道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

ウコギ飯

2021年03月22日 | 旅・行楽
257号線は、当地を起点に奥三河、奥美濃を経て高山市荘川町を終点とする一般国道である。荘川は分水嶺の彼方日本海側に在り、富山県を流れる一級河川庄川の源流部に当たる。

この季節257号線はコブシ、モクレン、ミヤマツツジ、サクラ、シダレザクラ、ハナモモなどの一連の樹花が咲き競い、花街道の様相を呈する。今回は分水嶺のひるがの高原までは行かず折り返す片道200kmのドライブらしい。

奥三河の準平原地形の牧歌的景観を楽しみながら稲武町を過ぎ、恵那市から中津川市に入ると風景が一転する。錯綜する断層に刻まれ永い侵食で均されたなだらかな丘陵と清流から成る独特の地形、波打つ丘の稜部を伝う道路は、常に平野を見ている目には新鮮だ。幾度か登った恵那山も見えている。
木曽川の峡谷を渡ると、裏木曽街道に入り、直線状の付知川に沿った道(というより旧河床に造られた道)を走る。

整然と幹を連ねる植林地の針葉樹林と芽吹きを控えた広葉樹林、そして土起こしを待つ田畑が走馬灯のように車窓の後ろに遠ざかる。
民家の陰や土蔵の脇から次々とコブシやモクレンなどの樹花が現れる。山国では、ウメとサクラは花期が重なるようだ。中でもシダレザクラとシダレウメ、ミヤマツツジは目を惹く。

休憩を兼ねて農産物の販売所に停車した。そこでパックに入ったウコギの新芽を見つけた。野生のものを見たこともなく、植栽してもいない山菜で、賞味する機会はこれまで最も少ない。やれ嬉しやと真っ先に買う。

渓流釣りや山歩きをしていた時分は、山菜をよく採った。成人してから知った野趣ある味覚に熱中し、ひと通りの山菜を食べてみたが、本当に美味しいと感じたのは10種に満たない。あとは食べることはできるというレベルだった。当方が野菜嫌いのせいもあるだろう。

翌日の夕食は、酒肴のしめをウコギ飯にしてもらう。鮮やかな緑のウコギが混じるウコギ飯を口にすると、セリ目の山菜に共通する独特の香りが口中から鼻腔に抜ける。そういえば、今年は例年になくいまだに好物のウドやタラノメ、コシアブラ、タカノツメなどウコギ科の山菜を食べていない。それだけ遠出をしていなかったということだ。
登山のついでに、コシアブラの木に登ったり崖際のタラノメを苦心惨憺採取したことが昨日のことのように思い出される。採取癖がむやみに旺盛な年頃だった。
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