道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

組織のワクチン

2021年03月05日 | 随想
菅総理の子息が勤務する東北新社やNTTから、幹部が度々過分の接待を受けていた総務省で、情報をリークした人物探しが苛烈かつ急だという。

もし総務省内部にこれをリークした人物がいたのなら、その人は馴れ合いや癒着など、組織を蝕む腐蝕菌に対するワクチンのような働きで、組織の自浄作用(免疫)を促す存在である。

安定した権力をもつ組織というものは、腐蝕菌に汚染されることが避けられない。人体同様、ワクチンで免疫(自浄作用)を保持しなければ、いつか発病する。

そのような存在を裏切り者とばかり探し出して処断しようと躍起になるのは、天に唾する行為と言わねばならない。彼は現代の義人として、国民の大多数から賞賛されてしかるべきである。匿名のX氏のままで居なければ、間違いなく排除されてしまうだろう。内部告発者の居る組織は、自ずと浄化作用が保たれ退廃を免れるに違いない。

日本国民が官僚組織を監視するには、国会議員を通じて議会で質問するか、メディアの報道のどちらかの間接的手段しかない。中央官僚の挙動は、二重三重のカーテンに覆われ、国民の耳目に触れないよう遮蔽されている。この様な鉄壁の閉鎖集団である官僚組織内にあって、国民が不利を被る不法または不徳義な行為を指弾し外部に通報する告発者とか漏洩者とかは、タックスぺイヤーたる国民から見れば貴重な存在であり、彼とその家族は国民が結束して保護して然るべきだ。

動機は何であれ、国民に隠されていた役所の不都合な事実を、明るみに出したことの重みは大きい。彼は本来国民の前に透明であるべき役所の隠したい事実を、我が身の不利を顧みず明るみに出した。役所の上司や多年勤務を共にしてきた同僚の不祥事を告発するのは、どれほど心理的な葛藤があったものか、想像するに余りある。

内部告発者は、本来組織内のワクチンとして、本当はその組織自体が存在を容認しなければならない筈のものである。彼らの存在を想像することが、綱紀粛正に繋がる。真に民主的な組織とは、そのようなものだろう。

官僚組織の不適切な隠蔽行為は、国民への裏切りすなわち背信行為に当たる。法に触れる触れないではなく、国民に公開できないことが大問題である。
勿論役所には、国益の観点から守秘されなければならない事柄は多い。しかし本来公開すべきものを隠蔽または秘匿するのは公務員として許されない。

彼がリークしなければ決して表に出なかったに違いない事実の重みは、その内容に応じて評価されなければならない。私たちは、公務員の守秘義務違反と国民の知る権利の重要さとを量りにかけて、個々の事案を判断することが大切である。今回のリーク者の行為による国家の損害は無く、社会的害悪性は皆無である。国民の知る権利を奪う事こそが、社会的害悪である。

彼の行為がなければ、国民にこの情報は届かなかったのだから、凡ゆる批判は無視されて良いと思う。かつての同輩からの誹謗中傷は、発した者たちにそっくり返還されなければならない。このような内部告発者に対する国民の擁護・支持が強固にならなければ、官僚組織の自浄作用など、いつまで経っても絵に描いた餅である。それは民主国家ではない。


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