人間というものは我儘なものだ。夏の盛りには猛暑に辟易して1日も早く秋が訪れて欲しいと願っていたのに、いざ涼風が立って夜半に虫の音を聴くようになると、夏のほてりがほのかに残る海辺なんぞに、再び行きたくなる。
旅は前々から周到に計画準備されたものより、思い立って俄かに実行する方が、未知や意外性との遭遇があって楽しい。そういう旅は真っ平御免と毛嫌いする人たちも居て、総じて律儀で几帳面な人に多い。偶然に賭けてみる潔さ、別の言葉で言えば無作為に済ますということができない。自己保存欲求の命ずるままに、計算し尽くして、最善の道を歩もうとする習性が身についている。しかし、運命は計画をいつも裏切るものである。人知には限界があって、運を超える知というものはない。
この世は、現実に即応して生きるという生活態度を、身につけなければ渡れる筈もない。禍福は糾える縄の如しと言う。予想外、想定外の不幸・不運に直面したら、可能な限り手を尽くして善処するしかない。善処かどうかは、結果が審判を下す。妙な作為は結果を良い方向に導きはしない。
姑息な作為を慎んで、天命に委ねる潔さは、人である以上どうしても備えて置かなければならない。運命の女神は、保身に汲々とする者よりも、潔く運に任せる者に微笑むようだ。
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