2016年11月17日(木)、日銀はあらかじめ指定した利回り(価格)で無制限に国債を買い上げる指し値オペをはじめて実施した。
対象は2年債が-0.090%、5年債が-0.04%。
市場では、トランプ氏の大統領当選をうけて債券の利回りが上昇(価格は低下)している。
日銀は指し値オペにより、その水準以上に利回りが上昇すること(価格が低下)することを防ごうとしている。
これができれば国債のいわば固定相場、管理相場が誕生するが、うまくいくだろうか?
問題は、世界中で利回りが上昇するなか、指し値オペだけで日本の新発国債の利回り上昇を果たして止められるかである。
日銀が高い指し値で買い戻してくれるので、ほかの国より低い利回りでも安心して新発国債を買えると考える機関投資家が多ければ利回り上昇は食い止められる。
しかし米国などの債券利回りが大きく上昇するなか、新発国債の低い利回りに魅力を感じない機関投資家が増えれば、新発国債の利回りは上昇せざるをえない。その場合、新発国債と指し値の利回り差は拡大することになる(注)。
年末には日銀が保有する国債の含み損が10兆円を超えるとされているが、新発国債と指し値の利回り差はそのまま日銀の含み損となるので、結果として日銀の含み損がさらに拡大することになる。
指し値オペにより新発国債の利回り上昇を食い止められるかどうか、注意してみていきたい。
(注)
2016年11月15日(火)におこなわれた5年国債(第129回)の入札における利回りは最高が-0.150%、平均が-0.160%(日銀の指し値は-0.04%)。
10月27日(木)におこなわれた2年国債(第370回)の入札における利回りは最高が-0.235%、平均が-0.237%(日銀の指し値は-0.090%)。
今後は11月25日(金)に40年国債、11月29日(火)に2年国債、12月1日(木)に10年国債、12月8日(木)に30年国債、12月13日(火)に5年国債などの入札が予定されており、利回りがどう変化するか注目される。
2016年11月25日(金)追記
40年債の入札結果は、表面利率0.4%に対し応募者利回りは0.725%、発行価格88円90銭(額面100円に対し)だった。
ちなみに前回9月27日(火)におこなわれた40年債の入札では、表面利率0.4%に対し応募者利回りは0.560%、発行価格94円34銭(額面100円に対し)だった。
前回より利回りは上昇(価格は低下)する結果となった。ただ、応募倍率は前回より増え、また入札前の市場利回りを下回ったことから、今回の入札で特段の波乱はみられなかった。