大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

米小売2位のターゲット、最低賃金を1650円に引き上げ

2017年09月29日 | 日記

 2017年9月26日のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、米小売2位のターゲット(従業員30万人)は、2017年10月から全従業員の最低賃金を11ドル(1200円:1ドル=110円)に、3年以内にそれを15ドル(1650円)に引き上げると発表した。

 ターゲットは、とくに繁忙期に雇用する一時雇用の従業員にも最低賃金を適用するとしている。

 ちなみに米小売1位のウォルマートは2016年に最低賃金を10ドル(1100円)に引き上げている。

 ほかにも2015年にはGapが最低賃金を10ドル(1100円)に、2016年にはコストコが最低賃金を13ドル(1400円)に引き上げるなど大手小売りで最低賃金を引き上げる動きが続いている。

 背景には、(1)アメリカではニューヨーク州など州レベルで最低賃金を15ドルに引きあげる動きが強まっていること、(2)小売業で人手不足や離職が深刻化している、などの事情がある。


アメリカの減税案が明らかになった: 法人税の20%への引き下げなど

2017年09月27日 | 日記

 2017年9月27日(水)、懸案となっていた税制改革の内容が明らかになった。

 取り急ぎ、おもだった内容をまとめておく(詳しい分析はまた後日おこないたい)。

 基本的に以前に発表された内容と大きく変わっていない印象を受ける。

 <企業>

1 法人税をいまの35%から20%に引き下げる<以前は15%とされていたが、代わりの財源がないため20%に変更>

2 大企業との公平を期すため個人あるいは複数人が所有する非株式会社の税率を25%に引き下げる<以前は15%とされていたが、25%に変更された>

 これについてニューヨーク・タイムズ(NYT)は、トランプ氏など富裕者は節税のため個人商会を立ち上げ、収入を事業収入として申告するようになると警告している。

3 設備投資を初年度に全額減価償却できる仕組みを最低5年間おこなう。

4 米企業の海外利益への課税を廃止する。

<個人>

1 不動産相続税の廃止。現在、アメリカでは夫婦の場合1.1千万ドル(約12億円:1ドル=110円)を超える不動産の相続にのみ相続税がかかっている。税金を払うのは年5千人ほどとされている。これを廃止する<以前のまま、変更なし>

  NYTは、3千億円相当の不動産を所有するトランプ氏の場合、子への相続で40%の相続税がなくなることで、12億ドル(1300億円)の節税になると試算している。

2 富裕者への課税最低額(alternative minimum tax)の設定を廃止する。アメリカには多種多様な税控除の仕組みが存在する。富裕者は、この仕組みを利用して可能な限り納税額を少なくしようとしている(トランプ氏が、慣例にそむいて納税額を公表しないのは、この仕組みで大きな節税をしているからではないかと言われている)。

 アメリカではこうしたことへの歯止めとして、どれだけ税控除をしても所得に応じて納めなければならない課税最低額が決められている。これが廃止される。<以前のまま、変更なし>

 ちなみに先日リークされた2005年のトランプ氏の納税書をみると、この年、トランプ氏は3130万ドル(約35億円)の課税最低額を支払っており、納税額の80%をしめている。現在案がとおると、これが支払い不要となる。

3 所得税の最高税率を39.6%から35%に引き下げる。また現在、7種類ある税率を、12、25、35%の3種類に簡素化する。ここでようやく少し中間層の話がでてくる。<以前は、10、25、35%とされていた。ちなみに現在の最低税率は10%。>

4 夫婦の基本控除額(=所得税の計算から除外できる額)を現在の2倍の2万4千ドル(260万円)に、独身者のそれを1万2千ドル(130万円)に引き上げる<以前のまま、変更なし>

5  州税の控除を廃止する。現在、アメリカでは州税を収入から控除したうえで連邦所得税の計算がおこなわれている。この控除を廃止する。ウォール・ストリート・ジャーナルは、これにより10年で1兆ドル(110兆円)の税収増(増税)が見込めるとしている。

 これで大きな影響を受けるのがカリフォルニア、ニューヨーク、マサチューセッツなど州税の高い(住民サービスが高い)ところに住み、高い税率を適用されている富裕層。こうしたところは民主党が強いところであり、州税の控除廃止は政略的な意味がきわめて強い。

6 子供がいる場合、千ドル(12万円)の税額控除(確定した税金から差し引ける金額)をおこなう。税金が千ドルに達しない場合、差額を支給する。子供以外の扶養者については、500ドルの税額控除をおこなう。こちらは、税金が500ドル以下でも差額を支給することはしない。

 基本的に企業と富裕層重視の減税案であるという点は、以前の案と変わっていない。

 トランプ大統領はこれをミドルクラスのための減税とアピールしているが、額面どおり受け止めている人は少ないだろう。

 今後どのように詳細がつめられ、あるいは修正されていくか見守っていきたい。

    2017年9月30日加筆修正


アラバマ州の上院予備選挙で、保守強硬派のモア氏が当選

2017年09月27日 | 日記

 2017年9月26日(火)、米アラバマ州で次期の上院議員候補をえらぶ共和党の選挙(予備選挙)がおこなわれ、保守強硬派のモア氏が当選した。

 共和党の主流派とトランプ大統領は現職のストレンジ氏を支持していたが及ばなかった。

 当選したモア氏は、先にホワイトハウスを去ったバノン氏の応援を受けている。

 アラバマ州は共和党員が圧倒的に多いため、次回の選挙でモア氏が上院議員に選出されるのは確実とみられている。

 アメリカは州により大きく政治風土が異なるため、共和党も民主党も党内にさまざまな考え方をもった議員を抱えている。

 とくに共和党では近年、保守強硬派が大きな力をもつようになったため党内で政策合意をおこなうのが非常に難しくなってきている。

 モア氏の当選はそうした状況をさらに悪化させそう。


コリンズ上院議員がオバマケア改廃案への反対を表明: 過半数の賛成を得る見込みなくなる?

2017年09月26日 | 日記

   米上院共和党は今月中に、オバマケア改廃案を成立させようとしている。

 上院の定数は100人で、共和党は52人。共和党から3人の造反者が出ると法案は成立しない。

 これまでケンタッキー州のランド・ポール上院議員(共和党)とアリゾナ州のマケイン上院議員(共和党)が反対を表明している。

 そして2017年9月24日(日)上院共和党は、立場を明確にしていなかったマーカウスキー上院議員(アラスカ州)とコリンズ上院議員(メイン州)の賛成を得るため、アラスカ州とメイン州への連邦政府の拠出額(固定額)をそれぞれ3%、43%引き上げ修正案を公表した。

 しかし9月25日(月)、コリンズ上院議員は法案への反対を表明。米メディアは、法案通過の可能性がさらに低くなったと報じた。

 ちなみに法案反対を最初に表明したポール上院議員(ケンタッキー州)は保守派で、州への拠出額(固定額)をさらに小さくすることを求めている。ただポール議員は、前回のオバマケア改廃案に賛成票を投じており、私個人は氏は最終局面で賛成票を投じる可能性もあるのではと思っている。

 そうなると、鍵となるのはマーカウスキー議員の投票ということになる。

 前回のオバマケア改廃案(スキニー法案)では、マケイン議員、コリンズ議員、マーカウスキー議員3人の反対で、ぎりぎり法案が否決されている。