の人生を思い至り、そこで、その場で、思わず、泣き出し、わーっと、泣き崩れてしまった。
すると、ヘルパーさんが、この頃は、私が泣いてばかりの姿を、良くヘルパーさんには見せてばかりだったので、泣いてばかりいないで、お寺に行く準備を始めたら、と言われて正気に戻り、私はお寺にゆく支度を早速、始めた。
とにかく、この日は、「遠き落日」二分冊が家から出て来て、ほっとしていた私であった。
その後、お寺に六時過ぎに行き、無事に過去帳を持って帰って来た事は、先日、このブログ記事にて書いた通りである。
以上。よしなに。wainai.