大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

トルコ、リラ貯金の源泉徴収税を引き下げ

2018年08月31日 | 日記

 上は、デノミ前の25万トルコ・リラ紙幣(1993年、イスタンブールにて撮影)。

 

 フィナンシャル・タイムズによれば、2018年8月31日(金)、トルコ政府はリラ安をくいとめるため、リラ貯金の利子にかかる税を引き下げ外貨貯金の利子にかかる税を引き上げることを決定した。

 同紙によると、1年以上のリラ貯金の利子への課税は10%から0%に、逆に1年未満の外貨貯金の利子への課税は15%から16%に引き上げられる。

 

 トルコは1980年代、積極的な公共投資により高い経済成長をとげた。

 また当時の政府は、農作物への補助金投入寛大な年金政策などで有権者からの高い支持をえていた。

 しかしその結果、外貨建て債務が増加し、通貨危機を招来。1993年から2004年までIMFから金融支援を受けることになった(ちなみにエルドアン氏が首相としてトルコ政府を率いるようになったのは2003年)。

 上の写真は、通貨安、高インフレの中、流通していた旧リラ紙幣。


アルゼンチン通貨ペソが、ふたたび急落

2018年08月30日 | 日記

 アルゼンチン・ペソがふたたび急落している。

 フィナンシャル・タイムズによれば、2018年8月29日(水)、アルゼンチン通貨ペソは対ドルで7.9%急落した。

 FT紙によれば、アルゼンチン中銀は8月初旬、政策金利を5%上げて45%にしたが、アルゼンチン政府がIMFに対して予定より早く金融支援するよう要請をしたとの報道やトルコ・リラ下落を受け水曜日に急落することになった。

 同紙によれば、アルゼンチンは来年末までに500億ドル(5.5兆円:1ドル=110円)の負債の償還があるとされる。

 新興国通貨の動揺がどのように収束するかしばらく注視していきたい。

追記

  2018年8月30日(木)、アルゼンチン中銀は政策金利を15%引き上げ60%にした

  また同日、トルコ中銀の副総裁が辞任。後任人事を通じて中銀に対するエルドアン大統領の影響が強まるとの懸念が高まっている。

 

関連ブログ

IMF、アルゼンチンに500億ドル(5.5兆円)の融資枠を設定(2018/6/8)

アルゼンチン、IMFに信用供与求める(2018/5/9)

アルゼンチン、政策金利を40%に引き上げ(2018/5/5)


トルコリラ、再び下落: ドイツが金融支援を検討

2018年08月29日 | 日記

 トルコリラがふたたび下落している。

 フィナンシャル・タイムズ(2018/8/29)によれば、きっかけはムーディーズが外貨建て負債への大きな依存を理由にトルコの20金融機関の格付けを引き下げたこと。

 同紙によれば、今後1年以内に借り換えが必要なトルコの外貨建て負債は770億ドル(8.5兆円:1ドル=110円)にのぼる。リラ下落により、借り換えコストが大幅に増加しており、借り換えがスムーズに進むか注目される。

 9月13日にトルコ中銀の会合が予定されているが、リラ下落を食い止めるため利上げがなされるかどうかについても注目される(FT紙は、利上げされない可能性が高く、そのため危機の終息がいつまでたってもみえてこないとしている)。

 ちなみにウォール・ストリート・ジャーナルは、ドイツが金融危機をさけるためトルコへの金融支援を検討していると報じている。ただその場合、IMFの参加や財政の緊縮などが条件となる見込みで、いまのところ反緊縮を貫くエルドガン大統領の合意を得られる可能性は小さいのではないかと思われる。


