琉球放浪2020中秋 『 ずっと変わらぬ島風を肌に感じて〜 』
新型コロナの影響で大変だった一年の業務をどうにかこうにか無事黒字着地させ、期首ミーティングを行ないスタッフらと新たなる目標を話し合った翌日、僕は関西空港から沖縄久米島への釣り一人旅に出た。
関西空港ではどうにかロッドは機内預け出来たものの、電動タックル用のバッテリーは容量の問題で機内に持ち込めず空港駐車場に停めた愛車まで戻り、車に置いてから機上の人となった。
久米島の親友ナカにLINEするとチャーターしている船から電源は取れるとの事である。
久米島に到着する14時半頃には昼メシを食う店が開いてないだろうとのナカからの話で乗り継ぎの那覇空港で沖縄そばとオリオンビールを求めた。
沖縄そばとオリオンビールとコーレーグスと… いつもの那覇空港のレストランだ。
僕はこの旅を一生忘れられないであろうこの2020年の一つのケジメの旅にしようと内心思っていた。
新型コロナでの未曾有なビジネス環境、オフクロの大手術とそれからのリハビリ、オヤジの度重なる入院と老化、嫁の脳神経入院手術… と2020年は年始に思いもしなかった出来事がてんこ盛りとなった。
今になって考えれば毎年恒例の伏見稲荷の初詣で『吉凶合央』などという見た事もない悪いおみくじを引いた事もなんだか納得出来たりするのだ。常に精進しなければならない。
機内ではずっと前に買って鞄に詰め込んできた『別れる力』(伊集院静・著)を読んで過ごした。
久米島空港に到着するといつものナカが迎えに来てくれていた。久しぶりの再会である。変わらず元気そうである。空港から久米アイランドへ向かう車中で組み立ててくれた旅程を教えてもらう。
釣りは初日がマグロパヤオ、翌日は近海根魚を中心に楽しむとの事。嬉しい限りだ。
久米アイランドに着きタックルを準備したらイーフビーチを見に行ってからコンビニでオリオンビールと泡盛とおつまみを買って部屋に戻った。
この夜、久米アイランド直営の居酒屋『南島』にて釣りを共にするリョウマとじゅんちゃんが合流し最初の乾杯をした。
リョウマは2年半前に久米島に来た時に一緒に海に出て、これからジギング道を歩んでいく意気込みたっぷりの若者33歳だ。そしてじゅんちゃんはナカの長年の友人で沖縄本島にて日本蕎麦屋を営むとても感じの良い素敵な人だ。
この夜、美味い沖縄料理を楽しみかなり気持ちよく酔っ払い、何故かスナックのような店に立ち寄り、そこで更に泥酔し、最後はコンビニで酒を買って久米アイランドのプールサイドで飲んだのは覚えているがその辺りから記憶が曖昧となり、気づくと翌朝無事にベッドで目を覚ましたのであった。
皆んな宿酔状態でナカ友人のトシヤ船長の船にて宿酔メンバーは沖のパヤオを目指した。
僕とリョウマはどうにかこうにか午前中の内に宿酔からリカバーしたが、ナカとじゅんちゃんは船酔いもあってか結構船中で寝ていた。ナカは特にひどかった。
さて釣果なのだが、この日沖合いは大潮なのになぜか潮が流れず大苦戦。大きなマグロが反応せず、僕はキメジと呼ばれるキハダ幼魚を5匹とイソマグロ幼魚を釣り上げるに終わった。
唯一、トシヤ船長のパラシュート仕掛けに水深180mで30kg弱のキハダがヒット。せっかくなので抱かせてもらったのだが、僕が釣ったわけではないのだ…
ただこの時つくづく思ったのだが、ここのところ一人で雑魚釣りペースのある南紀白浜沖合いへマグロを求めて向かっているのだが、一人でマグロをなんとか船縁に寄せる事が出来たとしても、果たしてそれを船上に取り込む事が出来るのかどうかが最も困難そうなのだ。片手にロッド、片手にギャフで僕は上手くマグロを取れるのか。
銛でもなければ正直難しいと思う。
この夜はナカがアレンジしてくれたイーフビーチ近くの居酒屋にて釣ったマグロを思いっきり楽しんだ。
