大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

VW、賃上げで労組と合意

2013年05月28日 | 日記

 ロイターによれば、VWは賃金を今年(2013年)の9月に3.4%、来年(2014年)7月にさらに2.2%上げることでIGメタル(金属産業労組)と合意した。金属産業に属する他の企業も、およそ同等水準の賃上げが決まっている。ちなみに現在、ドイツのインフレ率は1.2%。 


債券危機は来るのか?

2013年05月24日 | 日記

 ここ1年ほどの国債金利の推移 出典:財務省「国債金利情報」より作成

 欧米メディアに、日本で債券危機(金利上昇による経済危機)がおこることを危惧する記事が増えている。

 債券危機の原因としてよく、つぎの2つが指摘されている。ひとつは、国内の機関投資家がリスク回避のため、債券の売りを強めているというものである。景気回復や物価上昇への期待が高まれば、当然、それにみあった長期金利の上昇(債券価格の下落)が見込まれる。長期金利の上昇(債券価格の下落)による将来の損失を避けるため、国内投資家が保有する長期国債の縮小にむかうのは自然の流れと言わなければならない。日銀は、異次元緩和で国債の買い入れを増やせば、長期金利は低く抑えることができるとたかをくくっていたようにみえるが、どうもその見込みははずれそうだ。欧米メディアでは、日銀はこれから長期金利(と物価)に対するコントロールを失うだろうと予測するものが少なくない。

 もうひとつは、国内投資家が国内外(とくに日米)の景気回復への確信を強め、国債を売ってリスクの高い株式や海外債券へ乗り換える動きが強まっているというものである。日銀の異次元金融緩和は、株高という大きな利益をもたらしたが、それがかえって国債売り(長期金利上昇)の原因になっているというのはなんとも皮肉である。

 そして一部の欧米メディアは、日銀の異次元緩和は、実体経済を回復させる前に、長期金利を上昇させ、それによって投資抑制(景気後退)が引き起こされる可能性を指摘している。それに物価上昇が加わり、スタグフレーション(景気後退下での物価上昇)が引き起こされると予測するものもある。

 1日後いまより円安になるか円高になるかという予想さえ、6割以上の確率であてられる人はいないのだから(いればすぐ億万長者になれるだろう)、私は未来予測はすべてまゆにつばをつけて見るべきものだと思っている。ただ、その国のことは、外から見た方がよくわかるというのはよくあることで、日本のバブル期に、それをバブルだと警鐘を鳴らすことができたのは欧米のメディアだけだったし、アメリカの金融バブルを早くから指摘していたのは日本など(アメリカにとっての)海外メディアだったことは覚えておく必要があるだろう。

(参考)

 普通国債発行残高および国債金利の長期時系列グラフ


安倍首相が、ヘイトスピーチを非難

2013年05月07日 | 日記

 安倍首相が、インターネット上や路上でおこなわれるヘイト発言を非難するコメントをおこなった。

 読売新聞や日経新聞によると、7日の国会審議で、安倍首相は「一部の国、民族を排除しようという言動があることは極めて残念だ。誹謗中傷することで我々が優れているという認識を持つことは間違っているし、結果として自分たちを辱めている」と非難した。

 もちろん、現状を憂いて自らなされた発言ではなく、質問されたから出てきた答えではあろう。残念という言い方も、よく考えると強い言い方とはいえない。しかし、それでも、首相が公的にヘイトスピーチを非難したことの意味は小さくないと思う。

 安倍首相には、この答弁でおわることなく、ヘイトスピーチが拡大しないよう、これ以降もヘイトを許さないという自らの立場の表明を続けていって欲しい。

 

 

 WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)による「ヘイトスピーチが日本で台頭」の記事 (日本語)

 

 'Anti-Korean Voices Grow in Japan' by WSJ (English)


アメリカ政府が日本の核燃料再処理工場操業を懸念

2013年05月04日 | 日記

 5月1日付のWSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)は、オバマ政権の反対にもかかわらず、日本政府が核燃料再処理工場(六ケ所村)の操業を準備していることに、アメリカ政府が懸念を示していると報じた。これを読んだときは、すぐ日本のメディアでも広く紹介されると思っていたが、どうもそうではないようなので、ここで紹介する。

 

 アメリカ政府は、日本が核燃料再処理工場の操業にむけ準備を進めていることに懸念を示している。北アジア(中国、韓国、台湾)や中東で核技術、ひいては核兵器の広範な開発競争を招く可能性があると懸念しているからである。

 六ケ所村の再処理工場は、年に約9トンのプルトニウムを生産することが可能で、これにより2,000発の核爆弾の製造が可能になる。日本政府は、プルトニウムを発電(MOX)に使用するとしているが、原発の稼働数減少などもあり、(使いきれずに余った大量の)プルトニウムを保管する必要が出てくるものと見られている。オバマ政権は、「日本がプルトニウムの利用計画に関する明確な展望のないまま大量のプルトニウムを保有することを許してしまえば、その他の世界に対して悪しき前例を作ることになる」と、この数週間、日本政府に懸念を伝えている。

 (核兵器を持たない国で、大規模な核燃料再処理工場を保有しているのはいまのところ日本だけだが:引用者の補足)、韓国はアメリカに対して、同様の施設の建設を求めており、六ケ所村の操業開始は、そうしたプレッシャーを高めることになる。また、中国はすでに数千発の核弾頭を所有しているが、日本が大量のプルトニウムを保有することになれば、中国も核兵器に転用可能な核分裂物質の生産能力拡大に動く公算が大きいとみられる。

 なお日本は、 この核燃料再処理工場の建設のため、これまでに210億ドル(約2兆円)を投じている。(以上)

 

「日本の核燃料再処理工場の稼働、米国などが懸念」 (By WSJ 日本語)