夏風邪を引いて、声がでなくなってしまった。さすがに授業は無理なので、木曜と金曜の授業は休講にせざるをえなかった。
心配していただいたみなさんに、ここでお礼とお詫び申し上げます。
連邦準備制度理事会(FRB)は、インフレ率が2.5%を超えない限り、完全失業率が6.5%になるまで現在のゼロ金利政策を続けるとしている。失業率の推移を見る限り、ゼロ金利政策はまだしばらくの間、続きそうだ。
問題は、量的金融緩和がいつ縮小に向かうかである。現在、連銀は毎月850億ドル(約8.5兆円)の国債、住宅ローン担保証券(mortgage-backed securitie)の買い入れをおこなっている。一部には、今年末(2013年末)には失業率が7%まで低下し、それとともに量的緩和の見直しがおこなわれるとする見方が存在している(Forbesの記事)。
ここで気になるのはバーナンキFRB議長の発言である。5月22日の議会証言(量的緩和見直しの可能性に言及し、直後に日本株の最初の暴落がおこった)において、バーナンキ議長は、完全失業率だけでなく不完全就業(underemployment)の多さに関心を寄せていると語っている。不完全就業者とは、希望する仕事に就けていない労働者のことを言うが、バーナンキ議長はここではとくにフルタイムを希望しながらパートで働くことを余儀なくされている労働者を念頭においている(CNNの記事)。
現在、アメリカでは約800万人がフルタイムの仕事を希望しながらパートの仕事に就いている。これは、これまでアメリカが経験したことのない高い水準である(下図)。
単位:千人
ちなみに、このうち約500万人は①仕事不足や会社の業績悪化などからパート(週34時間以下)で働くことを余議なくされており、約300万人は②フルタイムの仕事が見つからないのでパートの仕事を余儀なくされている。どちらの人数も、これまでのどのリセッションにもなかった高い水準となっているが、とくに気になるのが後者(②)である。
どういうことかというと、仕事不足や会社の業績悪化などから労働時間が短くなっている労働者数(①)は、高い水準とはいえ2009年半ばから減少を続けている(下図)。
しかし、フルタイムの仕事がみつからないためやむを得ずパートをしている労働者(②)は、リーマンショック後、減ることなくおだやかに増加を続けている(下図)。昨年、アメリカに滞在したとき、仕事はあるけどパートばかりという「愚痴」を多くの人から聞いたが、このデータは現地での実感によく合致している。
バーナンキ議長がこのあたりのデータを気にしているのは明らかである。完全失業率はおだやかに低下を続けているが、上でみたように不完全就業者数はかなり高い水準にとどまっている。来年の任期満了を前にして(再任は希望していないとの報道が多い)、バーナンキ議長がどう判断するか注目される。
(参考) アメリカの雇用データ