アメリカとメキシコ、NAFTA(北米自由貿易協定)の修正について暫定合意

2018年08月28日 | 日記

 2018年8月27日(月)、アメリカとメキシコはNAFTA(北米自由貿易協定)の修正について暫定合意に達した。

 日本でも大きく報じられているが、報じられていないこともあり備忘録をかねてここに合意内容をまとめておく。

 オートモーティブ・ニュースによると、おもな内容は以下の通り。

1)今回の合意は、3国間協定(NAFTA)ではなくアメリカとメキシコの間の2国間協定である。

2)カナダには、今回の合意に参加することをうながす(今週金曜がめど)。もし参加しないなら、カナダとは別個の2国間協定の締結をめざす。

3)自動車輸出が無関税となる条件を、従来の域内の内製率62.5%から75%に引き上げる

4)自動車輸出が無関税となる条件としてあらたに、時給16ドル(1,800円:1ドル=110円)以上の地域で作られた部品が40-45%を占めなければならないとする。これは実質的にアメリカ(カナダ)の部品の使用率を40-45%にすることを求めるものである。

5)自動車輸出が無関税となる条件としてあらたに、一定比率の北米産の鉄鋼、アルミの使用を求める。

6)上記の条件を満たせない場合既設工場からの輸出にはアメリカの最恵国待遇の2.5%の関税を課す。今後建設される新工場からの輸出には20-25%の関税を課す予定。

7)6年ごとに内容を見直す(最長16年間)。

8) 安全保障上の理由から、メキシコから年240万台を超える完成車の輸出、年900億ドル(10兆円)を超える部品輸出に対し25%の関税を課す。ちなみに2017年のメキシコからアメリカへの輸出は180万台。 (オートモーティブ・ニュースの続報より追記)

 なお、米憲法では、関税の徴収、外国との通商の規制についての決定権限は議会にあるため、それらの新設、改訂には議会の承認が必要。大統領は、議会からの委任をうけて外国との通商協定の改定交渉などをおこなうことができるが、あくまで議会からの委任が前提となっている。

 この点について、ニューヨーク・タイムズは、トランプ大統領が交渉権限を与えられているのはあくまで3国間協定のNAFTAであるとしたうえで、もしカナダが参加せず2国間協定となった場合、法的な問題が生じる可能性があるとしている(議会の委任を受けていない2国間交渉をおこなっているという問題)。

 

関連ブログ

NAFTA再交渉で米、自動車メーカーに15ドルの最低賃金を求める(2018/3/31)


アメリカの家計負債が過去最高に

2018年08月17日 | 日記

 2018年8月14日、ニューヨーク連銀は2018年第2四半期の家計負債についてのレポートを公表した。

  同レポートによれば、2018年第2四半期の家計の総負債は13.3兆ドル(約1,470兆円:1ドル=110円)。これまでのピークだった2008年第3四半期の12.7兆ドル(1,400兆円)を上回り過去最高となった。

 内訳は、住宅ローンが9兆ドル(1,000兆円)、学生ローンが1.41兆ドル(160兆円)、自動車ローンが1.24兆ドル(140兆円)、カードローンが0.83兆ドル(90兆円)。学生ローン以外は、前期比で増加している。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、金融緩和の縮小(テーパリング)をうけて各種金利は上昇基調にある。

 たとえば住宅ローンの30年固定金利は、2013年に3.4%だったのが現在は4.6%に上昇。

 消費者ローンやカード・ローンの金利は、過去10年間の多くは3.25%だったのが、現在は5%に上昇している。

 しかし、ニューヨーク連銀のレポートによれば、いまのところ借り入れが減少したり、支払い遅滞が増加する傾向は出ていないようだ。

 同レポートによれば、90日以上支払いが遅れている割合は、住宅ローンが1.2%(前期は1.1%:以下同)、学生ローンが8.6%(8.9%)、自動車ローンが2.3%(2.3%)、カードローンが2.3%(2.3%)。前期とほとんど変わっていない

 新興国経済が不安定化するなか、世界経済の唯一のけん引役となりつつあるアメリカ経済の好調がいつまで続くか引き続き注視してみていきたい。