これまで自分の船では全く感じた事がないのだが、少し酒を飲んだ途端にカラダがフワフワし揺れている感覚に襲われた。確かに海はそれなりに風が強かったのだが泡盛を飲むとあっという間に酔ってしまいカラダがフワフワなのだ。
三半規管が壊れたような感覚である。
到底長居は出来そうにないのでフワフワとなりながら一足先にお店をお暇しホテルに戻った。
ホテルに戻る途中にぶらり立ち寄ったイーフビーチから見える満月に近いお月様が波打つ海面を一直線に照らし出しとても幻想的であった。
フワフワしながらカラダの中に溜まった灰汁が自然に抜けていくような気がした。
「本当に来て良かった…」
浜辺でふとそう思った。
その翌朝、ナカは万全の態勢であった。どうやら昨夜は完璧に酒を抜いたらしい。
この日はメンバーにタイラさんが合流し沖合いへ船を出した。
僕とリョウマ以外はエサ釣りである。
ジギングチームは一生懸命しゃくるのだが魚は口を使わない。その一方、エサ釣りの面々には魚がヒットするのだ。
ただ一度だけガツンとジグが引ったくられてドラグが鳴り止まない事態が起こった!
咄嗟にトシヤ船長が他の皆んなにタックルを回収するように伝えたのだが、掛かった相手がデカすぎる。どうにか船首まで移動して船長に船を立て直すように頼むも、ラインが出止まらずPEラインが根ズレして痛恨のラインプレイクとなってしまった…
掛かった途端にとても僕のタックルでは戦えない程の引きを感じたのだが、なすすべなく簡単に走り去られた事は大変ショックであった。
やはり久米島の海である。
トシヤ船長曰く、恐らくデカいカンパチかイソマグロだとの話であった。底に近いだけマグロ釣りより遥かに困難極めるファイトなのだ。
この日もオジロバラハタとイソマグロ幼魚とカワハギのみ。残念乍、魚は全くジグに反応せずこの旅の僕の釣りは惨敗に終わった。
トシヤ船長は大きなイソマグロを二本、タイラさんは良型のアカジンを、そしてじゅんちゃんはカワハギをたくさんと皆んな楽しそうに釣り上げていた。リョウマは釣れなくても終始楽しそうであった。
この晩も具志川方面の居酒屋にて釣った魚を捌いてもらい至れり尽くせりの宴となった。
そしてやはり僕はやはりあっという間にフワフワ酔いしホテルに帰ったのであった。
しかし何故かこの夜は深夜過ぎに目が覚めて、お土産にでもなるかと初日に買っておいた泡盛の小瓶を炭酸で割りながら2時間ほど一人部屋で飲んでいた。
チェックアウトの朝、朝食会場にはナカが働いていた。軽く朝食を済ませて少し時間があるのでもう一度ぶらっとイーフビーチに出向き海風を身体に感じてきた。そしてかつて僕の貸したタックルを用いて波止場釣りをしていたという防波堤へ一人足を運んだ。
初めてこの島に訪れてから32年。昔から変わらない島風が心地良かった。
帰路も久米島空港までナカに送ってもらい固い握手を交わして再会を約束した。
僕はまだ満足いく魚を挙げていないのだ。
飛行機から地上に見える小さい小さい久米アイランドを確認し、そこにいるであろうナカとリョウマを思い、はての浜をぼーっと眺めている内にプロペラ機は那覇へ辿り着いた。
今回トランジットに4時間ほど間があったのでモノレールを乗って焼けてしまった首里城を観に行ったのだが、本殿の殆どが無くなってしまっており残念な限りであった。
そして今、僕は関西空港への機上でコレを書いている。
楽しみはいつでもあっという間に過ぎてしまう。今回もナカを筆頭に仲良くしてくれた皆んなに心から感謝している。
新型コロナの影響でアジアへのバックパック旅が出来なくなったこの現況下、もう少し頻繁に釣り道具を持って久米島入りしようかと今、真剣に考えている。
忘れてはならない。僕はまだ自身に課した目標を達成していないのだ。
また来るぞ!すぐまた来るぞ!
久米島万歳!