道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

陳腐化のスピードアップ

2021年12月04日 | 人文考察
デジタル技術の発達により、生産技術が飛躍的に進化している。モノを製造する技術は、設計技術(ナニを作るか)と生産技術(ドノ方法で作るか)で成り立っているが、設計どおりにモノをつくるには、生産技術の水準が高くなければならない。
生産技術の確立とノウハウの蓄積には、従来長い経験を必要としたが、工程のIT化により、その期間は短縮化され、今やどんなモノでも自在につくることが出来る時代になった。

模倣と盗用が国策かと思われる某国は、現代ではまさに生産技術大国である。設計技術では心許なくても、生産技術で何とかそれを補い、製品輸出を拡大してきた。かつて生産技術が稚拙だった時代の粗雑な外観や脆弱な機能の製品は姿を消し、今やホンモノ、いやそれ以上のハイエンド製品を大量に作り出すことができるまでになった。まさに世界の生産工場の面目躍如というところである。

著作権の対象とならない生産技術には、盗用という概念はない。模倣は学習に通じ、生産技術を真似ることに忸怩たる思いは感じない。そもそも生産技術の確立とは、試行と模倣に始まるものである。その成果は習熟である。習熟の差が品質に表れる。
ノウハウは、盗用と学習との境界が判然としないところのものだから、過去数十年の間にノウハウを蓄積した成果が、彼の国の製造工業の今日の隆昌をもたらした。

どれだけの日本企業が現地に進出し、自ら営々と築いた生産技術やノウハウを移転し続けて来たことだろう。自社の生産コストを下げる目的の現地生産が、結果的に現地に生産技術とノウハウを移転する結果になるのは当然である。

彼の国が高い品質の製品を生産できるようになった今、我が国が苦境に陥った製品分野のいかに多いことか。製品製造に伴うコストダウンの圧力が、いかに強いものであるかを知ると慄然とする。それが我が身を滅ぼす原因と承知していても止められない。彼の国もその轍を踏むのは避けられないのだが・・・

我が国や欧米諸国が高度な設計技術で新製品を開発しても、瞬く間に同等品以上のモノを低価格で作り上げる技術を彼らが供えている時代は、これからも続くだろう。

軍事技術・兵器開発はその最たるもので、彼の国はそれらの技術移転には、人材・資金など持てる資源を可能な限り投入する。手段を選ばない諜報活動による技術盗用など、コンプライアンスを無視して米国の怒りを買っても、聊かも省みることはない。
独裁政権というものは、党が推進する政策は全て正義と見做され、誰も批判できない。民主的な国々から見ると甚だ穏当を欠くことが頻発する。

世界は、兵器をはじめ、通信、製造、創薬等々、社会のあらゆる生産分野で、製品の陳腐化のスピードが速くなる一方だ。陳腐化に加速度がついているのではないかと思うほどである。陳腐化を速めている最大の要因が、ITによる卓越した生産技術と、その支援を受けて生産性を高めた製造技術である。

速まる一方のモノの陳腐化は、相対的にヒトの陳腐化も速める。欧米でも日本でも、入社した会社で定年を迎える人が減っているらしい。資本だけが、陳腐化することなく、アメーバのように離合集散を繰り返し、大きさや形を変え、46時中休むことなくに世界中を駆け廻っている。








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