ノロウイルスの性質
ノロウイルス感染症に関する質問の書き込みがあったので、臨床検査技師として、分かる範囲でお答えします。
年末が、ノロウイルス伝播のピークになることが予想されています。
ノロウイルスは、経口感染で、感染力が強いのと、二次感染を惹き起こして伝播が拡大します。
そして、口から腸に達して、小腸で一気に増殖します。
感染して発症するまでを、潜伏期間といいますが、およそ1日か2日です。
主な症状は、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢、発熱はそれほど高くないようです。
こんな症状が2日~3日続いて、多くは後遺症もなく治っていきます。
感染しても発病しない人もいますし、風邪のような症状で済んでしまう人もいます。
しかし、幼児、高齢者、体力の衰えている人、免疫力の低くなった病人、病気に対する抵抗力のない人などは、重症化する危険があります。
怖いのは、発病による脱水症状です。単に水分がなくなるだけでなく、代謝に不可欠なナトリウムやカリウムなどの電解質が、嘔吐によって摂取できなくなったり、下痢によって、吸収を阻まれて不足してくることによって、危険な状態になることです。
「やられた」と思ったら、かかりつけの医師に電話するなり、近くの病院に電話を入れて、できるだけ早く医師の診察を受け、対症療法の、電解質の入った輸液、いわゆる点滴を受けることがいいと思います。
また、ノロウイルスに有効な抗ウイルス剤などはありません。
ノロウイルスによる発病かどうかは、遺伝学的な検査法で確める方法はありますが、保険の対象ではなく、自己負担でおよそ1万8千円くらいかかります。
多くは、検査の結果がでるまでに治ってしまいます。
感染防止の対策は?
どこの何から感染するのか? 「牡蠣による食中毒」と教わってきましたが、毎年発生するノロウイルスによる食中毒は、牡蠣が原因と特定されたのは僅か15%くらいで、必ずしも、すべてが牡蠣や二枚貝からの感染ではありません。
いったん伝播が拡大しますと、その感染ルートは多様化してきます。
とくに多いのは、人から人への感染です。
中でも多いのは、発病者が吐いた、いわゆる吐瀉物の処理が不完全で、乾燥した吐瀉物が乾燥して、ウイルスと一緒に舞い上がり、人の口に達することによる感染です。
なにしろ吐瀉物は、十二指腸などで増殖したウイルスが、嘔吐で胃に入り込み、さらに吐き出されるから、ウイルスは、とてつもなく満載状態になっています。
赤ちゃんの糞便やオムツの処理も同様、ウイルスの塊り、と思ってもいいほどです。
これらは、塩素系家庭消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)の原液に15分以上浸して殺菌する必要があります。
始末するにも、デスポザブルの手袋を使いましょう。使った手袋などは、まとめてビニール袋に入れて、焼却処分など、完全に処分しましょう。
ドアのノブヤや取っ手などは、50~70%のプロパノールなどが有効とされています。
生ものを調理した包丁や俎板などは、200倍に希釈した、塩素系家庭消毒液に浸け置きしたり、この液で床を拭いたり、また、糞便などは40倍希釈液に浸けてから始末します。
生野菜は、流水で注ぎ洗いをし、食品はできるだけ、加熱処理したものをたべるよう気をつけましょう。
こうして、他への伝播と連鎖を止めることです。
ウガイと手洗い励行
外出から帰宅したら、家族と接触する前に、入念なウガイと、石鹸液などで、少なくとも3分以上は指先、手のひらや甲、手首などをこすり、蛇口の流水で、洗い流すことです。
電車のつり革、エスカレーターの手すり、紙幣や硬貨、この時期は、至るところにウイルスが付着していると考えた方がいいです。
ですから、食事前には必ず、もう一度、手洗いをする習慣をつけましょう。
このウイルスは消毒用アルコールには強い抵抗力があって、効き目はありません。
消毒用ペーパータオルなども同様、効果はありません。
熱湯消毒は、85℃で1分以上加熱すれば、完全に死滅します。
症状がなくなって、完全に治ったと思っても発病して1週間や10日は、糞便にウイルスがで続けます。
詳しくは、市区町村の役所・役場の衛生課や、所轄の保健所に尋ねると、教えてくれます。
健康で、元気に新しい年を迎えたいと思います。