ノロウイルス、何度でも罹患
はしかや天然痘などは、一度罹患すると、体内に免疫ができて、二度と罹らない仕組みができるのですが、ノロウイルス感染症の場合はどうなのか?といった質問のメール等、いくつか寄せられていますので、お答えしてみます。
質問の一つは、生牡蠣や二枚貝などを食べていないのに、なぜ罹るのか?
いま、もっとも凄い勢いで感染が拡大しているのは、直接生牡蠣など二枚貝によるものではなく、患者が嘔吐した、吐瀉物の始末といいますか、処理が不完全・不適切なために、床や絨毯にへばりついた吐瀉物、これには天文学的な数のウイルスが混じっていて、これが乾燥して埃状態になって一緒に舞い上がり、それが人の口に入り、腸に行って一気に増殖し、発症します。
吐物は、腸から胃に逆流して、吐きだされるので、大量のウイルスが付着しています。
赤ちゃんの糞便も、病人のオムツも、ウイルスの巣である腸管を通ってくるので、吐物と同様です。
もう一つの質問は、ノロウイルス感染症の免疫に関することです。
充分な免疫ができるためには、抗体が作られなくてはなりません。その抗体を作るためには、充分な抗原(細菌やウイルス)が必要になります。
ノロウイルスに感染すると、腸管内で免疫グロブリン、IgAという蛋白が作られます。
しかし、ノロウイルス感染症は、ノロウイルスが数個か10個程度で感染し発症するといわれていますので、充分な抗体(IgA)を作るだけの抗原が不足して、抗体も僅かしか作られません。
そのために、免疫を獲得することができないので、理論的には、何度でも罹患することになります。
もう一つの質問はワクチンはなぜできないのか?です。
ワクチンを大量に作るには、ノロウイルスをたくさん増殖しなくてはなりませんが、プラントで大量に増殖する方法が、残念ながら、まだ確立していないのが現状です。
いま、この連鎖的感染を食い止めないと、大変な新年を迎えることになりそうです。
医療関係者、とくに感染防御の専門家である、臨床検査技師の方々、現役であろうとOB・OGであろうと、あらゆる方法・手段を駆使して、感染防御の啓発に努めて頂きたいと思います。